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プロアメリカンフットボールリーグ「NFL」の頂点を決める第57回スーパーボウルが日本時間2月13日午前に開催された。1億人がテレビ観戦すると言われる米国最大のスポーツイベントだ。その中で、中国発の格安ショッピングアプリ「Temu」が1400万ドル(約18億8000万円)を投じて広告枠2つを購入し、30秒のCMを放映した。
30秒で700万ドル(約9億4000万円)というのは、スーパーボウルのCM料としては過去最高額となる。しかもTemuはスーパーボウルでCMを放映した最も若いブランドとなった。これに先立ち、アプリストアに掲載されるTemuのキャッチコピーは「Team Up, Price Down(チームを組んで、プライスダウン)」から「Shop like a Billionaire(億万長者のようにショッピング)」に変わっていた。
Temuは中国の格安EC「拼多多(Pinduoduo)」傘下の越境ECプラットフォームで、まず米国でサービスを開始した。2022年9月1日のリリース以降、SNSを利用した共同購入や、Facebook、Instagram、TikTokなどのプラットフォームを通じ、瞬く間に注目を集めるようになった。
拼多多が中国で蓄積してきたサプライチェーンの強みを生かし、Temuは格安で商品を提供している。割引サービスを利用すれば、ワンピースやTシャツ1着の価格はわずか1~2ドル(約135~270円)だ。
スーパーボウル開幕前、Temu側は出店事業者に対し、2月13日にはアクセス数の急増が予想されるため、商品確保を急ぐよう注意を促していた。出店事業者の多くは、CM放映の影響で売り上げが明らかに増加したと語っている。
アプリ調査会社Data aiによると、Temuのデイリーアクティブユーザー(DAU)は今年2月初めに500万人に達し、1月の月間アクティブユーザー(MAU)は約1600万人に上った。米国のiOSアプリダウンロードランキングでは、昨年11月からずっと10位以内をキープしている。リリースから5カ月間でTemuアプリのダウンロード数はiOS版、Android版合わせて2500万回(9割が米国ユーザー)に達するなど、成長スピードはすさまじい。
Temuはレディースファッション、メンズファッション、コスメなど14のカテゴリで出店事業者を募集しているが、最も力を入れているのはレディースカテゴリだ。少なくとも広告やマーケティングにおいては、レディースファッションが「センター」を務めており、トラフィックやリソースも集まる傾向にある。スーパーボウルで放映された30秒のCMでもレディースファッションが多く登場した。これは北米で大ヒットした中国発ファストファッションEC「SHEIN」の成功モデルを再現していると見る業界関係者もいる。SHEINもまたレディースファッションを中心に展開しているからだ。
これ以前に、Temuが2023年GMV(流通取引総額)目標として30~40億ドル(約4000~5400億円)を掲げ、SHEINが2022年に達成したGMV300億ドル(約4兆円)を5年以内に実現することを目指していると報じられた。今年の目標達成に関してはプレッシャーを感じるかも知れないが、TemuがSHEINの地位を揺るがしていることは無視できない事実だと、多くの業界関係者が語っている。
投資銀行の中金公司(CICC)はレポートの中で、この先Temuの物流コストがSHEINを下回るようになる可能性について言及している。アパレルでは他のカテゴリに比べて返品や交換、在庫処理などで費用がかさむが、TemuはSHEINより幅広いカテゴリで展開しているため有利といえる。またTemuはJ&T Expressなどの物流パートナーと提携しており、受注量が増えてスケール効果が表れればパートナー企業がフルフィルメント費用(受注から商品発送、代金回収までにかかる費用)の一部を分担することも考えられる。物流面で言えば、TemuはすでにSHEINに比肩する存在になっている。
スーパーボウルでのCMデビューは、Temuのブランドマーケティングにおける第一歩と言えるかも知れない。「拼多多の戦略を参考にすると、Temuはこれから米国の主要番組で常連になる可能性が高い」と越境EC業界の関係者は語る。米国市場で急成長を遂げたSHEINの前に強力なライバルが姿を現した。
(翻訳・畠中裕子)
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