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日本では、国をあげたスタートアップ支援の動きが活発化している。ユニコーンを多数輩出し、スタートアップの海外進出を促進、海外ユニコーンの日本誘致、WEB3に関する環境整備など、全国規模で新しいトピックが生まれる。そのなかでも特に盛り上がっている地域がある。2025年に大阪・関西万博開催を控え、大阪、京都、神戸を有する関西(KANSAI)地域だ。
6月30日に関西広域連合主催で「KANSAI STARTUP NIGHT VOL.1」というイベントが開催された。日本第二の経済規模を誇る関西エリアでは、ディープテックを中心とした独自のスタートアップ・エコシステムを形成、アジアをはじめとした海外エコシステムとの積極的な連携を目指している。今回は初回のイベントということで、関西スタートアップ・エコシステムの魅力やポテンシャル、関西発の日本を代表する研究開発型スタートアップを紹介する。
「ディープテックバレー“関西(KANSAI)”」とは
関西地域が打ち出す方向性の一つが、「ディープテックバレー」だ。歴史的な背景から、数多くのディープテック・スタートアップを創出し、彼らが活躍するための高いポテンシャルを有する関西(KANSAI)は、世界にも通用するスタートアップ・エコシステム拠点となることを目指す。グローバル規模で大学や研究機関、コミュニティ、経済界、政府機関が連携することで社会課題を解決していく。
他にも関西地域のスタートアップ・エコシステムに関する情報は以下のサイトに集約され、海外に向けて発信されている(英語)。
https://en.kansai-startup-ecosystem.com/
今回のイベントでは、関西地域のエコシステムを支える以下4名が登壇し、関西が持つ魅力や、なぜディープテックが発展しているかについて示された。
藤家 新一郎氏 ペプチスター株式会社 取締役 執行役員
水原 善史氏 大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社 投資部長
齊藤 祐一氏 神戸市医療・新産業本部 新産業部新産業課 新産業課担当係長
泉 友詞氏 フォースタートアップス株式会社 Public Affairs戦略室 室長(モデレーター)
ディープテックバレー“関西(KANSAI)”の魅力とは
3名が挙げた関西の特徴をまとめると以下のようになる。
①ディープテックが育つ研究機関の集積地
世界トップレベルの大学(大阪大学、京都大学、神戸大学等)や研究機関、研究開発に力を入れる大企業が集積しており、イノベーション創出の潜在力は非常に高い。今後はさらに社会実装についても爆速で進めていけるよう各機関同士が連携を強化している。一部地域の特徴も簡単に紹介する。
京都・・京都大学を中心にiPS細胞作製技術などを有し、メディカルやヘルステック領域をリード
神戸・・ポートアイランドは日本最大級の医療産業都市、海外企業の研究開発拠点も多数
大阪・・大阪の道修町は「くすりの町」として有名で医薬品企業の集積地、化学や環境産業も発展
②ヨーロッパ1国分に匹敵する経済規模
関西圏の人口は2000万人を超えており、主要国の名目GDPと比較をしても、関西はオランダ(世界17位)に次ぐ経済規模となっている。
③起業家を盛り上げ、応援する文化
関西を代表する大企業は、海外を含めたスタートアップに対して非常にフレンドリー。それは、各企業がまさにスタートアップから始まり大企業となった歴史があるからだ。関西を代表するスタートアップの先輩として、パナソニック、キーエンス、日本電産、オムロン、任天堂など、幅広い業界の成功企業がある。今も昔も、自ら事業を興す起業家たちは、関西では尊敬される存在だ。
④人情味、あたたかさ
東京を中心とした関東圏のビジネス習慣や人間関係はクールな印象を持たれる。一方、関西は人と人との距離感が近く、人情味あふれた人間関係が魅力。こういった特徴は、特に中国やアジアの文化に近いところもあり、海外から来る人にとって関西は非常に居心地が良いと感じるようだ。
このようにスタートアップが成功できる土壌と、官民一体となって手厚い支援を惜しまないことが関西地域最大の強みであり、もし外国人が日本で起業する場合も、スタッフ一人一人が丁寧に手厚いサポートをしてくれるだろう。
