「蘇寧易購」が万達集団のデパート37店を買収、「スマートリテール」推進にはずみ

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

ビジネス注目記事

「蘇寧易購」が万達集団のデパート37店を買収、「スマートリテール」推進にはずみ

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

2月12日に報じた通り、不動産系複合企業の万達集団(ワンダ・グループ)が、百貨店事業を手放す。傘下の全37店を、家電量販大手の「蘇寧易購集団(SUNING)」へ売却するのだ。

蘇寧易購の張近東董事長は今回の買収について、「あらゆる展開を想定する今年の小売事業戦略の鍵になる。スマートリテール機能を全面的に発揮することになるだろう」と述べている。

万達集団は百貨店事業以外に、これまで手がけてきたホテル事業、観光事業、海外不動産事業、不動産管理事業などを手放している。今回の百貨店事業売却については、近年の中国で盛んな「ニューリテール(新小売)」業態への乗り遅れが原因の一つと見られる。

「万達百貨(WANDA DEPT. STORE)」は開業当初、グループ内の不動産デベロッパー「大連万達商業地産(Wanda Commercial Management )」(当時)が運営する商業施設「万達広場(ワンダ・プラザ)」の主要テナントとして年15~20の出店ペースで急拡大してきた。しかし、既にEコマースが爆発的に成長しつつあり、同社は収益を上げるどころか損失を増大させていった。

開業8年目の2015年、万達集団の王健林董事長は「万達百貨の店舗を半数まで削減する」として、全体の半数超にあたる56店舗を閉店した。かつては万達集団の「4つの柱」の一つとされてきた百貨店事業だが、グループ内で重荷となってしまった。

2016年9月に万達商業地産が香港で上場廃止となって以降、同グループは不採算事業を中心に売却を進め、資産を圧縮してきた。

小売業界専門ニュースサイト「聯商網(Linkshop)」の報道によると、店舗数半減が功を奏して、2016年には黒字に転じ、総売上高でアリババ系百貨店「銀泰百貨(Intime Department Store)」とほぼ同等の成績を残した。続く2017年は「過去10年で最高の1年」となり、年間売上高と来店客数の双方で安定した成長を続け、純利益は前年同期比60%増となった。

したがって、「今回の事業買収は蘇寧にとって追い風になる」というのが市場の大方の見解だ。買収を発表した当日、蘇寧易購の株価は3.09%上昇した。

家電製品からスタートした蘇寧は、百貨店の取り込みによって収益のみならず、取扱商品を拡大することを狙っている。蘇寧は旧正月前、小売事業の取扱商品を家電、家庭用電子機器、日用消費財、ファッション、インターナショナルの5分野に整理し、それぞれ家電量販の「蘇寧易購」、3C(パソコン・通信機器・家庭用デバイスなど)商品小売「蘇寧極物(JIWU)」、コンビニエンスストア「蘇寧小店」、百貨店「蘇寧時尚百貨」など各事業へ振り分けていくとした。

テンセントや京東集団(JD.com)でストラテジーアナリストを務めた李成東氏によると、「蘇寧は今回の買収によって主力製品を家電からアパレルへ拡張する意向だが、短期的には損失が拡大するだろう」としている。

蘇寧は万達百貨の買収と同時に、子会社の蘇寧時尚百貨をグループ内のサブグループに格上げし、「蘇寧時尚百貨集団」を設立した。万達百貨はその店舗数とサプライチェーンの拡大に寄与することになるだろう。

蘇寧は2017年に「スマートリテール」戦略を掲げた。インターネット、IoT、ビッグデータ、AIなどの技術を用いて商品、物流、決済など小売に関わる一連のプロセスをデジタル化し、効率性や顧客体験の向上に努めている。今回の買収はそのスマートリテール戦略の一環とみられる。蘇寧はビジネス誌「財経」の取材に対して「百貨店業界全体のデジタル化を進め、顧客体験を一層向上させたい」としている。

また、蘇寧は今回の実店舗拡充を入り口として、事業の差別化、高級化、あるいは飲食事業への拡大を計画していると見る向きもある。同時に顧客との関係を築き、Eコマースへ誘導する可能性もある。
(翻訳・愛玉)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録