テンセント、任天堂のゲーム機「Nintendo Switch」を中国で販売へ

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テンセント、任天堂のゲーム機「Nintendo Switch」を中国で販売へ

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中国のIT大手、テンセント(騰訊)が任天堂のゲーム機「Nintendo Switch」(以下、NS)の販売代理を手がけることがわかった。中国広東省文化観光庁が先日、同庁の審査を通過したゲーム機器・コンテンツのリストを発表したことで明らかになった。このリストには、任天堂のゲームソフト「New スーパーマリオブラザーズ U デラックス(体験版)」も含まれている。

テンセントについては、クラウドゲームプラットフォーム「Tencent Instant Play(騰訊即玩)」やゲーミングスマホ分野への進出を発表したことで、ハードウェア市場に旋風を巻き起こそうとしているとの議論が再燃している。だが、特にゲームの分野では、現実は決してそれほど楽観できるものではない。

必要なものを分かち合う協力関係

テンセントCEOの馬化騰(ポニー・マー)氏は以前、「テンセントはスマートフォンやハードウェアには手を出さず、協力を通じてエコシステムを構築する」と明言していた。今回の同社と任天堂の提携は馬氏のこの考えに近い。

テンセントが得意とするのはソフトウェアやコンテンツ産業であり、それらと相互補完関係にあるハードウェアの分野では専門性の高いパートナーの手を借りる必要がある。同社は2014年にハードウェア事業に乗り出し、少なくとも10種類以上の製品を独自に開発しているがほとんど結果を残せず、業界関係者や愛好家以外の一般消費者にとっては「聞いたことが無い」という状態だ。

また、相互補完関係にある協力相手と大きく対立したくないという考えもあるだろう。例えばスマホ事業の場合、同社はファーウェイ(華為技術)、サムソン、レノボなど主要メーカーと協力関係にある。彼らの土俵に乗り込むことで関係が傷つくのは言うまでもなく、大手同士が激しく競争する中で活路を見出すのも非常に難しい。

一方、ゲーム市場全体をみる限り、ゲーム用端末分野は穴場だといえる。2018年に上海で開催されたゲーム見本市「China Joy」で公表されたデータによると、ゲーム用端末の売上が業界全体の売上高に占める比率はわずか0.7%で、分野別の比率は上から順にモバイルゲームの60.4%、ダウンロードゲームの30%、オンラインゲーム及びソーシャルゲームの9%だった。

ゲーム機の販売を通じてエコシステムを構築したいだけならば、テンセントと任天堂では中国市場における影響力も存在感も違いすぎる。テンセントは一体なぜ今回任天堂をパートナーに選んだのか。

テンセントは、ゲーム用端末事業で大した成果をあげられていないものの、ハードウェアへの道筋をつけたいと思い続けているのは明白だ。ゲーム配信プラットフォーム「WeGame」を立ち上げたり、米「Epic Games」や米「ライアットゲームズ( Riot Games)」などゲーム開発会社に投資したりと世界規模でハードウェアの資源統合を進めてきた。同社は今回の提携を通じ、任天堂のゲーム機などゲーム用ハードウェア分野での経験という力を借りることもある程度期待していると見られる。

ゲーム用ハードウェア事業を手がける上で、テンセントがより重視していることがある。ハードウェアはゲーム産業にとって不可欠ということだ。ハードウェアとの関わりは同社がゲームタイトルへの関与を深め、サプライチェーンの川上・川下でより大きな発言権を持ち、ハードウェアメーカーへの依存を可能な限り減らし、運営上のリスクを低減するのに役立つ。さらに、任天堂はソフトウェア(スーパーマリオシリーズやポケモンGOシリーズなどのゲーム作品)とハードウェアのバランスがとれている貴重なゲームメーカーだ。テンセントがそれほど利益の見込めないハードウェアに関わるのもソフトウェアを売るためであり、例えば今回の協力の中で、中国専用NSを通じた任天堂の人気ゲームタイトル販売に乗り出すことも可能だろう。

任天堂にとっては、今回の協力は中国市場での逆風を追い風に変えるチャンスだ。任天堂のゲーム機はかつてアップデートの速度が遅すぎる、外観が時代遅れ、ゲームソフトが高すぎるとの評価が下されていた。だが、次世代の若者の口コミをみる限り、この評価は完全に覆されている。任天堂が中国市場で解決できていないのは販路と配信の問題であり、テンセントの助けを得られれば鬼に金棒だ。また、ゲームプレーヤーやメディアにとっては、ようやく「公式」のコンテンツに触れるチャンスが来ることになり、世論も任天堂の追い風になるとみられる。

先行きは明るいが落とし穴も

テンセントと任天堂の提携は典型的な強者同士の連合だ。全体的に先行きは明るいが、落とし穴も多い。中国には技術や市場とは関係のないハードルが存在する。

政策の面からみると、ゲーム機の製造・販売規制はすでに撤廃されているものの、若者の過度なゲーム依存という社会的事件が発生すれば、ゲーム機が再び規制される可能性は高い。また、悪質な通報を受けて、ソニーが家庭用ゲーム機「プレイステーション4」の発売延期に追い込まれたり、WeGameでの「モンスターハンター:ワールド」販売を当局が差し止めたりする事例が実際に発生しており、テンセントは極めて慎重にならざるを得ない。

さらに、政策が任天堂の中国製ゲームをどれほど支援できるかも定かではない。任天堂のゲーム作品はほとんどが健全であり、導入しやすいコンテンツとなっている。中国市場にそぐわない、規制を受けるかもしれないなどの心配は不要であるにも関わらず、「ゼルダの伝説」から「マリオ&ソニック AT ロンドンオリンピック」などマリオシリーズまで、いずれのゲームもいまだにリリースできていない。

いずれにせよ、テンセントと任天堂が協力するというニュースにより、長い間動きの乏しかったゲーム機市場に再び目が向けられるようになった。メーカーやゲームプレーヤーのゲーム機市場に対する希望と期待も高まっており、少なくとも幸先は良いと言えるだろう。
(翻訳・池田晃子)

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