4800台をリコールした有力EVメーカー「NIO(蔚来汽車)」、複数の発火発煙問題で

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新興自動車メーカー勢力における初のリコール騒動が起きた。

新興EVメーカー「蔚来汽車(NIO)」は6月27日、昨年4月~10月に生産した駆動用バッテリーが搭載されたEV計4803台について、即日リコールを開始すると公表した。

具体的には、バッテリーに搭載されたNEVーP50モジュール内の電圧検出ハーネスの向きに問題があり、モジュールカバーによる摩擦でハーネス表面の絶縁材が摩耗し、最悪の場合は絶縁層の焼損によるバッテリーの熱爆走と発火のおそれがあるという。

蔚来のリコール声明

車種リコール対象車両については、2カ月以内にNEVーP102モジュール搭載のバッテリーに交換される模様。

問題となったモジュールNEVーP50は初回生産分に搭載されていたが、、昨年10月20日以降に生産された車両ではNEVーP102を搭載している。蔚来によると、NEVーP102の内部構造はNEVーP50とは異なり、上述の問題は存在しないとのこと。

4月以降、蔚来製EVの自然発火・発煙問題が3度にわたり報じられている。4月には西安市で修理中のES8モデルが突然発火。翌5月には上海市の地下駐車場に駐車していたES8が発煙した。また、6月には武漢市でも同様の問題が発生している。

上海市での問題発生後に結成された調査チームの調べによると、ES8モデルにはいずれもNEVーP50モジュールからなるバッテリーが搭載されていた。同モジュールは世界最大の電池メーカー「CATL(寧徳時代新能源科技)」が蔚来専用に製造したもので、バッテリーセルとモジュールはいずれもCATLが供給し、バッテリーパックは蔚来が自社設計していた。

CATLは蔚来のリコール声明に対し「このたびリコールが実施されたバッテリーパック筐体と当社が供給したモジュールとの間で干渉が生じ、一部の極端な条件下では電圧検出ハーネスがショートする可能性があるため、安全上の問題が存在することがわかった。当該ロットのモジュールにはカスタマイズ設計を採用しており、この設計は今回リコールが実施された4803台のES8にのみ使用されている」とのコメントを発表している。

蔚来が米国証券取引委員会(SEC)に提出した文書によると、2018年6月から今年第2四半期までのES8累計納入台数は1万7550台となっている。2万台に届かない納車規模の中で発生した数度の自然発火・発煙問題が、同社の今後の市場拡大に少なからぬ影響を与えることは間違いない。蔚来は自社のバッテリー交換システムを利用しリコール費用を抑えるとも述べている。

新エネルギー車(NEV)の安全問題は蔚来に限ったものではない。国家市場監督管理総局の情報によると、2018年には「騰勢新能源汽車(DENZA)」「力帆汽車(LIFAN)」「衆泰汽車(ZOTYE AUTO)」「ランドローバー」「華晨宝馬汽車(BMW-Brilliance)」「北汽新能源汽車(BAIC BJEV)」「江淮汽車(JAC)」「奇瑞汽車(CHERY)」「テスラ」など自動車メーカー9社がNEV乗用車のリコールを行っている。

今年になっても問題はいまだ多発中だ。1~2月には国内でEVのリコールが4件発生し、累計リコール台数は約2万3500台に上った。

自動車の大規模リコールでは莫大なコストが生じる。市場監督管理総局の公告によると、中国では昨年末までに1768回のリコールが実施されており、欠陥車両台数は6925万台、リコールにより生じた直接費は合計で約529億元(約8464億円)となっている。

これに加えNEVメーカーは今後、国のNEV補助金削減による市場圧力に直面することになる。6月26日には2019年のNEV補助金に関する新たな政策が正式に施行された。地方政府による補助金が廃止されたほか、国の補助金基準も50%以上削減となり、補助金全体の削減率は70%を超えている。

財政補助という保護を失い市場競争にさらされた今、新興自動車メーカーの品質問題は早急に改善されるべきだろう。
(翻訳・神部明果)

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