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ペットケア業界向けの業務支援サービスを手掛けるスタートアップ企業、「MoeGo」は、北米市場での展開を積極化している。同社はクラウド経由でソフトを提供するSaaS(サース)企業で、ペットケアサービス関連会社やグルーマー(トリマー含む)らが直接の顧客だ。
2021年12月のシードラウンドで、1000万ドル(約13億円)近い資金調達を終えた。米国を中心にスタートアップ企業への投資を行うコンダクティブ・ベンチャーズが投資ラウンドを主導するリード投資家を務め、エンジェル投資家として米ベンチャーキャピタル(VC)のアップオネスト・キャピタルが出資した。調達した資金は主に、生産・研究人員の拡充と、成長市場と位置付ける米国営業チームの構築に充てる計画を示している。
MoeGoは19年に設立されたペットケアのデジタルサービスプロバイダーで、業界・業種に特化した垂直型のSaaSとして参入。顧客の予約スケジュール管理やペット送迎、デジタル決済などを含むワンストップソリューションを提供している。スマートフォンやパソコンで手軽に利用できるのが特徴だ。
「米国人にとってペットを飼うことは、体を動かしたり旅行に行ったりするのと同様に基本的なライフスタイルだ」。MoeGoの董芸・創業者兼最高経営責任者(CEO)は36Krの取材にこう語る。創業以来、北米市場に照準を合わせてきた。起業のきっかけは、ペットを飼う中で生まれた実際のニーズからだったという。
董氏によると、米国ではペットケアサービスの予約で不便なことがまだまだ多い。新型コロナウイルス感染症の影響でペットショップの大半が電話対応しかできず、店側も顧客も予約や時間変更が非常に面倒な状況だ。同氏が約50店舗を対象に調査したところ、業界にとって有効なツールが不足していた。またこれまでの汎用的なSaaS商品も、一元管理サービスとうたいながら肝心の場面やニーズに対応できていない。こうした状況に商機があると判断したという。
市場成長に備え ミレニアル世代とZ世代に照準
董氏はペット市場の発展の背景には、高齢化と都市化という2つの趨勢があると指摘。ペットが「パートナーとしての価値」を生み出す重要な要素となったと説明した。この趨勢は現在の中国でも徐々に現れているという。北米や日本、オーストラリアといった国々のペット飼育率は8割を超えており、「ペット産業のファンダメンタルズ(基礎的条件)は消費の高度化の段階に入っている」との考えを示した。
あるデータによると、世界のペットケア市場規模は27年に3580億ドル(約46兆5500億円)に達する見通しだ。このうちMoeGoが注力する米市場は既に1000億ドル(約13億円)を超え、右肩上がりに拡大している。
米国ペット製品協会(APPA)のリポートもそれを裏付ける。現在、同国の世帯の67%以上が少なくとも1匹のペットを保有している。支出面ではペットケアや保険などのサービス関連への出費が非常に大きい。カットやトリミングなどペット美容の平均料金は1時間50〜300ドル(約6500〜3万9000円)前後で、業界にとっては収益性が高い。
一方、ペットケア業界では、主要顧客層にはっきりした変化が表れ始めている。2000年以降に成人を迎えた「ミレニアル世代」のペット需要の高まりと可処分所得増加に伴い、インターネット環境に囲まれて育ったこの世代の若者がペットケアのコアな利用者となりつつあるのだ。
米国では今、同業界の顧客の41%がミレニアル世代と1990年代以降に生まれた「Z世代」とされる。彼らは新しいネットプラットフォームやデジタル技術に抵抗がなく、商品やサービスを購入する傾向が強い。
MoeGoはこうした背景を踏まえ、ペットケア業界向け一元管理のSaaSプラットフォームを開発した。スケジュール管理やオンライン予約、米オンライン決済のストライプ(Stripe)をベースにしたデジタル決済、ペットオーナーとペットのデータベース、オンライン顧客対応サービスなどの機能が含まれる。
競合多数、きめ細かいサービスも強みに
北米市場には既にMoeGoのほか、「ペットデスク(PetDesk)」「デイスマート(Daysmart)」「ギングルアップ(Gingrapp)」などの競合相手が存在している。
董氏は他社との差別化について、きめ細かい用途別設定や運営サポートや一元管理プラットフォームサービスなどを挙げた。会計監査サポートなどの機能も搭載しているとした上で、「ユーザー(顧客)の業務効率が平均5割以上改善し、3割以上の業務伸びに貢献した」と指摘。ユーザーの違約率も8割以上減らせたと補足した。
ペットケア業界が直面する困難に関しては、「顧客(業界関係者)のテクノロジーへのリテラシー(理解・活用力)がまだ弱い」としつつ、「爆発的な成長を迎える北米ペット市場に当社製品の優位性を浸透させるには、ある程度の教育が必要だ」との認識を示した。特に販売や顧客対応、営業チームの強化が重要だと考えている。
従業員数は現在約40人。生産・研究要員が7割を占め、アリババ集団や百度(バイドゥ)、騰訊控股(テンセント)といった中国ネット・IT大手のほか、ドローン世界大手、DJIのような有力企業に勤めた経歴を持つ人が多数いる。
MoeGoはSaaS・サブスクリプション型ビジネスで、より高付加価値な機能や体験を有料にする「フリーミアム」モデルを採用。サブスクサービスの料金は月額課金制を導入し、月39~69ドル(約5100~9000円)に設定している。
19〜21年の年率成長率は119%、決済件数の伸び率は453%だった。サブスクサービスの年間経常収益(ARR)は短期間で数百万ドルに達しており、力強い伸びを示している。現在の顧客数は累計1万2000社超に上る。
董氏はARRで10億ドル(約1300億円)達成という目標と今後の戦略について、「テクノロジーサービスの比重をさらに拡大していく」と明言。米グーグルや米モバイル決済のスクエア(Square)といったチャネルパートナーとの連携を通じてネットワークとブランディング効果の高い商品づくりを行い、成約率を高めていく考えを示した。
また、「将来的には真剣に経営に取り組むペット関連企業が皆、業界向けに特化した(当社の)技術ソリューションを使うようになってもらいたい」と強調し、「MoeGoが彼らにとって最良の選択となるよう願っている」と語った。
(36Kr Japan編集部)
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