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中国で電動自転車のバッテリーシェアリングサービスが急速に拡大している。
アリババやテンセントなどの大手インターネット企業が続々と参入しているほか、スタートアップ企業も次々に誕生し、多くの資金が流入している。
新規格により生まれた商機
今年4月15日から新たな標準規格となる「電動自転車安全技術規範」が施行された。新規格の電動自転車は、ペダル走行機能を備えており、最高時速25キロ、総重量はバッテリーを含めて55キロ以下と規定されている。
電動自転車の大口顧客であるフードデリバリーの配達員は、時間内に配達するため時速40~60キロで走行するのが普通だ。新規格で速度が制限されるならば、他の部分で時間を節約するほかない。短時間でフル充電のバッテリーに交換するというサービスは、彼らにとって有力な選択肢となる。
また総重量が55キロ以下に規定されたことで、30キロほどある従来型バッテリーから軽量のリチウムバッテリーへの移行が一気に進むとみられる。軽くて持ち運びのしやすいリチウムバッテリー普及の流れも、バッテリーシェアリングの環境作りに一役買っている。
バッテリーシェアリング成否の鍵は
中国自転車協会のデータによると、中国の電動二輪車の台数は2億5000万台を超えており、2050年には4億台を突破すると予想されている。電動自転車向けバッテリーシェアリングはまさに巨大市場だ。
「易騎換電(YIQI Exchange)」に出資している「蔚来資本(NIO Capital)」のマネージングパートナー余寧氏はこう語る。「バッテリーシェアリングの成否を決めるのは、結局のところ効率だ。資産効率や運営効率に加え、操作性を高めて短時間でバッテリーを交換できるようにすることも含まれる」
バッテリーシェアリングのビジネスには、バッテリーと交換ステーションのための初期投資、その後の運営維持費という3種類のコストが関係している。
従来型のバッテリーは1台分が400~700元(約6300~1万1000円)で買えるのに対し、リチウムバッテリーの価格は1500~2500元(約2万3500円~4万円)だ。バッテリーを自社開発すれば初期投資は大きく膨らむが、長期的にはコスト削減につながる。易騎換電は電池メーカーと提携して浙江省にリチウム電池生産基地を建設することを発表した。そのほかのバッテリーシェアリング業者はリースや購入、OEM生産などで必要なバッテリーを確保する。
バッテリー交換ステーションの建設にも多額の資金投入が必要だ。複数の事業者が明かしたところでは、無人のスマートバッテリー交換ステーション1カ所にかかる製造コストは2万~4万元(約31万~62万円)で、正常に運営されるならば6~12カ月で費用を回収できるとのことだ。
多くの事業者が自販機型の無人ステーションの設置に力をいれるなか、「張飛出行(Zhangfei Chuxing)」は店舗型のバッテリー交換ステーションをメインに展開している。同社の創業者でCEOの劉佰全氏はこう語る。「無人ステーションは魅力的に映るが、必ずしも現実的ではない。コストがかかりすぎるうえ、極端な温度の下ではリチウム電池の寿命が縮まるため、設置場所も限られてくるからだ」
劉氏によれば、店舗型を採用することで設備の開発費用を抑えられるだけでなく、修理や販売などより多くのサービスを提供できるという。さらに加盟店方式を取り入れることによって、物件費や人件費を一層削減することができている。
現在、各社は全国各地でバッテリー交換ステーションの設置を進めている。張飛出行は17都市に店舗型150カ所、無人ステーション70カ所を設置し、今年中に1000カ所を目指す。易騎換電は26都市に無人ステーション1000カ所を設置しており、今後は一、二級都市を中心に高密度で設置するという。「e換電(E-Huandian)」は現在24都市の2600カ所以上で展開している。
バッテリーシェアリングは設備開発や設置が必要で、大規模化に時間がかかるため、寡占市場になるとは考えにくいと業界関係者は見る。そのため後発企業にもシェア獲得のチャンスは十分にあるだろう。
とはいえ、このビジネスは口で言うほど簡単なものではない。e換電CEOの黄嘉曦氏の言葉にそれがよく表れている。「何年もこの仕事に携わってきたが、無人ステーションの設置はやはり難しい。コスト面だけでなく、問題なく運営するためには各行政機関と折衝する必要もあるからだ」
(翻訳・畠中裕子)
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