2019年展望:バイオ医薬業界の再編と「イノベーション」

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2019年展望:バイオ医薬業界の再編と「イノベーション」

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バイオ医薬品業界の2019年は3つの大型M&Aで始まった。1月3日、米製薬大手ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMS)が米バイオ製薬大手セルジーンを740億ドル(約8兆円)で買収。7日、米製薬大手のイーライリリーが抗がん剤開発の米ロクソ・オンコロジーを約80億ドル(約8700億円)で買収。翌日には武田薬品工業がアイルランドの製薬大手シャイアーを620億ドル(約6兆8000億円)で買収した。

医薬品業界にとって買収は珍しいことではない。長年にわたり世界最大手に君臨してきた米ファイザーは、18年間で計2400億ドル(約26兆円)のM&Aを行って発展を遂げてきたのだ。

M&A時代の到来だと叫ばれるれる中、誕生してまだ間もない中国の新薬業界も、医薬品の調達に関する政策によって業界の再編が促されている。政府は2018年12月から「帯量採購(医薬品集中調達)」リストを次々と公表した。これにより落札した企業のマーケットシェアは確実に拡大するものの、多くの企業は利益が大幅に減少すると見なされたので、医薬品関連株は暴落した。

とはいえ、金融データサービス「鯨准研究院(JINGDATA)」の「2018年中国医療・ヘルスケア産業大報告」によれば、2018年に医療・ヘルスケア関連企業が調達した資金は1社あたり平均13億2400万元(約210億円)で、2017年の4億2700万元(約68億円)と比べて210%も増加した。

しかし、この加熱ぶりもテクノロジー・ハイプサイクル(新技術の成熟化を表す曲線)を辿っているに過ぎない。過剰な期待から次第に熱が冷め、徐々に理性を取り戻しつつある。ベンチャーキャピタル「瑞伏医療創投(Ruifu Medical Health Equity Fund)」と「KPCB(Kleiner Perkins Caufield & Byers)China」のマネージングパートナーである黄瑞瑨氏によれば、「資金が豊富で、故に企業価値が高く評価される時代は終わった。ベンチャー企業に必要なのは、少額の資金を得て評価を上げることではなく、まず充分な資金を確保して成長することだ」という。

米CFIUS(対米外国投資委員会)が外国から米国への投資審査を厳格化する中、中国の製薬会社にとって、海外のビジネスモデルをそのまま導入するという従来の方法は通用しなくなっている。2019年、バイオ医薬品業界で競争を勝ち抜くためには一体何が必要なのか、投資家が関心を持っている分野は何か、CROビジネスは進化するのか、など今後の展望について、36Krは新薬開発分野で活躍する「天境生物(I-Mab BIOPHARMA)」のCFO朱傑倫氏、瑞伏医療創投・KPCB Chinaのマネージングパートナー黄瑞瑨氏、「薬明生物(WuXi Biologics)」のCEO陳智勝氏、JPモルガンのグローバル投資銀行部門中国エリア責任者の黄国濱氏らに話を聞いた。

資本よりイノベーション

現在、国内の腫瘍治療はほとんど海外医薬品企業の新薬に頼っている。まだ初歩段階にある中国の新薬開発はイノベーション不足だと指摘されているが、新薬の開発には莫大な費用と時間がかかる。その中で臨床研究コストが低いという中国の利点を活かして発展を遂げたのが、「薬明康徳(WuXi AppTec)」、「泰格医薬(Tigermed)」などの医薬品開発業務受託機関(CRO)だ。受託機関が研究開発、調達、製造などの業務に幅広く関わるCROビジネスは拡大しつつある。前出の「2018年中国医療・ヘルスケア産業大報告」によれば、2017年国内CROの市場規模は559億元(約9000億円)に達した。

医薬品業界の再編とM&A

「帯量採購」が医薬品業界に激震を走らせ、再編の波が広がった。技術力が低い中小規模の製薬会社は淘汰される可能性が高い。将来的に、新薬を中核とする企業は100社以下となり、ジェネリック医薬品企業の数も大幅に減少すると予想される。

「政策が企業のビジネスモデル変更を強要する状況」をめぐって議論が展開される一方、中国のバイオ医薬品業界は「偽のイノベーション」から「真のイノベーション」の時代へ転換せざるを得ない。今までジェネリック医薬品によって上げた収益で新薬開発を補填する会社は、将来的に利益が大きい新薬の開発に集中すると予想される。一方、ジェネリック製薬会社は製造に集中して薄利多売の戦略を取るとみられる。

しかし、単一製品ラインに頼る新薬企業のリスクは高く、ジェネリック製薬会社も変革せざるを得ない。結果として、M&Aがますます加速している。M&Aによって事業を強化し、重要分野へ集中投資し、規模を拡大できるからだ。

バイオ医薬品企業ブーム

香港証券取引所が赤字のバイオ医薬品企業に上場を許可してから、創薬ベンチャーへのプレIPO投資ブームが再び巻き起こった。しかし、上場した「歌礼製薬(Ascletis Pharma Inc.)」、「百済神州(BeiGene)」、「華領医薬(Hua medicine)」はいずれも公募割れした。創薬ベンチャーにとって、当面「生き残る」ことが最も重要な課題である。

中国のバイオ医薬品市場には巨大な潜在力がある。世界の医薬品市場調査書 EvaluatePharmaによれば、2017年のバイオ医薬品市場は医薬品市場全体の25.2%を占める2080億ドル(23兆円)で、世界の医薬品市場における売上高トップ10のうち、8つがバイオ医薬品だった。

医薬品登録審査評定制度の見直しに伴い、新薬登録承認までの期間は大幅に短縮した。現時点で販売の承認を受けている新薬はまだ少数で、ほとんどの製品は臨床試験段階にあり、販売が承認されるまでさらに3~5年かかるとみられる。

経営者の眼

天境生物CFOの朱傑倫氏
個人的に、「資金調達の冬」だとは感じていない。半年前と比べて、確かに資本市場からの資金調達は難しくなったが、正常な状態に戻っているに過ぎない。医薬品調達政策の影響で、ジェネリック医薬品会社の経営は厳しくなると考えられるが、新薬開発会社への影響は小さい。大手の医薬品企業も、オリジナル新薬やイノベーションがないと経営が厳しくなる一方だ。

瑞伏医療創投・KPCBChinaマネージングパートナーの黄瑞瑨氏
ヘルスケア産業には投資機会が多いが、DNAシークエンス解析、がん新薬、医療機器などの分野には手を出すべきでない。私が注目しているのは、高齢化に伴う糖尿病、心血管疾患、神経系など慢性的な病気の新薬開発と製剤分野だ。

薬明生物CEOの陳智勝氏
世界初となる新薬がこれまでに当社のプラットフォームで10種類誕生した。我々のビジネスモデルは世界一を誇るバイオ医薬品の研究製造プラットフォームを確立することである。現在187種類のバイオ医薬品の開発が進行中だ。開発の成功率を高めるため、外部企業との提携を積極的に進めている。

JPモルガンのグローバル投資銀行部門中国エリア責任者の黄国濱氏
高齢化社会になる中国の市場は非常に大きく、しかも、資金が豊富である。医療・ヘルスケア産業は潜在的な金鉱山であり、中国市場に興味を持つ多国籍企業が増える中、大規模なM&Aが起きる可能性は十分考えられる。
(翻訳・田中春子)

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