長寿命で安全性高い「レドックスフロー電池」 中国蓄電メーカー、実用化に向けて挑戦

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蓄電システムソリューションを提供する中国の「国潤儲能(Green Energy)」がシリーズAで2億元(約40億円)近くを調達した。出資には山証投資(Shangxi Securities Investment)などが参加。調達資金は、主要製品のバナジウム・レドックスフロー電池とフッ素系イオン交換膜の開発や市場開拓などに充てられる。

2020年6月に設立された国潤儲能は、バナジウム・レドックスフロー電池設備の製造、レドックスフロー電池、水素、燃料電池用隔膜の生産を手がけている。昨年8月にもエンジェルラウンドで5000万元(約10億円)以上を調達した。

同社はすでにバナジウム・レドックスフロー電池スタックの自動生産ラインを建設し、事業者向けシステム、無停電電源装置(UPS)、家庭用システム、蓄電所などを含むバナジウム・レドックスフロー電池蓄電システムプロジェクトを数多く手がけている。例えば山西省朔州市の太陽光蓄電・充電プロジェクトは、駐車場を利用した太陽光発電、新エネルギー充電設備、バナジウム・レドックスフロー電池蓄電システムを組み合わせたもので、1年以上にわたり運営されている。

レドックスフロー電池は、ここ2年ほどで成長してきた蓄電分野の技術の一つだ。最新のデータによると、2022年末時点で、新エネルギー蓄電システムのうちリチウムイオン電池が全体の約95%という圧倒的な地位を占め、それ以外は圧縮空気が2.0%、レドックスフロー電池は1.6%、鉛蓄電池は1.7%となっている。

データを見ると、現時点でレドックスフロー電池蓄電システムの割合は高くない。しかし、主流のリチウムイオン電池に比べて安全性が高く、サイクル寿命が長いなどの特長がある。

レドックスフロー電池分野で最も技術的に成熟しているバナジウム・レドックスフロー電池は、電解液にバナジウムイオンを含む希硫酸水溶液を使用しており、爆発や発火が起きにくくリサイクルも可能だ。充放電サイクル数は1万5000回以上で、寿命は15~20年に上る。また、電解液タンクを大きくすれば蓄電容量を柔軟に増やすことができる。

容量が大きくサイクル寿命が長いレドックスフロー電池は、大規模かつ長時間の蓄電ニーズを満たすことができる。今後は政策支援と技術改良によって再生可能エネルギーの普及率が上がっていく見通しで、業界では4時間以上の長時間蓄電が可能な蓄電システムの構築が大きな流れになると考えられている。

国潤儲能の創業者・孟青氏は、蓄電システム産業が二酸化炭素(CO2)排出量のピークアウトとカーボンニュートラルの目標達成において大きな役割を果たし、送電網と新エネルギーの接続を技術的に後押しするとの見解を示した。

ライフサイクルを見ると、リチウムイオン電池を蓄電システムで運用する場合、実際の電池寿命は8年に満たないこともあるが、バナジウム・レドックスフロー電池の寿命は20年を超える可能性がある。業界関係者によると、バナジウム・レドックスフロー電池のライフサイクルコストは蓄電システム用リチウムイオン電池と同等、もしくはそれを下回る見込みだ。

同社によると、コストを最大限に下げるにはバナジウム・レドックスフロー電池の量産が必要で、これは数年前に車載電池が直面した状況に似ているという。

フッ素系イオン交換膜=同社提供

同社の強みはフッ素系イオン交換膜を手がけていることだ。電気化学装置の重要な構成部品となるイオン交換膜は、電池スタックの性能と生産コストに大きな影響を及ぼす。フッ素系イオン交換膜は蓄電システム用レドックスフロー電池だけでなく、水電解による水素生産や燃料電池などにも活用できる。

ここ2年の蓄電システム市場拡大とニーズの細分化に伴って、バナジウム・レドックスフロー電池などの新しいタイプの蓄電システムも実用が進んだ。国潤儲能は昨年、中核匯能(CNNP Rich Energy)による1ギガワット時バナジウム・レドックスフロー電池蓄電システム入札で落札業者の一つとなったほか、今年は国家電力投資(State Power Investment)が進める山西省の応県蓄電所、朔州ゼロカーボン空港などの蓄電システムプロジェクトを受注し、受注額はすでに2億元(約40億円)を超えた。

(翻訳・大谷晶洋)

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