水素燃料電池で長時間飛べるドローン、物流や非常時への活用に期待

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産業用ドローンは今や測量や調査、巡回検査を行うツールとして活躍しており、エネルギーインフラや気象環境、物流、農林水産業などの分野で利用されている。ドローンのほとんどは動力にガソリンエンジンやリチウムイオン電池を採用しているが、ガソリン式やバッテリー式は安全性、安定性、航続距離が弱点となっており、コストや環境保護の観点からもなかなか活用が広がっていかない。

安全性や安定性で見ると、ガソリンエンジンは振動が大きく、機体重量も重いため、危険度が高くなる。飛行時の振動はドローンに搭載している精密機器に影響を与えるため、ガソリンエンジンはローエンド製品にしか使用できない。リチウムイオン電池を搭載したドローンは飛行時間を伸ばすため軽量化されており、回転翼のサイズや形状も風の影響を受けやすいため、強風時には上下に揺れて安定しない。さらにリチウムイオン電池は適用温度範囲が比較的狭く、鋭利な物がぶつかると発火や爆発を引き起こす恐れがある。

リチウムイオン電池を搭載したドローンの場合、飛行時間は一般的に30分ほどで、離着陸の時間を除くと実際に飛行できるのはわずか十数分程度になる。このため長距離の巡回点検や物流、長時間にわたる非常用照明や通信など、多くの作業シーンでは使用することができない。

コストの問題ものしかかる。ガソリンエンジンを搭載したドローンは、30~40時間の飛行ごとに分解整備する必要があり、時間と手間がかかるうえ、エンジンは通常200時間足らずで寿命を迎える。リチウムイオン電池は1回の飛行時間が短いため、バッテリーの交換や充電に多くの時間を費やし、寿命は200サイクルほど、遠隔地での作業に使用するには充電ステーションを別途設置しなければならない。

加えて、ガソリンエンジン搭載のドローンには排気や騒音などの問題もある。

こうしたなか、水素エネルギーがドローン市場の新たな可能性を広げると期待されている。水素燃料電池を搭載したドローンは1回で3時間以上飛行でき、充電ステーションなしでも最大200kmをカバーできる。燃料電池は適応温度がマイナス20度から40度までと広く、環境への適合性も高いため、作業シーンの95%に対応できる。しかも発電の際に発生するのは水のみで、二酸化炭素は排出しない。

燃料電池を活用することで産業用ドローンの活用範囲は大きく広がる。夜間の緊急照明や捜索救助活動、長時間の巡回検査、広域測量、無人貨物輸送などに利用できるほか、上空で通信電波を中継する移動式基地局としても運用できる。

この背景のもと、2020年に浙江省で設立された「氫鵬科技」は燃料電池を使った水素ドローン開発に取り組み、すでに第一世代と第二世代の水素ドローンを発表している。第一世代は、構造・機能一体化設計を施した世界初の量産型水素ドローンで、積載量3kg、3時間の飛行が可能。第二世代は、世界初となるパラシュート内蔵の量産型水素ドローンで、積載量は10kgに増加、最大飛行時間は6時間以上で、飛行距離は最大360kmに達する。

氫鵬科技の第一世代水素ドローン
氫鵬科技の第二世代水素ドローン

氫鵬科技の水素ドローンは購入費用がリチウムイオン電池式とそれほど変わらないものの、寿命はリチウムイオン電池よりはるかに長い。電池寿命から算出する30分あたりのコストはリチウムイオン電池が約100元(約2000円)なのに対し、燃料電池はわずか17元(約330円)ほどになる。さらに水素ドローンなら充電ステーション設置にかかる数十万元(数百万~千数百万円)も節約できる。

また、膜電極やバイポーラ板、スタックなど水素ドローンのコア技術も独自開発している。燃料電池のスタックの性能は世界トップレベルに達しているほか、高性能のスタック密封技術や構造一体化設計により、スタックの自動生産と軽量化を実現した。

同社は昨年、完成品の一部納品を済ませている。今後は、水素の製造・貯蔵から水素ドローンの活用までを一本化し、産業チェーン全体をカバーするワンストップソリューションの開発を進めていくという。

(翻訳・畠中裕子)

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