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中国の電気自動車(EV)最大手BYD(比亜迪)は8月15日、江西省の宜春市政府、宜春経済技術開発区、宜豊県政府、宜春市鉱業(Yichun Mining)と戦略的提携枠組み協定を締結した。BYDは宜春市に285億元(約5900億円)を投じ、年間生産力30GWhの駆動用バッテリーおよび年間生産力10万トンのバッテリー用炭酸リチウムやセラミックス粘土を採掘・開発・利用する生産基地のプロジェクトを始動させる。
285億元という数字は車載電池最大手CATL(寧徳時代新能源科技)の投資額の倍以上になる——CATLは昨年9月、宜春市政府、宜春市鉱業と同様の協定を締結しているが、その投資総額は約135億元(約2800億円)だった。
独メディアTeslamag.deは、BYDが宜春への進出を発表した頃、米EV大手テスラのベルリン工場では主力車種「Model Y」の生産ラインにBYD製のリン酸鉄リチウム電池がすでに投入されていたと報じている。BYDの「ブレードバッテリー(刀片電池)」を搭載したModel YがEUの自動車型式認証を取得したことも、オランダのインフラ・水利省発行の認証証書からわかっている。
このニュースはCATLにとって衝撃だっただろう。テスラの独占サプライヤーとしての自身の地位が脅かされるからだ。2020年2月、CATLはテスラと電池の供給契約を結び、中国の電池メーカーとして唯一のサプライヤーとなっていた。
BYDとCATLは、中国の新エネルギー業界におけるツートップであり、新エネ事業を手がける中国企業として時価総額が1兆元(約20兆7000億円)を超えたことのあるたった2社の成功者だ。特にCATLは長らく時価総額1兆元超を維持しており、中国語の社名が「寧徳時代」であることから「寧王」とも呼ばれている。
多くの人はBYDといえば自動車メーカー、CATLといえば電池メーカーだと考えているだろう。しかし実際、両社はより大きな新エネルギー産業のくくりで自社の領地を拡大することに大々的に力を注いでいる。つまり、両社の間の競争は単純に電池メーカーとして、あるいは自動車メーカーとしての競い合いではなく、駆動用バッテリー、新エネルギー車、蓄電、その他諸々を含めた産業全体をめぐる勢力争いなのだ。
駆動用バッテリー:世界覇者VS頭角を現す新勢力
BYDにとって2022年は駆動用バッテリー事業躍進の1年だ。
中国汽車動力電池産業創新連盟(China Automotive Power Battery Industry Innovation Alliance)の最新のデータによると、22年上半期、CATLの車載電池の搭載量は52.50GWh(ギガワット時)で市場シェアは47.67%だった。CATLに次ぐのがBYDで搭載量は23.78GWh、市場シェアは21.59%だったが、7月には25.23%にまでシェアを拡大した。21年には16.2%だったシェアがわずか数カ月で約1.5倍と驚くべきスピードで伸びていることになる。
駆動用バッテリーは主にリン酸鉄リチウムイオン電池と三元系リチウムイオン電池の2種類に分かれる。BYDは前者に長け、CATLは後者に強い。
三元系リチウムイオン電池の最大の長所はエネルギー密度が高く、航続距離が長いことだ。早期には大多数の新エネルギー車メーカーが三元系リチウムイオン電池を採用したため、絶対的な優勢を保っている。一方のリン酸鉄リチウムイオン電池は安全性で優位にある。技術が成熟するにつれて航続距離も大幅に伸ばし、三元系リチウムイオン電池にも劣らないレベルに達したことから、徐々に評価を上げている。
22年上半期、リン酸鉄リチウムイオン電池の累計搭載量は64.4GWhで、全体の58.5%を占め、三元系リチウムイオン電池を追い越した。
BYDがテスラに供給するブレードバッテリーも、まさにリン酸鉄リチウムイオン電池の進化形だ。リン酸鉄リチウムイオン電池は「新エネルギー車の安全性の懸念を完全に取っ払った」との認識を広めている。
最新のデータによると、7月のBYD製リン酸鉄リチウムイオン電池の搭載量は6.01GWh、市場シェアは41.9%となり首位に立った。CATLは直前の6月は搭載量7.75GWh、市場シェア50.32%で1位だったが、翌月37.37%と減少し2位に転じた。
BYDが搭載量を急速に伸ばしている理由としては、中国国内の需要に応える「地産地消」が大半を占め、海外に供給された割合は昨年はわずか5.56%だった。しかしテスラへの供給が決まったことは、リン酸鉄リチウムイオン電池市場に限らず、市場全体でもシェアを伸ばす圧倒的な追い風となるだろう。
(翻訳・山下にか)
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