中高年女性の社交力に着目 シルバー経済に切り込むソーシャルEC「愛風尚」

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中高年をターゲットとした「シルバー経済」が中国で活況となっている。1960~1970年代生まれ(40~59歳)が中高年と呼ばれる世代に足を踏み入れ、彼らに向けたプラットフォームやブランドが次々と生まれているのだ。

IT大手テンセント(騰訊)の調べでは、2018年9月時点で、微信(WeChat)ユーザーのうち6100万人が55~70歳だ。彼らはインターネットやデジタル製品を使いこなせるだけでなく、高い消費能力を持っている。2015年、中高年向けの商品およびサービスはGDPの8%を占め、4兆元(約63兆円)規模となった。2050年にはGDPの3分の1を占めるようになると予想されている。

「愛風尚(IFUN)」は、彼らをターゲットとしたソーシャルECアプリだ。中国では中高年女性の間で「広場舞」と呼ばれる屋外でのダンスが流行しているが、愛風尚はまずここに目をつけた。国家体育総局の資料によると、日常的に広場舞に参加する愛好者は1億人を超えているからだ。愛風尚は広場舞向けのダンスシューズから取り扱いをはじめ、すでに100万足を売り上げた。全国各地の広場舞グループでリーダーを務める5万人にKOL(Key Opinion Leader、インフルエンサー)の役割を担ってもらうことで、市場を急拡大させている。

創業者の林偉氏は、「中高年をターゲットとした事業では、プラットフォームとユーザーの信頼関係を築くことが最も難しい」と考える。そこで、各地に散らばるダンスチームのリーダーにKOLとなってもらい、商品をレコメンドしてもらうことにしたという。広場舞のチームは平均30~40人のメンバーを抱えているため、5万人のリーダーの背後には200万人近いターゲットユーザーがいるという計算になる。

まずはリーダーに無料でダンスシューズを提供し、グループでの団体購入を推奨する。定価100元(約1600円)のシューズを1人あたりが年間1足購入すると仮定し、1億人の愛好者全員が購入すれば、年間売上高は100億元(約1600億円)に達する。

シューズに特化した商品展開ならば、競合メーカーは大手から中小まで枚挙にいとまがないが、愛風尚の強みは商品の頻繁なモデルチェンジと、各ユーザーが好みの色やデザインを選択できるセミオーダーメイド制にある。

また、5万人のKOLに継続的にプロモーションを行ってもらううえで、カギとなるのは「金銭的リターンよりも、承認要求を満たしたい」という彼女たちの願望に応えることだと林氏は考える。そこで、KOLに対して販売数に応じたリベートを支給する以外に、チャリティイベントなどを主宰してそれに参加してもらうことで、「自分は社会に役立っている」という達成感を感じてもらうようにしている。

2016年にこうしたソーシャルコミュニティの運営を取り入れて以来、同社のKOLのうち7割とは現在でも協力的な関係を維持している。ソーシャルコミュニティの運営やイベントの開催は、彼女たちのロイヤルティに確実に影響しているのだ。

現在取り扱っている商品はシューズを中心とした服飾品、日用品、健康食品など数十品目に留まる。しかし、林CEOは商品数を増やすことよりも絞り込むことの方が重要だと考える。中高年層は「知人からの推薦」に重きを置く特徴があり、個性の追求には関心がないことから、「知人(=ダンスチームのリーダー)が推薦する商品を、団体で一括購入する」という現在の販売方式を採用しており、商品に数多くの取扱品目が揃っている必要はないとしている。

今後も、中高年層を率いるオピニオンリーダー的存在をより多く取り込み、提携していくことが必須だ。ダンスシューズを皮切りにスタートしたプラットフォームは、引き続き服飾品関連で品数を拡充し、年内までには取り扱いSKUを100にする目標を立てている。
(翻訳・愛玉)

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