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メタバース(仮想空間)のシステム開発・運営サービスを手掛ける中国の「南京維賽客網絡科技(VS・work Network Technology)」はこのほど、プレシリーズAで数千万元(数億円超)を調達した。中核事業である3Dバーチャル空間を貸し出すサービスの拡充を目指す。具体的な資金調達額は明らかにしていない。
同国のベンチャーキャピタル(VC)「金雨茂物投資管理」が投資ラウンドを取りまとめる「リード投資家」を務めた。調達した資金はマーケティングやプロモーションの強化のほか、一通りの工程を繰り返してシステムの質を徐々に高める反復型開発の推進に充てる。
VS・workは2018年、江蘇省南京市で設立。公式ウェブサイトによると、現実と仮想の世界を融合する「XR」のマルチユーザーを対象に、コラボレーションプラットフォームの開発や提供に取り組む。XRは仮想現実(VR)や拡張現実(AR)、複合現実(MR)技術などの総称。
新型コロナウイルス禍でオフラインイベントの中止や延期のリスクが高まったことを受け、多くの人々が紹介やマッチングを狙った従来型の見本市からオンラインによるライブストリーミング配信の活用などを選択し始めている。一方で、効果や臨場感はリアル開催にまだ及ばないとの声も聞かれる。
こうした課題を解決するためにVS・workが照準を合わせているのが、現実世界のさまざまな状況との代替が可能な3D仮想空間の運営システムと、クラウド技術を生かしたコラボレーションツールだ。
利用者が専用のゴーグル型端末を着用すると、リアルタイムに動くアバター(分身)が自分の視点で空間内を自由に動き回れる仕組み。同時に「メタバースのプロバイダー」として3D 空間内の展示スペースを貸し出し、会期中の運営を後方支援する。
あるオフラインの展示会を例に挙げてみよう。VS・workでは仮想展示会を開催する場合、まずオフライン展示会の施工業者とチームを組み、その上で展示会主催者側に対し会場設営や開催時の全体の運営をサポートする。仮想展示会自体は人数制限がないため、ユーザーはパソコンやスマートフォン、VR端末から公式サイトにアクセスすればいいだけだ。
36Kr記者が体験してみたところ、現在のバージョンではユーザーが会場内を動き回ると近い距離の人を見ることができ、同伴のユーザーが移動すれば位置関係も変化する。別の階や小規模な展示スペースに移動して、さまざまな出展者と知り合うことも可能だ。場内のスタッフと話したり、周囲の人と交流を図ったりすることもできる。
自分で操作して「壁」にかかった企業紹介の動画や写真、PDFを見たり、さまざまな人と名刺交換したりすることも可能。交換した名刺の情報は、スマホにSMSで送信される。公共のスペースでは、展示会の最新情報を伝えるアナウンスが流れるのを耳にするはずだ。
ユーザーはオフライン展示会と同様に、友人らと特定の場所で約束し、一緒に話しながら見て回ることもできる。
実績着々 今後の成長にも自信
VS-workはこれまでに、VR技術などを使ったオンラインのシンポジウムや展示会、教育研修、その他イベントの開催・運営支援で実績を積み上げてきた。提携パートナーには中国VR産学研大会や新浪VR大会、ドバイ国際博覧会などが名を連ねる。
同社の共同創業者、徐晨翔氏は36Krに対し、「一連の資金調達を通じて、さまざまなサービスの利用状況に応じて、よりきめ細やかでモジュール化が可能となる機能分割を進めてきた」と語る。
一方で、メタバースのオンライン活動への誤解はまだ多いとも言及。「構想から商品化までのプロセスが非常に長い」と述べ、単純なものではないと訴えた。仮想空間を提供するサービスは「単に一つの状況を具現化するだけにとどまらない。多くの現実的な問題を解決したり、次につながる形で問題を磨き上げていったりすることも含まれる」と力説した。
目下の課題として、ユーザー本人とアバターの表情や態度、動きにいかに近づけられるかといったことを模索していると指摘。技術的な難題は多いとしつつ、サーバーは出展者が一時的にログアウトし、再度ログインした後も同じチャンネルと位置に戻って目の前の人と話ができる仕組みを保証しなければならないとした。電波の弱いネットワーク環境で、正常に接続できるかどうかなども考慮すべき点に挙げた。
今後に関しては、「当社が目指しているのは、人々を時間と空間の束縛から解放し、場所と時間の制約をなくすことだ」と強調。現状では技術的な制約や交通の問題から、人数や活動内容を制約される場合が多いとしながらも「われわれが多くの仮想空間を持ち、その権利を付与されて、これらの空間をつなげられるようになれば、本当の意味でのメタバースの世界を実現できる」と語った。
一部の報道によると、VS-workは近く新たな資金調達を開始する見通しだ。
(36Kr Japan編集部)
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