Z世代が牽引、東南アジアのゲーム業界から世界的大ヒットが生まれる可能性

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現在、東南アジアではゲーム市場が急拡大している。インドネシア、ベトナム、フィリピンをはじめ各国ごとに独自発展を見せており、非常に面白い状況となっている。日本からはソニー、任天堂などが活躍を見せるが、現地企業からも独自にゲームを開発する動きが見られ、近い将来に世界的な大ヒットIPを生み出す可能性も出てきているようだ。

東南アジアのゲーム・エンタメ市場の解説を目的に、4月26日にテンセントクラウド、ゲーム専門メディアIGN JAPAN、36Kr Japanが主催で、「急成長する東南アジアのゲーム・エンタメ業界大解剖」と題したセミナーを開催した。

テンセントクラウドからシニアソリューションアーキテクトの楊斌氏、IGN JAPANから編集長のダニエル・ロブソン氏と副編集長の今井晉氏、新興国を中心にゲーム・コンテンツの総合コンサルティングを手掛ける「ルーディムス(LUDiMUS)」からCEO佐藤翔氏とCOO古里卓巳氏が登壇し、ゲームやeスポーツを中心とする東南アジアのエンタメ市場の現状と可能性などについて解説があった。

東南アジア進出には、各国SNS事情や政府動向など情報のアップデートが必須

ルーディムスの佐藤氏によれば、東南アジアのゲーム市場は2022年に50億ドルに達しており、35歳以下の若い世代を中心とした2.7億人のゲームユーザーが存在している。やはり主流はモバイルゲームで、eスポーツと結びつきやすい「Garena Free Fire」や、暇つぶしのためのカジュアルなゲームに人気が集まっている。またかつての勢いはなくなったが、ベトナム初のNFTゲーム「Axie Infinity」は大きなヒットとなり、最近では中国や韓国のオンラインゲーム会社が様々なWeb3のゲームを展開、多様な市場が形成されているようだ。

ゲーム産業が盛り上がるには、「通信」、「決済」、「販促(マーケティング)」の3要素が欠かせないと言われており、通信環境を見るとシンガポールを除いた国々はまだ発展途上ではあるが、スマホとSNSの出現により販促や決済面のインフラは整いつつある状況と言える。特にSNSの利用習慣を見ると、東南アジアのユーザーは月に平均7-8個のSNSを使い分けており、日本の平均3.5個と比べると倍以上となる。また、各国ごとに利用されるSNSも異なる。ベトナムのZaloのように現地企業によって開発されたアプリの登場もあり、日本企業が東南アジアでマーケティング活動をする場合には国ごとに丁寧にフォローする必要があるということだ。

考慮すべき東南アジアの市場リスクとして、政府の市場介入を挙げた。22年7月にはインドネシア政府がSteamやEpic Gamesをはじめとしたゲームプラットフォームにアクセス停止措置を取る事態も発生(現在は解除)、業界を驚かせた。社会との観点では、テンセント系列のスタジオが、環境問題を考えるゲーム制作イベントをマレーシアの教育機関と共同で開催する動きも注目を集め、リスクと事業機会の両面で、今後も各国政府の動向に注視が必要となりそうだ。

東南アジア全体を見ると、もちろん米国や日本と比べてお金を持っているユーザーは多くない。国ごとの事情も異なるため効率が良い市場とはまだ言えないが、大量のユーザーを獲得し味方につけることが出来るという観点では非常に魅力的な市場と言えそうだ。

近い将来、東南アジア発の大ヒットIPが生み出される可能性も

IGN JAPANのダニエル氏と今井氏からは、日本のゲームに対する現地ユーザーの反応や、インディーゲームの可能性について詳しく語られた。特に東南アジアのインディーゲームは質量ともに急成長しており発展は間違いないと言われている。

インディーゲームというのは、大手パブリッシャーに属さない独立系開発者による作品を指し、昨今、「開発環境」「販売プラットフォーム」「開発者コミュニティ」が整備されたことで、東南アジアでもこれまで受託開発をしていたスタジオや小規模クリエイターらが独自に作品を開発、多くのインディーゲームが生み出され、世界的なIPが東南アジアから生まれる可能性もあるとのことだ。

