バイトダンスのビジネスツール「飛書」、22年のARRが1億ドル突破 SaaS市場に参入から3年

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TikTokを展開している中国テック大手のバイトダンス(字節跳動)が、傘下のオールインワン型ビジネスツール「飛書(Feishu、海外版『Lark』)」は、2022年の年間経常収益(ARR)が1億ドル(約135億円)に上り、前年比で2.7倍増えたと発表した。経営指標を公表するのは初めて。

この数字は謝欣CEOが今年2月の社内会議で明らかにしたもの。「ARRが1億ドル(約135億円)を超えたことは、SaaSプロダクトにとって非常に大きなマイルストーンになる」と話した。

ベンチャーキャピタルのBessemer Venture Partnersによると、現在世界で上場しているSaaS企業の上位25%は平均5.3年でARRが1億ドル(約135億円)に達しており、ここにはコミュニケーションツールのSlack、電子商取引プラットフォームのShopify、顧客エンゲージメントプラットフォームのTwilio(トゥイリオ)などが含まれる。飛書は3年でこの数字を達成した。

2016年にバイトダンスの社内用ツールとして立ち上げられた飛書は、19年に中国でサービス提供を開始し、21年から大手顧客を中心とする事業戦略に着手。小米科技(シャオミ)、理想汽車(Li Auto)、安克創新(アンカー)などの顧客を獲得し、これがARRの急増につながった。

ARRの公表は中国の企業向けサービス市場の方向転換も反映している。重点がユーザー数、使用頻度から次第に売上高の大きさへと移り、ARRやKA(キーアカウント)浸透率などの指標が重視されるようになった。

ユーザー数に注目するのは消費者向け事業では一般的な考え方だが、企業向け事業にそのまま当てはめるべきではない。2022年以降、アリババの釘釘(DingTalk)、テンセントの騰訊雲(Tencent Cloud)など中国大手の企業向け事業責任者たちは、ユーザー数のほかに顧客構成、売上高、自社開発製品などの指標を重視すべきだと声を上げ始めている。飛書の社内会議でも同じような話が出たという。

この方向転換には以下のような背景がある。企業向けサービス市場は3年にわたるコロナ禍でリモートワーク、オンライン授業などの需要によってデジタル化が進むチャンスを迎え、ユーザー数が急増したが、中国の企業向けサービス市場は未成熟なため、ユーザーの支払意欲が弱く、ユーザー数に見合った売上高が得られていない。

これは市場の現況にも表れている。飛書が事業を展開する企業・オフィス向けサービス市場では、各社が昨年から収益向上に力を入れ始めた。

例えば、釘釘はデイリー・アクティブ・ユーザー(DAU)10億人の目標を捨てて支払能力がより高い大口顧客に目を向け、支払、顧客維持率、利益率の向上が2022年の戦略転換の重点となった。テンセントの馬化騰CEOは同年末の社内会議で、CSIG(Cloud and Smart Industries Group)部門がサブスクリプションの売上高に的を絞り、企業向けサービスとビジネス向けサービスを閉ループで進めれば、売上が単発的になることを避けられるとの考えを示した。

昨年は世界のSaaS市場が低迷してマクロ経済が冷え込む中、企業はコスト削減と効率向上で厳しい時期を乗り切った。今後は企業向けサービスを手がける企業も、より健全な売上高を追求するようになり、そうした状態が長く続くだろう。

(翻訳・大谷晶洋)

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