中国初、農業に特化した対話型AI登場 生産や流通の悩みをすべて解決

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世界的ブームが巻き起こって半年、大規模言語モデルはさまざまな業界に徐々に根付き、芽吹き始めている。

農産品流通を手がける中国企業「北京一畝田新農網絡科技(Beijing Yimutian Xinnong Network Technology)」(以下、一畝田)は6月末、大規模言語モデル技術をベースとした対話型AI「小田」をリリースした。農業分野に関する知識や情報を対話形式で提供するものだ。

一畝田は農業に特化したインターネットプラットフォーム企業で、情報化・デジタル化技術を用いた農産品流通の効率化を目指している。設立以来、アプリやオフラインのサービスネットワークを通じて、これまで5000万人以上の農業従事者にサービスを提供し、中国の2800以上の県の1万5000種類の農産品をカバーして、取引額は年間3000億元(約5兆8300億円)超えを達成した。

どんな作物が利益を出せるか、病虫害に見舞われたらどう対処するか、農産品の相場はどうなっているか、どの販路なら高く売れるかなど、農業従事者の悩みは生産から販売まで尽きることがない。言い換えれば、タイムリーかつ正確な情報が最も価値を持つと言える。一畝田の胡嵩CTOは「ニッチな情報があちこちに散らばっている中、これを検索で見つけ出すのは簡単ではない。アプリのカテゴリー区分もやや複雑で、ユーザーにとって親切な作りではない。情報からの隔絶は、農業従事者が豊かになり、農業が発展するにあたって最大の障壁となっている」と述べる。

胡CTOは、大規模言語モデル技術でこれを解決できるかも知れないと考えた。「汎用型大規模言語モデル技術のキーポイントは産業への応用であり、AIは産業の発展と結びついてこそ魂が宿る」とも述べる。

同氏はかつて大手IT企業バイドゥ(百度)の検索事業部門で開発を担当してきた。一畝田に移ってからはアルゴリズムの「エリート部隊」を立ち上げ、レコメンデーションやナレッジグラフなどを手がけるとともに、深層学習や大規模言語モデルの最新の動向を追い続けてきた。このほど発表したAIチャットボット小田の開発にはおよそ半年かけたという。

AIのハルシネーション(もっともらしいが実は不正確な回答)対応については、長い時間をかけて検討を重ね、「知識拡張型言語モデル」を採用することで落ち着いた。すなわち大量の農業関連データを集積し、セマンティック検索(ユーザーの意図を汲み取った検索)を用いて妥当性の高いコンテキスト(前後の文脈)の候補を出し、最終的に大規模言語モデルがアウトプットできるようにした。

「わたしが知る限り、小田は相場や農業技術、生産前・生産中・生産後の問題までを完全網羅する業界初の大規模言語モデルプロダクトだ」と胡CTOは述べている。

小田は一畝田のプラットフォームがカバーする国内2800以上の県の農産品流通データと、農業に関するさまざまなニッチ分野の専門知識を統合し、新品種、新技術、農業技術、需給相場、生産者と販売者の自動マッチングなど多くのモジュールを集約。生産、流通、仕入れなど産業全体に関連するシナリオに対応して、農業従事者の悩み解決を支援する。

農業技術に関しては、より精密な農業専門の大規模言語モデルや数千万規模のQ&Aコーパス、セマンティック検索強化で小田をバックアップし、農業技術のエキスパートへと「変身」させている。ユーザーは時や場所を問わず、スマートフォンで小田に質問すれば専門的な解決策を得られる。

価格相場に関しては、一畝田のデータシステムをベースとし、地域・品種別に農産品の正確な相場を照会できる。

新品種、新技術に関しては、中国熱帯農業科学院、広東農業科学院蚕業・農産品加工研究所、河北農業大学などの大学や研究機関と提携しており、350種類以上もの新品種、新技術からユーザーの生産地を考慮して栽培に適した新品種をレコメンドする。

農業従事者が最も関心を寄せる流通の問題に関しては、小田は需給傾向に基づいて論理的な生産・販売のアドバイスをするとともに、ユーザーの住む地域、作付け品種、ニーズなどから精密なペルソナを設定してよりスマートな需給のマッチングを行う。

胡CTOによると、小田は操作も簡単で、スマートフォンさえ使えれば誰でも利用できるという。現段階では利用料もかからない。将来的にはテキストだけではなく画像を使った質問や音声や動画を使った回答などにも対応し、よりスピーディーかつ便利に農業情報を取得できるようにしていくという。

(翻訳・山下にか)

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