インディーゲームの注目地域にまず挙げたのはマレーシアで、もともと大手パブリッシャーのグラフィック外注スタジオが多いため、ビジュアルの完成度が高いインディーゲームが多く、ゴジラとのコラボ実績もある怪獣バトルゲーム「GigaBash」や、ロック vs EDMという不思議な世界観のアクションゲーム「No Straight Road」などは評価が高い。

そして、インディーゲーム大国として興味深い発展を見せているのはインドネシアで、世界的に成功したゲームも出始めている。新海誠+ジブリのようなテイストで日本アニメの影響が感じられるインドネシアの田舎町を舞台にした「A Space for the Unbound」や、ファンタジー世界でカフェのバリスタになって会話を楽しんだり悩みを聞いたりするだけの癒しのゲーム「コーヒートーク2」などは世界のZ世代の間でも非常に人気だという。

ローカルな演出や要素を打ち出したゲームが世界中に広がり楽しまれる背景には、ネットフリックスなどグローバル規模のコンテンツ配信事業者の出現を挙げた。韓国ドラマの流行など世界中でローカルなコンテンツを面白がれる素地が出来たのが大きいという。東南アジアのクリエイター自身に自国のアイデンティティを作品に昇華させようとする意欲や意識が芽生えており、独自性の高い特徴的な作品が生み出される土壌が出来てきたと言える。

今後は東南アジア発の新規IPの獲得といった観点も、日本企業にとって事業のチャンスとなりそうだ。

グローバルテック企業が高い技術力を背景に、高品質・低コストの開発環境を提供

最後に、テンセントの楊氏からは、20年以上ゲーム業界と向き合って開発してきたテンセントクラウドの、特にグローバルにサービス展開する際に役立つソリューションを紹介された。

ゲームに特化したGME(Gaming Multimedia Engine)は特に興味深い、高品質・低コストの音声ソリューションとなっている。例えば、ストリーミング音声認識やリアルタイムテキスト変換といった機能は、ライブ配信や特にゲーム実況動画などが人気コンテンツとなっている東南アジアにおいて非常に役立つ機能となりそうだ。

ボイスチェンジ機能で音声変換も自由自在、125ヵ国語に対応し、赤ちゃんからお年寄り、宇宙人のような声にも即時に処理ができ、ユーザーに楽しい体験を提供できる。独自の3D音響効果技術によって、反響をリアルに再現できたり、宇宙空間や水の中にいる感覚を特殊効果で創り出したりすることで、様々なジャンルの世界観をリアルに表現、より臨場感あるデジタル空間の制作と没入感の高い体験をユーザーに届けられるという。

また、テンセントがWeChatの運営で蓄積してきたノウハウを最大限に生かしたコミュニティ運営の機能も企業向けに提供、東南アジアの大手企業も利用を始めているという。ファンやユーザーを繋ぐインタラクティブなSNSツールを簡単に作成することができ、ライブストリーミングや人数制限なしのグループチャット、億単位でのメッセージ同時送信なども可能なため、ファンを多く抱えるエンタメ・ゲーム企業にとって魅力的なソリューションとなっている。

これ以外にも、ゲーム開発者向けのワンストッププラットフォーム形式で、テストの自動化やセキュリティ対策など、開発者がまさに利用したいツールをアップデート、グローバル基準のサービスを世界中で提供している。

このように、変化の激しい東南アジアのゲーム・エンタメ市場を見てみると、国ごとに置かれた状況や環境は大きく違うものの、その違いを丁寧に観察することで日本企業も市場参入のヒントを得ることが出来そうだ。3億人近い若い世代が楽しんでいる東南アジア市場は今後の成長も約束されている。海外進出に困難はつきものだが、現地の事情に詳しいパートナーとともに発展のチャンスを掴みたい。

(36Kr Japan編集部)

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