絶滅寸前のハイナンテナガザル、鳴き声を自動収集しAI分析。ファーウェイが保護活動に協力

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サルの鳴き声が訴える意味がAI技術によって理解できるようになってきそうだ。中国海南省の海南国家公園研究院が通信機器大手ファーウェイと熱帯雨林に関するイベントを共同開催し、同省に生息する世界的な希少動物ハイナンテナガザルの生息環境や、テクノロジーの力で生物多様性を保全する方法について紹介した。

ハイナンテナガザルは国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種レッドリストで「深刻な危機」にある種に分類され、絶滅の危険性はジャイアントパンダ以上とされている。現在の生息数は36頭で、全頭が海南熱帯雨林国家公園覇王嶺の十数平方キロメートルのエリアで暮らしている。人工繁殖が不可能なため、生息地の環境修復や個体群の保護を通じて個体数の増加を図るしかない。

生息地が広大なため、ハイナンテナガザルの観測は難しい。観測活動を行うスタッフが常に山深い霸王嶺エリアを巡回するが、悪路や高温多雨な気候、蚊の襲来などに悩まされる。さらに難しいのは、ハイナンテナガザルは警戒心が強く、常に樹上で生活しているため目視での観察はできず、鳴き声に頼るしかないことだ。

霸王嶺エリアでハイナンテナガザルを観測する韋富良氏によると、ハイナンテナガザルは夜明けとともに大きな声で歌う。こうした声をエリア内各所に敷設したモニターで収集し、声を分析しているという。この作業はこれまで人が担ってきたが、オフラインの(ネットワークに接続していない)モニターは保存容量に限りがあるため、データはおおよそ15日分しか保存できない。一方、各観測ポイントをスタッフが巡回できるのは3カ月に1回。つまり、モニターは80%以上の声を収集できていない計算になる。

そこで、通信機器メーカーのファーウェイが2021年末から国際自然保護連合、海南国家公園研究院とともに「Tech4Nature」プロジェクトの試験運用を開始。インターネット、クラウド、AIなどのデジタル技術を融合して生物多様性を守るソリューションを模索している。

画像出典:ファーウェイ

ファーウェイの提携企業が提供する無線通信ネットワークを用いて現在では24時間体制でモニタリングを実施し、リアルタイムでデータをクラウドに転送するようになった。定期的に現場に赴いてモニターからデータを採る従来の方法を脱却し、データの即時性も高めている。

クラウドコンピューティングやAIの支援でデータ処理の効率や正確度が顕著に上がり、人では識別しづらかったテナガザルの鳴き声もスムーズに取得・分析できるようになった。中山大学の范鵬飛教授はアルゴリズムを用いて音響特徴量を取得し、一連のモデルと照らし合わせることで89.2%の識別率を実現している。

ファーウェイは将来的に自社のAI開発フレームワークを通じ、ハイナンテナガザルの鳴き声を自動で認識・分類でき、個体別に「声の身分証」が作成できるようになる可能性があるとしている。そうなれば、動物保護の専門家がハイナンテナガザルの家族構成を把握し、彼らを保護するための効果的なソリューションを策定する一助になる。
(翻訳・山下にか)

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