脱炭素で市場広がる蓄電技術、中国AI企業が急成長

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蓄電のスマート化を手がける「楽駕能源科技(LEGEND ENERGY)」がシリーズAで数千万元(数億円)を調達した。出資を主導したのは清新資本(Fresh Capital)で、財務アドバイザーは青桐資本(Phoenix Tree Capital)が担当した。

2015年に設立された楽駕能源は、AIアルゴリズムと蓄電システム統合技術を基盤としてソフトウェアとハードウェアを一体化させ、リチウムイオン蓄電池の全ライフサイクルをカバーする資産構築と安全で高効率な運用サービスを提供する。

同社のアルゴリズム開発チームはバッテリーセルの評価・選別技術、バッテリー熱暴走の予測アルゴリズム、バッテリーのSoH(劣化状態)に基づいた充放電技術を有する。過去5年にわたり自動車メーカーの「北京汽車集団(BAIC Group)」「第一汽車集団(China FAW Group)」、配車サービスプラットフォーム「滴滴出行(Didi Chuxing)」、車載バッテリー交換サービスを手がける「奥動新能源(Aulton New Energy)」などの顧客企業に対し、10GWh(ギガワット時)以上のリチウムイオンバッテリー資産の安全管理・制御サービスを提供してきた。搭載されるアルゴリズムの正確性は95%を超える。

同社の蓄電設備はモジュール化された中型〜大型のシステムで、自社開発・自社生産したものだ。中国内外で30以上のTW(テラワット)クラスのプロジェクト建設・運営に用いられてきた。物流不動産大手プロロジスが中国に設ける物流パークや、通信事業者チャイナモバイル(中国移動)が成都市に設けるインターネットデータセンター、欧州マルタ島の電力網の蓄電システムなどに導入されており、エネルギー協調制御の最適化アルゴリズムによって、産業用蓄電の平均IRR(内部収益率)を8〜12%にまで高めている。

現在の中国は電力の約70%を火力発電で賄っているが、政府が「カーボンピークアウト・カーボンニュートラル」の目標達成を掲げてからは、風力発電や太陽光発電などクリーンエネルギーの活用がエネルギーシフト実現にとって重要な戦略となっている。新エネルギーを用いた発電や電力消費量は変動が大きいが、これらを平坦化するため、電力の需給バランスを担うインフラとしての蓄電産業に成長機会がもたらされている。

中国国家発展改革委員会や国家エネルギー局は蓄電設備の実装規模を2025年までに3000万kW(キロワット)以上にすると明示している。中国では現在、電気化学エネルギー貯蔵技術は「発電所・送電網・消費者向け設備」に配置され、とくに消費者向け設備の成長が著しい。

同社の潘多昭CEOも、現在の蓄電業界では消費者向け設備の需要が旺盛で市場化のレベルも高いが、現時点で絶対的なリーディングカンパニーは存在しないと述べる。

楽駕能源では長期にわたって積み上げてきたソフトウェア・ハードウェア一体化技術を用い、消費者向け蓄電市場に高性能で高効率のソリューションを提供している。潘CEOはシンガポールの南洋理工大学でMBAを取得し、13年に光通信機器メーカー「中天科技(Zhongtian Technology )」に入社。新エネルギー事業部に所属し、北京市、江蘇省、山西省、新疆ウイグル自治区、チベット自治区などの太陽光蓄電プロジェクトを主導して、開発や運営の経験を積んだ。

蓄電システム統合技術を基礎として、各地に分散する蓄電設備を長期にわたり安全に効率よく運営するには、スマート化されたシステムプラットフォームと一流のAIアルゴリズムが欠かせないと楽駕能源は考えている。同社はバッテリー熱暴走の予測や管理・制御を実行するアルゴリズムや、独自開発したスマートエネルギーのデジタルプラットフォームを兼ね備えており、消費者の電力負荷をリアルタイムでモニタリング、シミュレーション、予測、制御し、需要側管理ができるだけでなく、最も効果的なエネルギー資産利用を可能にする。同社は関連特許や実用新案、ソフトウェア著作権も約20件取得済みだ。

楽駕能源のサービス構造

安全に運用することは蓄電設備、ひいては蓄電業界にとって重要な要素だ。中国では21年4月、大型家具店「集美家居(JIMEI FURNISHING)」の北京市内の店舗で使っていた太陽光蓄電設備が火災を起こして犠牲者を出しており、この事故を機に政府や企業が蓄電設備の安全管理をより注視するようになった。楽駕能源の常偉CTOによると、同社の管理・制御アルゴリズムのアーキテクチャー(構造)は多くの新エネルギー車メーカー、車載バッテリー交換ステーション、蓄電ステーション、電池のカスケード利用などに数年間用いられてきたため多くの実践経験を積み上げており、「1時間単位」で熱暴走を予測するアルゴズムによって、多くの蓄電ステーションで事故を防いできた。

また、消費者側に蓄電設備を置く主な目的の一つは、時間帯によって変動する電気代の差を利用し、安い時間帯に蓄電して高い時間帯に使うことで電気代を節約するものだが、楽駕能源はこうした消費者向けにも電力管理収益プラットフォームを構築し、システムと連動させることで収益を最大化させている。同プラットフォームはすでに複数のプロジェクトで導入済みだ。

楽駕能源の蓄電システムはモジュール化されており、最小の蓄電ユニットは150〜200kWh、充放電電流値は0.5Cか1Cとなっている。これらを任意で組み合わせて、屋内向けの小型蓄電システムから屋外向けのコンテナ型蓄電システムまでを構築できるようになっている。

楽駕能源の蓄電設備

販売は、スマートエネルギープロジェクト向けに製品とプラットフォームサービスを提供する形式で行っている。従業員は現在約80人で、開発人員が60%以上を占める。広東省東莞市や江蘇省南通市などに生産力1.5GWhの生産拠点を持ち、今回調達した資金で生産の大規模化を進める計画だ。

(翻訳・山下にか)

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