中国LONGi、米国に太陽光パネル工場建設へ。脱中国依存と産業強化の間で揺れる米国

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中国の太陽光パネルメーカー「隆基緑能科技(ロンジ、LONGi Green Energy Technology)」が、クリーンエネルギー開発を手がける米Invenergyと共同で、米オハイオ州に年産5GWの太陽光パネル生産工場の建設を予定している。隆基が米国に製造拠点を建設するのはこれが初めてとなる。オハイオ州コロンバスの経済開発団体が3月11日に発表した。

同工場は今年4月に着工する予定で、2023年末に操業を開始する見込み。現在、米国の太陽光パネルの年間生産能力は7GWにも満たず、完成すれば米国最大級の太陽光パネル生産工場になる。

米本土の再生可能エネルギー企業に優遇措置

隆基が米国進出を決めた背景には、米政府が再生可能エネルギー企業に手厚い補助金や支援を提供していることがある。加えて、太陽光発電を巡る輸入規制がいくらか緩和されたことも関係している。

米政府は昨年、中国の太陽パネルメーカーが制裁関税を回避するため、東南アジア経由で米国に迂回輸出しているとして、実態の調査に乗り出した。これにより東南アジアから米国への製品輸出が滞り、国内は供給不足に陥った。これにインフレやエネルギー不足も重なったことから、バイデン政権は太陽光パネルの規制緩和に踏み切り、調査に伴う製品の輸入差し止めを解除したほか、東南アジアから輸入する太陽光パネルの関税を2年の期限付きで免除する大統領令を発令した。

さらに昨年成立した「インフレ抑制法(IRA)」には、エネルギー企業が生産拠点などの産業チェーンを米国内に移すことを後押しするため、米本土の再生可能エネルギー産業に対し約3700億ドル(約50兆円)の補助金や優遇措置を提供することが盛り込まれた。

こうした政策のもと、再生可能エネルギー企業は米国で事業を拡大することが容易になり、多額の補助金や税制優遇措置を受けることができている。企業にとって魅力的なこれらの支援策は、隆基が米国進出を決めた主な要因の一つかもしれない。

米国市場では、今後10年間に太陽光発電容量が570GW以上増加し、2033年には太陽光発電設備容量が700GWに達すると見込まれている。輸入規制が一部緩和された今の時期に参入しておけば、この先米国市場で優位に立ち、さらなる事業拡大も期待できるだろう。

中国企業の進出に米国は胸中複雑

とはいえ米国が再生可能エネルギー産業の発展を後押しするようになったのも、元を正せば国内産業を強化して中国依存から脱却することが目的だった。このため中国企業が進出することに対し、米国側は非常に複雑な立場に立たされている。

現時点で米国の太陽光パネル生産能力はきわめて低く、足元のニーズを考えれば中国企業の進出を全否定するわけにもいかない。今回、隆基が米企業Invenergyと共同で工場建設を進めていることからして、短期的には中国企業が単独で米国の太陽光発電市場に参入するのは引き続き困難が予想される。より現実的なのは米国企業と提携するという選択肢だろう。

米国市場には、すでに中国の大手太陽電池メーカー数社が参入している。代表的な企業は天合光能(トリナ・ソーラー)、晶科能源(ジンコソーラー)、隆基で、この数社が供給する太陽光パネルだけで米国全体の供給量のほぼ3分の1を占めているという。

(翻訳・畠中裕子)

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