広告業は冬の時代に突入か?(上)

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インターネット業界以外で、大手ECサイトの巨大イベントやベンチャーキャピタルの投資動向に関心を持っている業界と言えば、それは間違いなく広告業だ。なぜならアリババ、京東集団(JD.com)などのインターネット企業はトラフィックを集めるため、多額の広告宣伝費を惜しみなく投下しているからである。

中国の広告最大手「分衆伝媒(フォーカスメディア)」の上位取引先の内訳を見ると、2016年には1位がアリババ、2位がP&Gであった。しかし、2017年にはランキング上位からメーカーの姿が消え、トップ5をインターネット企業が独占した。今ではEC大手による「双11(アリババ系)」や「618セール(京東系)」の販売セールは、広告業界にとっても最重要イベントとなっている。

2016年、2017年分衆伝媒の上位取引先の変化
出典:CTR、CICC

ところが、2019年第1四半期から広告業界全体が失速している。最も目立った打撃を受けているフォーカスメディア、百度(バイドゥ)、微博(Weibo)の3社は、いずれも本質的には広告会社である。フォーカスメディアの第1四半期の売上高は前年同期比で11.78%減少し、純利益は前年同期比で72.4%減少していた。第1四半期の決算発表を受けて3社の株価はいずれも暴落した。

メディア関連のマーケットリサーチ会社CTRのデータによると、全メディア広告の第1四半期の出稿量は11.2%減少している。証券会社「光大証券」のデータによれば、第1四半期の広告収入が20億元(約320億円)以上のインターネット企業のうち、広告事業が前四半期より成長したのはアリババのみで、Weiboやテンセントは大きく減速し、美団(Meituan)や京東集団も比較的穏やかながら減少した。

景気後退の影響で状況悪化

広告収入はGDPの影響が3~4四半期遅れて現われる特性がある。中国の名目GDPは2018年第1四半期から段階的に減速しているため、広告業界がこの影響を受けるのは2018年末~2019年初めとなる。このことは、多くの広告会社の第1四半期決算が物語っている。

注目すべき指標は広告会社の売掛金である。大手投資銀行「中国国際金融有限公司(CICC)」によれば、2018年第1四半期以降、フォーカスメディアはこれまでの2回の経済低迷期と同様に、売掛金回転日数が増長しているという。

中国最大の映画館チェーン「万達電影(Wanda Film)」の場合、2018年広告収入の伸び率が、前年の42%から5%まで落ち込んだ。また、新経済(ニューエコノミー)関連企業の広告費予算も大幅に減少している。

この傾向は、フォーカスメディアの2019年第1四半期決算からも見て取れる。売上高が前年同期比11.78%減、純利益が前年同期比72.4%減と落ち込んでいる。景気後退が遅れて影響するため、短期間での回復は難しいだろう。

比較的安定している売上高広告費比率

景気循環が企業の広告費に与える影響を分析するため、CICCと同じ方法を用いて、次の図で上げた10業界の主な広告主15社について、2009~2018年の広告費の変化をまとめた。

以下のグラフでは主に次の2つの指標を用いている。
■ 売上高広告費比率(広告宣伝費÷売上高×100,ACoS)
■ 企業の広告費伸び率(前年同期比)

出典:Wind、36Kr

上記の統計から、経営戦略に基づいて売上高広告費比率の調整を行っている企業もあるが、多くの企業の売上高広告費比率は比較的安定していることが分かる。例えば中国経済が低迷した2018年には、サプリメント、自動車、酒造メーカー等、消費者ニーズの変化に敏感な企業は、いずれも広告費を削減している。しかし、ECサイト、スーパー、日用品メーカー等の企業の広告費は依然として、売上高と共に増加している。ただし、多くの企業は事業そのものに周期性があるため、売上高と相関している広告費も同様の周期性を示す傾向にある。
(翻訳・桃紅柳緑)

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