当局の審査終了、中国配車最大手「DiDi」 1年半ぶり新規登録再開が意味するもの

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サイバーセキュリティーに関する当局の審査を受けていた、中国オンライン配車最大手「滴滴出行(DiDi Chuxing)」は563日におよぶ新規ユーザー登録停止措置が解除された。

滴滴は1月16日、中国のSNS「微博(Weibo)」の公式アカウントで、1年以上にわたり問題点の是正に努め、サイバーセキュリティ審査弁公室の同意を得て、同日より新規ユーザーの登録を再開すると発表した。今後適切に有効な措置をとり、プラットフォームとビッグデータのセキュリティを確実に保障し、国家ネットワークの安全を守るとした。

中国配車最大手「DiDi」、新規ユーザー登録を再開 サイバーセキュリティ審査通過で

滴滴にとってユーザー登録の再開は、1年以上続いた我慢の時期が終わったことを意味する。

配車サービス群雄割拠の時代

配車サービスはユーザーの数も利用回数も拡大には限界があり、熾烈な競争が繰り広げられている業界だ。滴滴の決算報告によると、同社が2021年4月から12月までの間に逸した予約数は累計で約2億6400万件にのぼり、10%超の減少となった。ビジネスメディア「晩点(LatePost)」の報道によると、22年1月には予約数が1日当たり約2000万件と、上場時の2500万件と比べても5分の1減少し、配車サービス市場におけるシェアは9割近くから7割にまで落ち込んだ。

中国における配車サービスは滴滴にとって最も重要な収入源だったが、売上高は21年4-6月期の448億元(約9000億円)から7-9月期には390億元(約7800億元)に、10-12月期には375億元(約7500億円)となった。21年通年では営業損失が484億元(約9700億円)で前年比251%の増加、非支配株主に帰属する当期純損失は500億元(約1兆円)となり、前年から369%増えた。

滴滴の不在に乗じ、ライバル企業が次々に配車サービス市場を攻略していった。

21年7月に滴滴の新規ユーザー登録が停止されてから間もなく、市場から撤退していた生活サービス大手「美団(Meituan)」傘下の「美団打車(Meituan Dache)」が復活し、北京・上海・広州・深圳など100余りの都市でサービスを再開した。また、アリババ傘下の地図情報企業「高徳地図(Amap)」が運営するネット配車サービス「高徳打車」は、7月から9月にかけてアプリに登録する100以上のプラットフォームについて手数料無料キャンペーンを展開、多くのドライバーや車両の登録を獲得した。

規模がそれほど大きくない配車サービスプラットフォームもじっとしてはいなかった。「曹操出行(Caocao Chuxing)」は21年9月、38億元(約760億円)の資金調達を公表。1カ月後には中国第一汽車集団(China FAW Group)やテンセント、アリババ、蘇寧易購(Suning.com)など大手企業が支援する「T3出行(T3 Mobility)」がシリーズAで77億元(約1500億円)を調達し、この数年間の配車サービス業界における調達額の最高記録を塗り替えた。

アリババ支援のネット配車「T3出行」が1360億円調達 近年業界最高額

インターネット大手にはさらに大きな動きがあった。22年12月、字節跳動(バイトダンス)傘下の動画投稿プラットフォーム「抖音(Douyin)」が、モビリティサービスのミニプログラム開設の申請受付を開始したことが注目され、T3出行などが続々と登録した。これより前には、WeChatの支払いサービス画面にライドシェアなどモビリティサービスが追加された。ファーウェイも配車アプリ「Petal出行」のテスト運用を開始、スマートフォンのユーザーを足掛かりに配車サービスに食い込もうとしている。

配車サービス業務の立て直しは滴滴の急務になっている。

最大の株主はソフトバンク

公開情報によると、22年3月30日時点で滴滴の大口株主はソフトバンク・ビジョン・ファンド(保有率20.8%)、Uber(11.93%)、役員持株会(6.89%)、テンセント(6.43%)、CEOの程維氏(2.58%)だ。テックメディア「AutoLab」の計算によると、ソフトバンクグループはこれまでに累計で約120億ドル(約1兆5600億円)を滴滴に投資し、約20%の株式を保有しているが、現在時価総額はわずか15億ドル(約2000億円)程度で、100億ドル(約1兆3000億円)もの含み損となっている。

滴滴の新規登録サービス提供が再開したことから、大口株主にも業務上の利益以外で損失を取り戻すチャンスがある。滴滴は21年6月末にニューヨーク証券取引所に上場したが、サイバーセキュリティ審査弁公室による審査の前、22年6月初めに上場を廃止した。終値は2ドル29セント(約300円)、上場時の発行価格14ドル(約1800円)から84%値を下げた。米相対取引市場(ピンクシート)でも22年10月末に一時1ドル25セント(約160円)にまで落ち込んだが現在株価は上昇しており、23年1月24日時点で4ドル40セント(約570円)となっている。

報道によると、滴滴は香港市場への上場を急いでいるという。

かつて滴滴に投資したことのある機関投資家は、「滴滴だけでなく、その他の企業についても全体として監督管理は緩くなった。インターネットに対する厳しい監督管理は一段落し、人々の信用も回復するかもしれない」と語った。

この機関投資家はさらに、インターネット企業はより具体的な監督管理の細則を知らされる見込みだと述べ、「以前は多くの企業が米国で順調に上場するのは不可能だったが、それは具体的で法律に則った運用細則が欠如していたためだ。滴滴のインターネットセキュリティの審査終了後、監督管理部門はおそらく具体的な定義、運用、細則を示すとみられ、それが後に続く他の企業にとって有効な手引きになるだろう」とした。

原文:WeChat公式アカウント「字母榜(ID:wujicaijing)」

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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