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オフライン・エンタメ市場の期待材料は何処に?
不動産コンサルティング会社「RET睿意德(RET Commercial)」のデータによれば、中国の商業施設は成長トレンドにあり、撮影やIP(知的財産権を持つキャラクターなど)関連のイベントが急増している。この内、静的展示の展覧会がIPやデジタルコンテンツのイベントへと代替わりしつつある。
北京・上海・杭州などで「不思議の国のアリス」をテーマにした「ALICE Into the Rabbit Hole」展を運営する「懐実文化(Wise Culture & Media)」は、独特の構想で「文創特展(体験型展示会)」を打ち出している
2017年設立の懐実文化はライブエンターテイメント領域に特化し、海外プロジェクトの誘致・キャラクターライセンス事業・プロモーションのアレンジ等を行っている。多くの展示会が入場料を収益スキームのメインとしているのとは異なり、懐実文化の創始者兼CEOの賈柯氏は、展示会を“テレビ局”として考える。コンテンツ・メディア・プロモーション・ブランド提携を融合させる総合プラットフォームということだ。
「浙江電視台(CZTV)」やエンタテイメント情報サイト「格瓦拉生活網(Gewara)」で働いた経験を持つ賈柯氏は、2015年に熊本県の公式キャラクター“くまモン”を起用したコンテンツを手掛けたが、調整には1年かかった。「日本人は、IPの扱いに対し厳しいルールを定めており、イメージ、キャラクター設定、運営、アライアンス管理等のフローが整っている。一方、中国は今でも演出や制作ロジックのフローに欠けている」と賈柯氏は語る。
このような管理体制の不備などにより、中国でのIP関連展示イベントは参入障壁は低いが市場を育成できておらず、契約を継続しづらく高品質なIPを生み出せないという問題があるという。
その為、賈柯氏は独立する際、韓国で既に確立されたIP「不思議の国のアリス」を選んだのだという。賈氏は、何度も韓国へ足を運び、中国における3年間の運営権を数百万元(数千万円)で獲得した。決め手となったのは次の3点だ。
まず、韓国で既に成功しており、中国でも成功する可能性が高いこと。第2に、「アリス」の入場者の78%が15~35歳の親子を含む女性であり、中国で消費に関する意思決定力のある層と重なるということ。3つ目は、一般の静的展示と比べ、芸術的過ぎず、かつ商業的過ぎないという数少ないオフライン・エンタメ商品であることだ。
懐実文化主催の北京展では、歌手の張韶涵(Angela Zhang)を招きメディアと連携、SNS上でもプロモーションを実施。KOL(インフルエンサー)のブログ閲覧数の10%がチケット購入につながり、来場者は7万人を超えた。売り上げ500万元(約8,200万円)超のうちチケット収入が70%を占めた。
この他、業界を跨いだ連携でキャラクター関連商品を開発し、チケット以外でも収益を上げている。現状の収益構造は、チケット:広告スポンサー:関連商品・ライセンス料の割合はおおよそ6:2:2になるという。
2019年、懐実文化はアリスのIPを飲食・ホテル・カルチャー・観光等の分野にも派生させていくほか、新たに5つのIPによる巡回展を開催する。また、韓国・日本のアイドルミュージカル(劇場型公演)スキームも試みる計画だ。中国のミュージカル市場は安定して伸びており、上海で2014年に10数本だった公演が、2017年に50本超、2019年に100本を超える見込みだという。
ただIP展覧会に比べ、ミュージカルの制作過程や演出などは格段に複雑であることには注意すべきだ。賈柯氏は、ミュージカルへの進出は段階的に行っていくとしている。
懐実文化は現在12名のチーム。2017年にはエンジェルラウンドで数百万元(数千万~億円)を調達、現在は既にプレシリーズAでの資金調達を開始している。
(翻訳:貴美華)
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