神戸市の齊藤氏によれば、海外と関わるプロジェクトも増えてきているという。例えば神戸市が今年実施した「SDGs CHALLENGE」では、世界のSDGsの課題解決を目指す日本のスタートアップに対し、経験豊富なメンター陣による個別メンタリングや、海外現地のスタートアップ支援機関やエコシステムの紹介など、海外進出支援プログラムを提供する。また、「SDGs Day for Business Matching」では、事業会社・投資家とスタートアップのビジネスマッチングも実現している。
これらのイベントには、環境に優しい技術を持った、中国や東南アジアのディープテック・スタートアップも参加しており、海外との連携にも積極的だ。
関西を代表するディープテック·スタートアップ5選(KANSAI Deep Tech Startup Pitch)
関西を代表するディープテック・スタートアップ5社が登壇しピッチを行った。なかには、中国人が創業している企業や、中国の投資家が出資している企業もあり、関西とアジアは水面下では多くの経済交流や事業機会があることを感じさせられた。
ペプチスター株式会社
ペプチスターは、今後グローバルで大きな成長が見込まれる中分子医薬品の製造会社。塩野義製薬、積水化学工業といった関西を代表するヘルスケア大手による合弁で2017年に設立。日本はアジアでも有数の中分子医薬品開発国だが、国内に十分な供給体制がなかったため、同社が国内最大級、世界でも有数の製造拠点をゼロから立ち上げる、というチャレンジを行っている。
株式会社メガカリオン
京都大学と東京大学で発明されたiPS細胞から血小板を産生する技術の実用化を目指して 2011 年に設立。直近ではシリーズDでINCJ、SBI、積水化学、佐竹マルチミクスから資金を調達している。日本発のヒト iPS 細胞由来血小板製剤を工業的に大量生産することで、少子高齢化による献血不足が懸念される先進国や、すでに血小板製剤の不足が社会問題化している途上国等の世界の医療現場へ供給することを目指している。
将来的な事業化においては海外事業者との提携も視野に、各国のパートナーとなり得る企業探索も続けているとのこと。
*36Kr で以前取材した記事(中国語)
https://36kr.com/p/1787424597193094
株式会社バイオパレット
神戸大学発の技術で、ゲノム編集を利用したマイクロバイオーム(腸内細菌)治療の開発・事業化を目指す、2017年設立のバイオテック企業。DNAの切断を前提とする従来のゲノム編集技術とは異なり、DNAを切らずに置き換えることができる世界でも珍しい独自技術が特徴的で、Eight Roads、F-Prime Capitalはじめ複数の米系VCや日本のJAFCOから資金調達を行う。この基本特許を有するのはハーバード大学と神戸大学のみで、2019年にはクロスライセンス契約を締結、知財戦略にも成功し、今後は関西からイノベーティブな医薬品を発信していきたいと考えている。
4Dセンサー株式会社
2012 年に和歌山大学発スタートアップとして設立され、世界最速級の3Dスキャナーで超精密な形状測定を可能にする4Dセンサーを開発する企業。直近ではシリーズDでセイコーエプソンから資金調達している。広範囲の計測を高精度・高速度で展開できることを強みに、電子部品・自動車部品などの三次元形状や、橋梁・建物などのインフラ構造物の変形の計測、人体計測など様々な場面で応用が可能となっており、既に大手製造会社、建設会社をはじめとした多くの取引実績を持つ。
株式会社tiwaki
滋賀県発スタートアップとして中国人創業者の阮翔氏によって2016年に設立された世界最先端のエッジAI画像認識プロバイダー。自社開発ソフト、カスタマイズ開発、顧客のニーズに応じて柔軟に技術を提供する。日本国内では極めて珍しいエッジAI画像認識に関する自社独自のアルゴリズムを開発していることも特徴。商品化レベルの技術実装にも長けており、現在はスマート店舗や駅の監視システム、スマート駐車場など5つ以上のプロジェクトを推進する。関西地域は、今まさにDXを推進している企業や政府機関も多く、事業の機会は非常に大きいと考えているという。
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