スーパーアプリを展開する「GoTo Group」が上場、インドネシア最大のデジタルエコシステムに

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ネット配車を中心とした生活関連のさまざまなビジネスを手がけるインドネシアの大手企業「Gojek」と、同国の大手Eコマースプラットフォーム「Tokopedia」が合併して誕生したITジャイアント「GoTo Group」は、2020年の GTV(流通取引総額)がインドネシアのGDPの2%を超えたと推算される。いわゆる「スーパーアプリ」を展開する企業で、同様のビジネスモデルを有する中国の二大企業アリババとテンセントも同社への出資者として名を連ねている。

そのGoTo Groupが今月11日、インドネシア証券取引所に上場した。公開価格338ルピア(約2.98円)で467億株を発行して約11億ドル(約1400億円)を調達し、上場当日の終値は382ルピア(約3.37円)、時価総額は300億ドル(約3兆8000億円)を超えた。

ソフトバンクGやアリババ、錚々たる出資者たち

GoTo Groupにこれまで出資してきた投資機関はアリババ、ソフトバンク・ビジョン・ファンド、グーグル、テンセント、シンガポール政府系基金テマセク・ホールディングス、シンガポール政府投資公社(GIC)、UAE政府系投資基金アブダビ投資庁(ADIA)などだ。

海外メディアの報道によると、GoTo GroupのIPO(新規株式公開)規模は今年のアジアで3位、世界で5位。上場当日の株価を基にした時価総額はインドネシアの上場企業として3位だった。市場が低迷する昨今、GoTo Groupの出資者にとってこの成果は得難い朗報だ。GoTo GroupのIPO目論見書によると、上場後の持ち株比率はソフトバンク・ビジョン・ファンドが8.71%、アリババが8.84%となる。

インドネシア最大のデジタルエコシステム

GojekとTokopediaが合併してGoTo Groupとなって以降、同社の事業は配車・出前・物流などのオンデマンドサービス「Gojek」、マーケットプレイス・クイックコマース・食品雑貨配達などEコマースを展開する「Tokopedia」、決済や金融サービスなどのフィンテックを手がける「GoTo Financial」の3つで構成されている。公式サイトによると、GoTo Groupが提携するバイク運転手は250万人、商品やサービスを提供するマーチャントは1400万業者、年間アクティブユーザーは5500万人で、インドネシアの3分の2の家庭がサービスを利用している。

東南アジアの他のITジャイアントとは異なり、GoTo GroupはGojekがベトナムとシンガポールに進出している以外は基本的にインドネシアを主なマーケットとしている。今回の上場で調達した資金の30%はグループ全体に、30%はTokopediaに、25%は決済サービス「GoPay」に、5%はシンガポール市場に、5%はベトナム市場に用いられる。

インドネシアの人口は東南アジア最多で世界4位の2億7400万人。グーグル、テマセク、ベイン・アンド・カンパニーがまとめた「e-Conomy SEA 2021」では、同国のデジタルエコノミーは2025年までに1460億ドル(約18兆4800億円)規模に達し、その間の年平均成長率は20%だと予想している。

GoTo Groupに出資する衆為資本(ZWC Partners)のパートナー徐薇氏は、TokopediaとGojekの合併がもたらす収穫は「1+1」以上のものになると指摘。ユーザーの多岐にわたる需要に対応できるようになったことで各事業がシナジーを生み、さらに急速にユーザーを増やせるなどインドネシア市場単体でも充分な成長の余地があるという。

ただし、大きな市場とはいえ競争は激しい。サイト分析ツールSimilarwebの今年3月のデータでは、インドネシアでアクセス数最多のEコマースサイトはGoTo Group傘下のTokopediaで、シンガポール発のShopeeとLazadaを上回った。しかし、配車および出前市場ではGoTo Groupはライバルに押されている。市場調査会社Statistaの2020年3月〜2021年2月のデータでは、配車市場を二分するシンガポール発のGrabとGojekの市場シェアはそれぞれ58%と42%。シンガポールのアクセラレーターMomentum Worksが2021年に東南アジアの出前サービス市場を調査した報告書では、インドネシア市場でのシェアはGrabが49%、Gojekが約43%だった(GMVベース)。またKrASIAの報道によると、インドネシアの決済サービス市場で最もシェアの高い電子マネーアプリはOvoで約31%、次いでGoTo GroupのGoPayが25%、ShopeePayが20%だった。

これらのデータから、GoTo Groupは市場シェアを上げるためにさらなる尽力が必要だということがわかる。同グループの2021年1〜9月の純損失は約8億600万ドル(約1000億円)で、今後も赤字が続くとみられている。

インドネシア市場に自信をもたらしたIPO

GoTo Groupの上場がもたらした結果は、インドネシアの資本市場にも自信をもたらした。インドネシアでは昨年、EコマースプラットフォームBukalapakがインドネシア証券取引所に上場して15億ドル(約1900億円)を調達。同国市場最大規模のIPOとして当時の時価総額は109兆ルピア(約9700億円)に達したが、直近では約33兆8000億ルピア(約3000億円)とピーク時の3分の1にまで下がっている。

大手会計事務所アーンスト・アンド・ヤングの報告書によると、ASEAN諸国では2021年に132社が上場し、うちインドネシアが55社と最多で、調達した資金は約48億ドル(約6100億円)と前年より1000%以上伸びた。インドネシア証券取引所では多くのテック企業を呼び込むため、複数議決権株式などを導入しており、GoTo Groupはインドネシア証券取引所がこれらの新規定を設けてから複数議決権株式を採用する最初の上場企業となった。

インドネシア証券取引所のPandu Sjahrir理事は過去に36Krの取材に応じた際、Bukalapakの上場はインドネシア市場でも大型IPOが実現可能なことをと証明したと述べた。さらにインドネシア証券取引所が多くの優遇策を設けて上場を目指すテック企業を受け入れており、インドネシアのマクロ経済が成長を続けていることも株式市場のパフォーマンスに貢献しているとしている。
(翻訳・山下にか)

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