中国人の「匂い」の記憶にアピールする香水ブランド「気味図書館」の戦略

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中国人の「匂い」の記憶にアピールする香水ブランド「気味図書館」の戦略

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香水ブランド「気味図書館(SCENT LIBRARY)」は2009年に設立され、中国では比較的早期に香水分野に進出した企業だ。2017年末に発売した「涼白開(L.B.K. Water)」はSNSで話題となり爆発的に売れ、2018年11月の「独身の日」セールでは40万本以上を売り上げた。

その後、気味図書館は「国民的フレグランス&ボディケア用品ブランド」という顔を持つようになり、2018年のオンライン売上高は前年の3倍以上、ECサイト「天猫(Tmall)」の国産香水ブランドで3年連続第1位になった。実店舗も60店以上あり、北京、上海、成都など各地の主要ショッピングモールに出店している。

同社が社名を冠した独自ブランドを発表したのは2014年のことだった。フローラルシリーズや都市シリーズの製品が当時の市場にマッチし、この時期でも売り上げは70%前後の伸びを維持していた。だが、同社創業者の娄楠石氏は「気味図書館の名を市場に認知してもらうことができなかった。外国のブランドだと思う人も多かった」と語る。

「多くの中国人が共通して持つ固有の記憶や感情を具象化する必要がある」。娄氏はチャンスをものにするには、自国のカルチャーに根差すことが不可欠だと考えた。そして、これはまさしく香水市場の空白部分でもあった。消費財分野での起業に際しては大手ブランドや大企業からのプレッシャーを意識せざるを得ない。だが、成熟したブランドは往々にしてそのブランド固有の文化を確立しており、「中国人のための香水」を作るのには向いていない。そこにチャンスがあると考えたのだ。

こうした考えに基づき、同社は2種類の香り「涼白開」と「姜絲可楽」を開発した。80~90年代生まれの若者にとって、前者は(水道水を飲み水にするために)沸かした後に冷ました白湯、後者は風邪をひいたときに母親が作ってくれたショウガ入りホットコーラという子どもの頃の記憶を引き起こすものだった。

左から「涼白開」を紹介するソーシャルEC「小紅書」、SNS「微博(ウェィボー)」。右端は天猫の直営店

気味図書館は「涼白開」のような製品を新たに開発できるだろうか。娄氏は「涼白開の本質は中国に対する理解と解釈であり、それを製品化したものだ」と語る。中国のある特定層共通の記憶、例えば大手食品メーカー「旺旺」の「せんべい」にまぶされているパウダー、「旺旺練乳」など幼年時の記憶の中にある味に基づくマーケティングを行うことは、人気商品を生み出し続け得る方法として検証済みだという。

同社は、現代の若者が共感できる香りに注力していきたいとしている。娄氏は「研究開発や発売準備を控えている香りがすでに200以上リストアップされている」と明かした。

黎明期の嗅覚市場、新ブランドの戦略は

気味図書館が「中国人のフレグランスブランド」として認知されるには、「涼白開」と発想を同じくする製品を常に市場に出し続ける必要がある。

ここ数年、中国では「嗅覚経済」が大きく伸びているが、資本市場の反応は比較的冷静だ。消費のアップグレードを踏まえ、市場の動向は好感できるものの、爆発的に伸びるところまでは来ていないとの見方が中心となっている。

ただし、「嗅覚経済」=香水ビジネスではない。天猫の気味図書館社直営店の販売状況を調べたところ、「涼白開」シリーズの販売数ランキングは上から順にボディソープ、ボディミルク、香水となっていた。娄氏も、消費者にとって香水を購入するのはハードルが高いが、ボディケア製品は試しやすいと説明している。フレグランスブランドの行き着く先は、「香水+フレグランス+パーソナルケア製品」だと言ってもいいだろう。

気味図書館のボディケアシリーズ製品イラスト

「フレグランス市場を掌握するには、まずは自身が優れた『香水の』ブランドであると証明することが不可欠だ」と娄氏は語る。

販路と宣伝に関しては、さまざまなソーシャルメディア、オンラインとオフラインを総合してまとめる考えだという。単一のルートで宣伝活動を行い、消費者を引き寄せるのではなく、各所でターゲティング広告を行い、製品や理念を打ち出すことで、エンドユーザーの馴染みのある場所でのコンバージョンを達成するとしている。

気味図書館の店舗写真

実店舗に関し、同社は当初セレクトショップをターゲットとしていたが、今では自社製品を販売する旗艦店にシフトしている。娄氏によると、過去2年の同社の目標は「香水ブランド」を脱却し、フレグランス、ボディケア製品にも手を広げることだった。このため、店舗空間のパフォーマンスについては最大限の効果を上げることまでは追求できなかったが、それでも全体的な業績と顧客のイメージはかなり向上したという。

成熟市場である海外市場をベンチマークとすると、同社には1000以上の店舗を展開する余地がある。同社はほぼ全ての一級都市、二級都市に出店しており、今後は地方市場への浸透を図っていくことになるだろう。全体的な方向性としては、ライフスタイルショップという業態で、カーフレグランスやボディスプレーなど、香りに関係するあらゆる製品にラインナップを拡大していくとみられる。
(翻訳・池田晃子)

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