中国自動運転ユニコーン「Momenta」、トヨタやボッシュから巨額資金調達できた理由

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中国自動運転ユニコーン「Momenta」、トヨタやボッシュから巨額資金調達できた理由

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LiDARを開発する中国メーカー「禾賽科技(Hesai Technology)」が今年2月に米ナスダックに上場して以来、自動運転関連の複数の企業で上場を目指す動きがみられる。

トヨタ自動車が出資する中国の自動運転スタートアップ「Momenta(モメンタ)」が、早ければ今年中に香港または米国で新規株式公開(IPO)を検討しており、調達額は最高10億ドル(約1340億円)に上る可能性もあることを、海外メディアが報じた。モメンタの曹旭東CEOによると、同社の自動運転事業は無人運転も可能なレベル4と量産用レベル2(部分的な自動運転化)を並行して手がける2本柱の戦略を取っている。現在すでに、米ゼネラルモーターズ(GM)や独メルセデス・ベンツ、トヨタ、上海汽車(SAIC)などの自動車メーカーと量産において協力しているという。

名門校出身者が起業、実力も十分

モメンタを創業した曹CEOは中国の名門・清華大学出身で、かつてマイクロソフトリサーチアジア(MSRA)やAI大手センスタイム(商湯科技)などに勤めた経験がある。自動運転分野の成長を見込んで、2016年に自らモメンタを立ち上げた。

モメンタは2018年、蘇州市と戦略的提携を締結。同市にビッグデータ、ビッグコンピューティング、大規模テストの3つの基盤プラットフォームを構築し、大規模な車両チームを配備した。19年には蘇州市に子会社を設立する。その責任者を務める孫剛氏は中国科学院でコンピュータビジョンの博士号を取得、高性能並列計算システムの専門家でもあり、ImageNet(物体認識研究用の大規模な画像データベース)が主催した画像認識コンテストで17年に優勝した。

自動運転分野そのものの人気が高いことに加えて、モメンタは経営陣が名門大学出身であることや技術開発の経験などもあり、投資家からひときわ注目を集めている。

2017年にはシリーズB1で蔚来資本(NIO Capital)など複数の投資機構から資金を調達した。翌18年にはテンセント(騰訊)や招商局創投(China Merchants Venture)などから戦略投資を受けて、累計調達額が2億ドル(約270億円)を超え、ついに評価額10億ドル(約1350億円)以上のユニコーン企業となった。21年にもシリーズCで上海汽車(SAIC)、トヨタ自動車、独ボッシュなど自動車産業チェーンの企業から5億ドル(約680億円)を調達している。

L2とL4の同時開発が強みに

モメンタは自動運転レベル2とレベル4の双方でシステム開発を進めている。主力は量産車向けの自動運転対応ソフトウエア「Mpilot」と完全自動運転ソリューション「MSD(Momenta Self-Driving)」だ。

Mpilotはエンドツーエンドの自動運転ソリューションを提供するもので、高速道路や駐車、市街地の運転などに対応している。MSDはレベル4以上の自動運転向けソリューションで、「バーチャルドライバー」としてタクシーや自家用車などでの利用が想定されている。

自動運転産業チェーンの川上には、センサー、チップ、高精度地図、車載ソフトウェアなどの二次サプライヤーのほか、自動運転やスマートコックピットのソリューションなどの一次サプライヤーが含まれている。モメンタのMpilotは自家用車の標準装備に特化した量産可能な高度自動運転ソリューションだ。

国内外ですでに多くの自動車メーカーや一次サプライヤーがモメンタとMpilotに関わる提携を結んでいるという。上海汽車傘下のEVメーカー「智己汽車(IM Motors)」とはIM ADスマート運転システムを共同開発し、「より人間らしい」運転支援を実現した。モメンタの技術を搭載した高級セダン「智己L7」は22年6月に発売されている。

2020年にはMSD技術を搭載したロボタクシー「Momenta GO」を発表。21年12月には上海汽車の自動運転タクシー「享道Robotaxi」にレベル4の自動運転ソリューションを提供したと発表している。

自動運転は1000億元(約1兆9500億円)規模の巨大市場であり、今後もハイペースでの成長が見込まれている。 中国の調査会社・灼識咨詢(CIC)によると、中国の自動運転市場は2019年の23億元(約450億円)から、25年には4000億元(約7兆8000億円)近くにまで成長する見込みで、年平均成長率は136%だという。

しかし、実際に道路を走行する際の操作性や責任の帰属問題などで、レベル3からレベル5の自動運転技術はいまだ量産化できていない。今後、量産できたとしても短期間で大規模に実用化するのは困難だろう。

このような背景のもと、レベル4からレベル2へと回帰する企業がますます増えている。レベル2の自動運転システムを自動車に搭載すれば、収益が上がるだけでなく、アルゴリズムのトレーニングや技術改良に役立つ大量の実走行データを手に入れることができ、最終的には自動運転レベル4の実用化につながる。この観点から考えると、レベル2とレベル4のシステムを同時に開発するモメンタの戦略には強みがあるといえる。しかし現時点でモメンタの量産品はまだ少なく、研究開発への莫大な初期投資を考えると、短期的に利益を上げるのは難しいだろう。

WeChat公式アカウント「格隆匯新股(ID:ipopress)」

(翻訳・山口幸子)

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