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デジタルコンテンツを手がけるチームラボ株式会社(本社:東京都港区)がライセンス供与のかたちで、オフラインでの没入型体験イベントを中国の一、二級都市で展開している。中国江蘇省南京市の主要ショッピングモール「徳基広場(Deji Plaza)」で先日、中国オリジナルの参加没入型アート展「バラ・そこにあるかのように The World Of Splendors」(以下、バラ展)が開催された。
バラ展を主催したのは「格蘭莫頤文化芸術集団(GLA)」で、準備に4千万元(約6億6400万円)を投じたという。宋代の絵画「千里江山図」、「洛神賦図」、「百花図巻」など伝統文化からインスピレーションを得ており、アート作品の創作やインタラクション技術に関して多くの革新的な試みがなされた。こうした事例は、オフラインでの娯楽体験のリピート、芸術とテクノロジーの融合という業態のサンプルでもある。
バラ展では約1600平方メートルの展示空間が8つの場面に分かれており、中国で行われる他の展覧会に比べ視覚効果、相互作用性、ゲーム性の面で優れている。また、背後にある創作意図やテクノロジーの活用法も単なる「写真展」とは一線を画している。
このような試みは、バラ展と主催者が他の一流マルチメディアアート集団との競争力をつけることにつながるだろう。さらに、東洋美学という核と技術力というハードルがあるということは、このアート展が文化の輸出、消費財としての没入型アート体験商品において一定の競争力があることも意味する。
オフラインでの没入型アート展市場の成長余地は
第一に、異業種との協力や入場料以外の収入が見込める点。デジタル化された飲食空間を作り出したり、音声コンテンツを音声空間で再現したりすることも可能だろう。この数年、多くの企業がデジタルアートとのコラボレーションを試みている。スマホ大手のシャオミ(小米)、ストリーミングサービスの「蝦米(xiami.com)」、下着メーカーの「内外(NEIWAI)」などが没入型体験分野に乗り出しており、バラ展などのような供給側の成長の余地も、ニーズの高まりを受けて大きくなるとみられる。
第二に、バラ展は場面ごとに、文化・観光事業コングロマリットや商業空間、博物館など様々な領域で応用することが可能な点。公開データによると、チームラボが日本に構える常設施設は来場者数が半年で170万人を超え、観光地のひとつとなっている。大人3200円、子ども1000円の入場料から計算すると、半年間の入場料収入は累計で約2~3億元(約33億2000万~49億8000万円)になる。このビジネスモデルが日本で検証されれば、中国でも向こう数年のうちに類似のビジネスモデルが誕生するチャンスも出てくるだろう。
例えば博物館は忘れられた文化作品の宝庫だ。ここ数年、彼らは所蔵品の研究と保護の姿勢を「自己中心型」から、鑑賞ニーズに対応し、インタラクティブな体験を増やした「鑑賞者中心型」にシフトしつつある。バラ展は伝統文化や国宝と密接に関係しており、将来的により多くの文化作品とコラボレーションする可能性もある。
また、バラ展はライセンス供与のかたちをとっており、展覧会実施に際してより多くの運営者と協力することを検討している。バラ展の展示作品数は多くないものの、著作権管理のしやすさ、技術面の研究開発、美学と創造力の面で強みを持つ。
バラ展主催者の紹介
バラ展を主催した格蘭莫頤文化芸術集団(GLA)は2017年に設立され、現代的な消費体験の創造に注力している。東洋文化に源流を持つオリジナル作品を有し、バラ展はその最初の作品だ。同社は様々な題材のデジタル文化遺産をもとに、作品化と商業化を行っている。創業者の王雨馨氏はカナダのブリティッシュコロンビア大学(UBC)経済学部を卒業しており、ビジュアルアーツとアーツプロジェクトマネジメントを学んだ。大手会計事務所のPwC、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)などでの勤務経験がある。
(翻訳・池田晃子)
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