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「淘宝(タオバオ)」、「天猫(Tmall)」総裁の蒋凡氏は、「安価な商品を売りまくっていた頃の淘宝には絶対に戻らない」と過去に語っている。だが、小売業界は常に変化している。低価格帯のソーシャルEC「拼多多(Pinduoduo)」等の急成長により、淘宝も商機を探り、範囲を広げ、安価な商品を好む消費者を含めたあらゆる人にサービスを提供する必要があることを見てとった。
このため、アリババは共同購入サービス「聚劃算(juhuasuan)」、「天天特売」、「淘搶購(qiang.taobao.com)」など複数のプラットフォームを整理統合し、低価格の「天猫閃降」や「淘宝特売」を新たにリリース、「下沈(ローエンド)市場」を攻めていくと発表した。
2018年末の時点で淘宝モバイル版は低価格帯ユーザーの伸び率が大きく、さらなる成長の見込みがあることから、蒋凡氏自ら低価格事業の見直しを宣言した。
波乱の10年間を耐え忍ぶ
2010年3月、中国で最初の共同購入サイト聚劃算がサービスイン。順調に業績を上げ、一時は取引総額2000億元(約3兆3000億円)の果実を手にしたが、苦労も多かった。
共同購入が目新しかった頃、聚劃算はアリババの力もあり一気にトップの座に躍り出た。淘宝と肩を並べるアリババ7大事業の一つとなるが、残念なことに淘宝と聚劃算が勝ちに乗じることはなかった。最大のライバル「京東(JD.COM)」に舳先を向け、消費のアップグレードを掲げてハイエンドユーザーを奪い合ったのだ。
消費のアップグレードを首尾良く果たすには、サプライチェーンの構造改革が必要だとアリババは考えた。2015年7月に淘宝は「C2M(Consumer to Manufacturing 中間流通を省き、メーカーと消費者を結ぶ)」スキームを打ち出したほか、有名ブランドの呼び入れに力を注いだ。
こうして価格帯は上がり、コストパフォーマンスの高さを売りにして来た聚劃算は、勢いを失い天猫に吸収されてしまう。
そんな中、拼多多などソーシャルEC勢力は、ローエンド市場で商機を掴んでいた。
アリババにも同じ構想があったが、実行に至っていない。理由は、EC事業が好調で浸透しづらいローエンド市場に進出する必要性を感じなかったこと。二つ目に、ローエンドよりも、ミドル・ハイエンド市場の京東を脅威とみていたこと。三つ目は、低価格時代に逆戻りすれば、高価格化を狙った天猫の10年間が無駄になると考えたからだ。
しかし、拼多多などの猛烈な成長ぶりを見てアリババは気づく。京東とミドル・ハイエンド市場で膠着状態を続けるよりも、成長中のローエンド市場で分け前にあずかるほうが良いのではないかと。不況でメイン事業が減速する中、アリババが高い成長率を維持するには1つの成長市場に頼るのではなく、複数の市場で同時に進軍することが必要なのだ。
今後の10年をどう歩むか
蒋凡氏は「消費はダウングレードしているのではなく、消費者のニーズが多様化しているのだ」との考えを変えていない。その上で「消費者によって出発点は異なる。我々は中国の消費者10億人が消費のアップグレードと質の高いショッピングをする手助けをしたい」と考える。
アリババ集団マーケティングプラットフォーム事業部の劉博総経理によれば、2019年には聚劃算、天天特売、淘搶購を統合し、ローエンド市場も取り込むための新たなプラットフォームを打ち出すとのことだ。
この再編によるアリババの目標は、中国200都市に進出し、C2MとC2Bのオーダーメイドを行う1,000の工業地帯を作り上げ、淘宝ブランドを3万個確立すること。一番の見せ場は「C2Mオーダーメイド」だ。
C2Mスキームには大手ブランドOEM工場と中小OEM工場がある。中小企業向けビジネスを得意とする淘宝は、大手ブランドOEMとして打ち出した「中国質造」が成果を上げられなかったため、天天特売のC2M工場を機に中小工場へ軸足を移し始めている。
拼多多はOEMによくある偽物や供給の問題で苦しんだが、アリババは得意のデータ管理等でこれを解決する。
態勢の立て直しを図る聚劃算、方向転換するアリババの後をしっかり追う必要があるだろう。
(翻訳:貴美華)
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