カスタムカー専門「工匠派汽車」、小型スポーツEV発売へ シャオミ出資の事情とは

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カスタムカー専門「工匠派汽車」、小型スポーツEV発売へ シャオミ出資の事情とは

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車両のカスタマイズを専門とする「工匠派汽車科技(Tianjin Gongjiangpai Auto Technology)」が9月25日夜、初めて自社で設計した小型スポーツカータイプの乗用車「SC01」を発表した。

SC01の車両重量は約1300kg、最高出力320kWの2モータ四輪駆動で、0-100km/h加速の参考値は3.9秒未満、定価30万元(約600万円)以下で2023年7-9月期に予約受付を開始し、10-12月期に正式に納車されるという。0-100km/h加速が4秒以下ならガソリン車でも定価が100万元(約2000万円)を超えるのが当たり前なのに、工匠派汽車はEVを30万元で発売、来年の納車を計画しているというのだ。

工匠派汽車の小型スポーツカー「SC01」(同社提供)

もちろん工匠派汽車には勝算がある。というのもスマホ・IoT機器大手のシャオミ(小米、Xiaomi)が同社に数千万元(数億~十数億円)の資金を提供し、登記情報によると、シャオミ共同創業者の劉徳高級副総裁が工匠派汽車の取締役を務めているのだ。シャオミの創業メンバーであり同社のエコシステムを知る中心的人物の劉氏が投資対象企業の役員を務めるのは普通のことではなく、シャオミグループの戦略的意思が表れている。

シャオミは昨年3月に自動車製造に乗り出すことを発表して以降、自動運転ICチップメーカー「黒芝麻智能科技(Black Sesame Technologies)」、リチウムイオン電池開発の「衛藍新能源(WeLion New Energy Technology)」、LiDARメーカー「禾賽科技(Hesai Photonics Technology)」、車載バッテリーメーカー「蜂巣能源科技(SVOLT Energy Technology)」、リチウム製品メーカー「ガンフォンリチウム(Ganfeng Lithium、贛鋒鋰業)」などにたて続けに投資した。実際のところは、いずれもシャオミ傘下の投資ファンド「小米長江産業基金(Hubei Xiaomi Changjiang Industrial Investment Fund)」が主体となった、金銭的側面と産業的側面を兼ね備えた性質の投資だ。

EV製造事業に参入して500日 中国スマホ大手シャオミの現在地は

シャオミの戦略を代表する戦略投資部門が自動車分野で投資した企業は限られており、自動運転技術開発の「DeepMotion(深動科技)」がシャオミの求めに応じてシャオミの自動運転開発のコアメンバーになっている。工匠派汽車はシャオミの戦略投資部門による自動車分野での2件目の投資だ。

ではなぜ工匠派汽車なのだろうか。工匠派汽車は自動車ファンの間では名の知れた企業だ。同社は14年にスポーツカー愛好家の馮暁彤氏が創業、様々な車を改造するだけでなく、ラリー主催企業と協力して高性能のラリーカーに仕立てるなどしてきた。工匠派汽車は愛好家の間で評価が高く、1000万人近いファンを抱えている。

カスタムカーを手掛ける企業には、完成車メーカーと協力して独自の車両を開発し、共同で販売するという方法もある。しかしこれには欠点もある。完成車メーカーはサプライチェーンにおいて強力な発言権を持つため、車両カスタマイズ企業は往々にして設計案を提供するだけの立場になりがちで、製造やサプライチェーンを主管するのは難しく、価格決定権も持てない。こうしたことは理解に難くないのに、なぜ工匠派汽車は一歩踏み出すことを決めたのだろうか。

発表会で公表された情報によると、SC01は業界の主流となっているスマート技術を追求したものではなく、主に性能、操舵などドライバーの運転体験に資源を集中させている。馮氏は「コストがかかり重量が増えてしまうため、車内の装備に娯楽要素を持たせていない」とし、さらに「運動性能を優先させるという原則を曲げず、出来る限りコストを抑え、一般道路でラリー向けのエンジニアリング技術を感じられるようにした」と語った。

SC01はシャオミのマーケティング戦略に沿っているようだ。航続距離500km以上、重さ1300kg、425馬力の四輪駆動車という1車種のみに絞り、「運動性能の設計と装備では、シャシーの形やサスペンションの構造などオーナーによる改良が困難な部分には並外れた設計を施し、自分で手を加えることができ個性を求める部分については実用的な装備にとどめた」という。

サプライチェーンと製造の問題を解決するため、SC01はモータやバッテリーなどを含めコア部品については出来る限り既存のサプライチェーンを利用し、シャシーや個別に対応が必要な部品についてのみ設計した。

工匠派汽車が長年の経験により、非凡なエンジニアリング能力と市場に対する嗅覚を磨き、ユーザーをつかんできたことは明らかだ。こうしたこともシャオミの戦略投資部門をひきつけたのだろう。

シャオミはスマートフォンで低価格路線に走った結果、薄利のために研究開発が制限され、ハイエンド市場参入の際多くの困難に直面した。同社の雷軍CEOは自動車製造では同じ轍を踏まないようにしている。

自動車業界でハイエンド市場に打って出るにはインパクトのある高性能車種が必要とされ、シャオミも例外ではないが、工匠派汽車はこの点で必要とされる経験を提供することができる。工匠派汽車のような経験豊富なメーカーにシャオミの資金援助が加わったことで、高性能スポーツカーというファン層が限られた市場も新たな段階を迎えるかもしれない。
(翻訳・36Kr Japan編集部)

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