医薬品検査の360度ロボットカメラ、1分で7500粒 5分の1以下の低コスト

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

日経スタートアップ注目記事

医薬品検査の360度ロボットカメラ、1分で7500粒 5分の1以下の低コスト

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

ロボットビジョンを研究・開発する「奥乗智能(AIAocheng Intelligence)」がプレシリーズAで1500万元(約3億円)を調達した。中国A株市場に上場する企業の実質的支配者が個人で出資した。今回調達した資金は医薬品検査の新技術研究などに充てられる。

奥乗智能は2019年設立、製品は主に製薬業界で使用され、カプセルを1粒ずつ360度検査可能な外観検査装置、全自動のPTP包装(片面を透明プラスチックで覆った固形製剤の板状包装)検査装置、モジュール型のPTP包装検査装置を販売し、中国内外で多くの有名製薬企業に採用されている。

中国の調査機関「高工産業研究院(GGII)」によると、中国のロボットビジョン市場規模は2019年に65億5000万元(約1300億円)だったものが、23年には155億6000万元(約3100億円)にまで拡大すると予測されている。2019年に導入されている分野のうち70%は消費者用電気機器、自動車製造、食品包装などだが、奥乗智能が狙いとする医薬品分野は9.7%ほどだ。

奥乗智能を創業した張濤氏によると、中国には製薬企業が約5000社あり、検査業務だけで10万人以上が働いているが、自動検査装置を導入している企業は少なく1%にも満たない。また、ある業界関係者によると、全国には大小さまざまな規模の医薬品製造ラインが10万ほどあり、新増設と古いラインの交換需要による市場規模は約104億元(約2000億円)になるとの予想だ。

医薬品製造の工程は主に、造粒(顆粒製造)、打錠(成形)、包装の3つに分かれ、工程ごとに品質検査が求められる。また現在、中国の公立病院では「帯量採購」政策に基づいて医薬品を集中調達しており、医薬品の質の追跡管理が厳しく求められるようになったため、製薬企業は検査の質や効率の向上を迫られている。「検査員は何時間も作業していると検査の精度が低くなるが、機械による自動検査なら医薬品の汚染や検査の漏れ・誤りを回避できる。また、われわれが調査した中小医薬品メーカーは常に人手不足の問題を抱えている」と奥乗智能の王春水総裁は指摘した。

医薬品製造過程における検査

具体的には、奥乗智能は中国で一般的な医薬品の包装形態であるPTPシート、カプセル剤、顆粒剤の小分け袋を検査する3種類の外観検査装置を設計しており、今年下半期には錠剤とソフトカプセルの外観検査装置を発表するという。

中国市場ではこのような検査装置はドイツ、日本、イタリアのメーカーからの輸入製品が大部分を占めており、価格は400万元から800万元(約8000万円から約1億6000万円)にもなる。奥乗智能の装置は輸入品の8分の1から5分の1ほどの価格で、検査性能は業界平均以上だ。コストパフォーマンスの良さは、主に装置の構造部分を独自設計していることと、医薬品製造業の需要に合わせて開発されたソフトウェアアルゴリズムによって実現したものだ。

例えば、奥乗智能が開発した360度検査装置では、カプセルを装置内部で360度回転させ、側面に設置したプリズムを利用してカプセルの両方向から画像を撮影する。産業用2Dカメラ1台だけで6本の通路のカプセルを検査でき、装置1台当たり最大で1分間に7500粒を検査することが可能だ。輸入品はカメラを5〜6台使うか、あるいは3Dカメラで複数の角度からカプセルを検査するため、製造コストが高い。

奥乗智能の360度カプセル検査装置

ソフトウェアはオープンソースのロボット開発プラットフォーム「ROS」を利用、パターン認識と深層学習を組み合わせた独自のアルゴリズムを採用した。

医薬品の欠陥はパターン認識アルゴリズムでほぼ全てを検出できる。しかし、非常にまれな一部の欠陥については深層学習アルゴリズムが分類、認識するため、あらかじめ訓練されたニューラルネットワークを追加して不足を補う。ニューラルネットワークは数千にのぼるサンプル画像を学習し各種医薬品の欠陥を検出するものだ。こうした外観検査アルゴリズムはゼロから開発され、他のいかなるシステムやアルゴリズムプラットフォームも参考にしていないが、多品種、パーソナライゼーション(個別化)、厳格な監督管理といった製薬業界の特性に対応している。

設立から3年、同社の製品は市場から一定の評価を得ており、国内の多くの製薬企業が導入している。2022年の売上高は1000万元(約2億円)台に達する見込みだ。また、同社は航空宇宙分野の顧客に対しても検査装置を提供している。

国内の製薬企業は製造を実質的に自動化しているが、検査は人が行う必要があり、製造工程全てを自動化することはできていない。そのため張氏は「外観検査装置は各工程で品質検査を行うことができ、製薬企業の生産ラインの自動化と無人化の実現を後押しするだろう」と述べた。
(翻訳・36Kr Japan編集部)

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録