固体電池開発「太藍新能源」が資金調達、液体電池と同等のコストで安全性などの向上に成功

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固体電池開発「太藍新能源」が資金調達、液体電池と同等のコストで安全性などの向上に成功

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固体電池を開発する「太藍新能源(TALENT NEW ENERGY)」がシリーズA++で数億元(数十億〜百数十億円)を調達した。出資を主導したのは中金資本(CICC Capital)、招商局創投(CHINA MERCHANRTS VENTURE)で、清華大学系の清研資本(TSARI CAPITAL)なども出資に参加した。

太藍新能源の資金調達は過去3カ月で2回目。今年3月には不動産開発大手・碧桂園(COUNTRY GARDEN)傘下の碧桂園創新投資(COUNTRY GARDEN VENTURE CAPITAL)の単独出資によるシリーズA+を実施している。

今回調達した資金は主に生産ラインの建設や製品開発、人材育成に充てる。また、技術リソースの集約を加速し、北京に研究室やR&Dセンターを新設して半固体リチウムイオン電池の量産化や商用化を進めていくとしている。

太藍新能源は2018年に設立され、次世代の固体リチウムイオン電池やその材料技術の開発・産業化に特化したスタートアップだ。李彦CEOによると、同社の中心をなす技術要員は日本や欧米などの世界トップクラスの開発プラットフォームで固体電池の関連技術や関連材料の開発・研究に長年携わってきており、固体電池の産業化に向けた開発ですでに重要な成果を得ている。

エネルギー密度の引き上げは電池業界がずっと抱えてきた難題だ。現行の液体リチウムイオン電池は航続距離や安全性、耐用年数などでボトルネックに直面しており、電池メーカーは材料や構造を刷新することで現状打開を図っている。これまでのリチウムイオン電池が採用してきた電解液と比べ、固体電解質は熱暴走をなくし、エネルギー密度を上げられるなどの利点を持つ。

固体電池の技術路線は採用する固体電解質の種類によって酸化物系、硫化物系、ポリマー系の3種類に分けられ、形態では固体・液体のハイブリッド、半固体、全固体の3種類に分けられる。

太藍新能源は2018年の設立当初から酸化物系を採用し、半固体電池から徐々に全固体電池へと移行する計画を立てていた。「固体電池を産業化させるための技術体系については、我々は2年かけておおかたの検証を終えた。昨年7月には初製品の半固体三元系リチウムイオン電池のテストを完了し、速やかに資金調達を実施して製造拠点の建設に充てている」と李CEOは述べている。

同氏の説明によると、同社初の半固体電池は安全性、エネルギー密度、放電レート、サイクル寿命などがそれぞれ現行の液体電池より向上している一方で、生産コストはこれまでと同等の水準に抑えており、量産化できればさらにコストが下がる可能性もあるという。

安全性については、固体電解質を採用することでこれまで液体電池が抱えてきた発火や爆発などのリスクをなくせる。エネルギー密度については350Wh/kg(ワット・アワー毎キログラム)に達しており、現行の中国製駆動用電池から30%も向上している。放電レートについては、急速充放電が10分間連続で可能となっている。動作温度については、−20°Cから60°Cまでの範囲で使用できる。

材料コストについては、セパレーターを取り除く技術を開発したことで電解液の使用量を大きく減らし、約20%の削減に成功した。セルそのものの安全性が向上したことで、電池パックにかかる安全制御のコストも大幅に下がり、コスト全体でみると30%以上も減らせたという。

李CEOによると、生産能力0.2GWhを有する同社初の半固体駆動用電池の生産ラインが今年10月から稼働する予定で、主に新エネルギー車や電動自転車、インテリジェントロボット向けの製品を製造していく。

新技術を採用する電池の生産ラインをゼロから立ち上げるのはもちろん簡単ではない。

太藍新能源の生産ラインは80%以上の工程が液体電池の成熟した製造技術を基にしていると李CEOは説明した。同社の半固体電池は、次世代電池の新技術としての材料体系や中核の製造技術に関する課題をほとんどクリアした。しかし産業化に向けては、製品の一貫性や生産効率を徐々に改善し向上させていくという課題にいまだ取り組んでいる。

電解液と異なり、固体電解質は不燃性や機械的強度を備えているため、電池の安全性を高められる。だが、構造設計や注入工程のソリューションが未熟なら、エネルギー密度や放電レート、サイクル寿命など重要な性能に対して明らかに負の影響が及ぶほか、生産効率や製品の一貫性に新たな課題をもたらすこととなり、製造コストも跳ね上がる。

半固体電池の検証を終えたことで、太藍新能源は年末か来年初めには生産能力1GWhの生産ラインの建設に着手するという。さらに来年には10GWhの生産ライン建設も計画している。

「ミドルレンジからハイエンドの駆動用電池市場で、我々は市場シェアの一部は獲得できるだろう。この点では自信がある」と李CEOは述べた。

太藍新能源は現在主に自動車の駆動用電池を生産しており、その他にドローン、3C(コンピューター、通信機器、消費者向け電化製品)、蓄電などの市場に向けた固体電池も開発中だという。
(翻訳・山下にか)

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