4Dイメージングレーダー、自動運転センサーの主役となるか。長城汽車傘下ベンチャー、次世代対応の分散型も

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「ピュアビジョン(カメラと機械学習)」方式を採用している米テスラが今年中に、いったん車両から取り除いたレーダーを再び搭載する計画だという。こうしたなか中国でも、ミリ波レーダーの進化版である4Dイメージングレーダーや高精細カメラの導入に力を入れる自動車メーカーが増加している。

中国の自動車大手・長城汽車(Great Wall Motor)が支援するセンサーメーカー「睿博感知」もこのところ存在感を増してきた。4Dイメージングレーダーや高精細カメラを含むスマートセンサーの開発に注力している。正式な設立は2023年1月だが、長城汽車が21年7月からセンサー事業のインキュベーションを手がけてきた。

長城グループの支援のもと、睿博感知は4Dイメージングレーダーと大口径800万画素カメラの自社開発に成功。さらに1700万画素の超高画素光センサーチップを搭載した車載カメラの開発にも着手している。これらの製品が評価され、長城汽車の複数車種のプロジェクトにも参加してきた。

カメラのみに頼るピュアビジョン方式や、LiDAR、従来のミリ波レーダーなどに比べて、4Dイメージングレーダーは高度測定が正確で、点群画像の解像度が高いなどの長所を持つ。高精細カメラと組み合わせれば、自動運転レベル2~3に対応した正確かつ安全なセンシング機能を提供できる。

現在、BMWやゼネラル・モーターズ、長城汽車、理想汽車(Li Auto)、上海汽車(SAIC)、吉利汽車(Geely Automobile)など国内外の自動車メーカーは、いずれも4Dイメージングレーダーの導入に向けた取り組みを始めている。しかし睿博感知のレーダー製品ライン責任者・趙孔瑞氏は、4Dイメージングレーダーの量産にこぎ着けるには、製品化の点で多くの問題を解決する必要があると指摘する。例えば、導入を促すためにどうコストを抑えるか、レーダーのサイズやインターフェースをどのように現在の量産モデルに適応させるか、といったことだ。

睿博感知ではさまざまな自動運転レベルに対応できるよう、コーナーレーダー、前方レーダー、分散型レーダーという3種類の4Dイメージングレーダーを開発した。予備調査で、完成車メーカーが100ドル(約1万3600円)以下のレーダーを期待していることが分かったため、デュアルチップカスケード接続を採用し、ミリ波レーダーのソフトウエアの設計もやり直した。「ハードウエアのスペックの低さをソフトウエアアルゴリズムで補うことで、低コストの製品に仕上がった」という。

公式情報によると、同社のコーナーレーダーは1フレーム当たり1500点の点群を取得でき、検出距離は210メートル。検出距離は顧客の車両計画に応じて調整可能で、ソフトウエア構成を調整するだけでよく、ハードウエアを再設計する必要はない。前方レーダーは300メートル先の車両が走行する車線を正確に検出でき、1フレーム当たり1万点近くの点群データを生成する。

現在のピュアビジョン方式や従来のミリ波レーダーでは、前方車両が不規則な形状をしている場合に正しく認識できないケースが多い。「4Dイメージングレーダーは目標物を点ではなく正確な輪郭で表示し、車両全体の形状を高解像度で示せるため、誤認識を大幅に減らせる」と執行責任者の王乃博氏は語る。

それだけでなく、睿博感知は次世代のクロスドメイン集中型・セントラルコンピューターのE/Eアーキテクチャーを想定した、分散型4Dイメージングレーダーを発表した。

趙氏によると、これまでのミリ波レーダーはそれぞれが独立してデータ処理やドメイン制御プラットフォームへの伝達を行っていたのに対し、分散型4Dイメージングレーダーは、全てのレーダーから生データがドメイン制御プラットフォームに送られ、そこで協調処理する仕組みになっている。「ドメインコントローラーの演算能力を駆使して性能の大幅な向上が期待できるほか、生データを自動車メーカーと共有してさらなる進化を促すことができる」という。

現時点で、3種類の4DイメージングレーダーはいずれもCサンプル(設計が固まり、量産に向けた準備の段階)に進んでいる。コーナーレーダーと前方レーダーは、現行モデルの従来製品と直接置き換えることができ、今年9月に量産の見込み。分散型レーダーは、車両との連携や検証を進めているところで、24年半ばの量産を予定している。

(翻訳・畠中裕子)

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