宅配便量世界一の中国、激増のプラごみ問題。アリババなどEC各社、削減へ取り組み

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プラスチック汚染はEC(電子商取引)業界が変わらず直面してきた問題だ。宅配便の梱包材のうち段ボールは回収利用率が比較的高いが、プラスチック包装は回収が難しいうえ、リサイクルのコストが高く利益が少ないことから、環境汚染と資源の無駄遣いの要因となっている。

国際海洋保護団体オセアナの最新リポートでは、米アマゾンのプラスチック使用量は2020年から21年までに18%増加したという。同社はプラスチック緩衝材を主とする合計3億2100万キログラムの包装ごみを出している。22年5月に開かれた株主総会では半数近い株主がプラスチックの排出量を追跡して表示する「プラスチック・フットプリント」をはっきり公表することを要望したという。

実際のところ、アマゾンはEC業界のトップとして、省エネ、二酸化炭素排出削減や気候変動への対策にかなりの努力をしている。20年6月には20億ドル(約2600億円)規模の基金(Climate Pledge Fund)を設立。持続可能な技術とサービスの成長を支援することで、40年にゼロカーボン目標の実現を推進するとしている。

緩衝材としてよく利用されるエアクッションバッグ (写真:視覚中国)

中国は宅配便取扱量が8年連続で世界1位であり、経済成長をけん引する要因になっているが、同様にプラスチック汚染が深刻な問題となっている。

環境保護団体グリーンピースなどが共同で発表した「中国の宅配便梱包廃棄物の特徴と管理に関する現状の研究」というリポートによると、中国の宅配便で主に梱包に使われているのは段ボールとプラスチック製の袋だという。プラスチック製の袋は段ボールに比べて回収が難しい。再利用することができないプラスチック製品は埋め立てに場所を取ったり、可燃ごみを増やしたりするほか、海洋への流入など環境に大きな影響を及ぼしている。

政府もすでに関連政策を打ち出している。中国国家郵政局は2022年10月、定例記者会見で全国の郵便局や宅配便取り扱い業者に対し、25年末までに非分解性プラスチック製の梱包材(テープや使い捨て袋などを含む)の使用禁止を徹底させると発表した。

中国国家郵政局、25年末までに非分解性プラスチックの梱包材を全面禁止へ

プラスチック使用量を減らし、再利用率を上げるには

プラスチック汚染を減らすためには根本から使用ニーズを減らし、代わりとなる資材を見つけなければならない。また、使用や回収の各プロセスで、回収利用率を向上させる必要がある。

政府や企業も積極的に変わろうとしている。海南省は中国で初めて分解不能な使い捨てプラスチック製品の生産、販売、使用を禁止する規定を20年12月1日に正式に施行している。さらにネット通販でプラスチック製品が入ってくるのを防ぐため、中国国内のECプラットフォームに対し、該当するプラスチック製品を海南省に向けて販売することを禁止した。アリババ傘下の「淘宝網(タオバオ)」のほか「JDドットコム(京東集団)」、TikTok中国版「抖音(Douyin)」、家電大手「蘇寧易購(Suning.com)」、ソーシャルEC「拼多多(Pinduoduo)」、生活関連サービス「美団(Meituan)」など大手各社がこの承諾書に署名している。

一部の都市では、現地の特色を生かしたプラスチックの代替品を模索している。例えば竹が有名な浙江省湖州市の安吉県では竹をプラスチックの代わりに利用する取り組みを行っている。「浙江森林生物科技」は孟宗竹(モウソウチク)を加工して粉末にし、樹脂などの材料と混ぜ合わせ、分解可能な竹製梱包材を作り出した。竹は軽くて強度があり、靭性に優れるなどの強みがあり、宅配便の包装に必要とされる柔軟性や防水性を備えているだけでなく6カ月以内には93%以上が自然に分解されるという。

分解性プラスチックは近年よく見かけるようになったが、 実際に分解させるのはそう簡単ではない。繰り返し再利用できる梱包資材を採用した方がプラスチックの削減には有効だろう。

多くのEC企業も宅配便の包装を環境に配慮したものに変更している。京東集団や蘇寧易購、宅配大手の「順豊控股(SFホールディング)」などもより回収しやすいポリプロピレン素材を採用している。「将来的には第三社企業が宅配企業大手各社を取りまとめ、繰り返し再利用のできる梱包材が異なる企業間でも流通するようにして資源の再利用を促進することが期待される」とある環境の専門家は話した。

京東集団が推進する「青流箱」は正しく使用すれば50回以上再利用できる。(写真:視覚中国)

またEC大手各社は消費者に向けて二酸化炭素削減のための各種キャンペーンを行っている。例えばアリババの「88碳賬戸(CO2アカウント)」はユーザーが同社のサービスを利用する際、CO2排出削減に向けた取り組みを実践するとポイントが貯まり、貯めたポイントに応じて値引きなどが受けられる制度だ。

プラスチック汚染は世界各地に広がっているため、どの国や地域にとっても他人事ではない問題だ。プラスチック削減の取り組みはどんどん進化しているが、将来的にはまだ長い道のりが待っている。

(翻訳・山口幸子)

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