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水素燃料電池パワーパックのソリューションを提供する「溯馭技術」がエンジェルラウンドで1000万元(約2億円)を調達した。「九合創投(Unity Ventures)」がリードインベスター、「険峰長青(K2VC)」がコ・インベスターを務めた。調達した資金は次世代の一体型電子制御構造を持つ水素燃料電池パワーパックの開発に充てる。同社はプレシリーズAの資金調達も進めている。
水素燃料電池エンジンの内部構造は、簡単に言うとシステムと電気スタックなどに分けられる。水素燃料電池はガソリンエンジンやリチウム電池に比べてシステムの制御が難しく、コストもスタックの2〜3倍になる。
溯馭技術の創業者である董震氏は、水素燃料電池がまだ大規模に実用化されていない主な理由のひとつは、システムのコストが高すぎることだと語る。そこで同社は、燃料電池エンジンシステムのコスト低減という課題に取り組み、解決策として打ち出したのが一体型電子制御構造だ。
水素燃料電池のシステム制御は、高周波から低周波までを組み合わせるためガソリンエンジンやリチウム電池に比べると難度が高い。
図に示すように、ガソリンエンジンやリチウムイオン電池のバッテリーマネジメントシステム(BMS)では制御周期がキロヘルツを超えることはないが、燃料電池の高出力化に向けた開発の過程で、縦型電子制御システムの制御周期はマイクロ秒(10-6秒)からミリ秒(10-3秒)、秒への変化をカバーするようになった。こうした特性に対応するには独自の電子制御システムを開発する必要がある。
従来の水素燃料電池のシステム構成を簡単に説明すると、コントロールユニット(FCU)がメインの頭脳として複数のサブモジュールを制御する。さらにサブモジュールごとにコントロールユニットが搭載され、それぞれがエアコンプレッサーや循環ポンプ、コンバーターといった機械や動力モジュールを制御している。
水素燃料電池エンジンの産業チェーンでは、上流はスタックメーカーと補機メーカー、中流はシステムインテグレーターとシステム制御企業になる。この場合、上流の補機メーカーは通常、機械モジュールとコントローラーがひとつになった製品を中流に提供する。つまり、システム制御の一部分を補機メーカーが担当しているということだ。
燃料電池に関わる補機は数多くあり、メーカーごとにコントローラーの直接・間接コストを上乗せする。さらに、現状ではまだスケールメリットがないため、燃料電池の最終コストが押し上げられることになる。
そこで溯馭技術は、「完全中央集権型」のソリューションを考えた。
簡単に言えば、水素燃料電池のあらゆるサブコントローラーを1つのメインコントロールユニットで統御し、補機メーカーが行っていたコントローラー開発は中流のシステムインテグレーターが担当する。董氏は、単にまとめるのではなく、完全に一体化された電子制御構造を構築する必要はあるが、燃料電池システムのコストを下げるメリットがあるとする。
100kWの水素燃料電池を例にとると、溯馭技術の試算では2022年の時点で周辺機器のコストはおよそ20万元(約400万円)かかる。しかし、集約型構造に変えることで、最初の1年で5万元(約100万円)、次の3年でその倍、10万元(約200万円)のコスト削減が可能になるという。
この新しい構造なら、2025年には水素燃料電池パワーパックの価格は100kWあたり15万元(約300万円)になることが期待され、水素燃料電池の市場化はさらに加速するだろう。
董氏は、同社のコア技術は、一体型電子制御構造に支えられた、マルチタイムスケール高低周波パワーエレクトロニクス複合制御技術、マルチ拘束複雑結合システム最適化制御、マルチモジュール化協調制御技術だとしている。
溯馭技術はすでに、モジュール型空冷式水素燃料パワーパック「SeePack」シリーズや、拡張型水冷式水素燃料パワーパック「SeeSys」シリーズなど、電子制御のソフトとハードを統合したプラットフォーム型の水素燃料電池システムを発表している。100ワットからメガワットまでをカバーしており、固定型、携帯型、車載型、飛行型など様々なシーンに対応することができる。
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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