「コーヒーのデリバリー」では終わらない、Luckin Coffeeの新戦略

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中国で話題を集めているコーヒーチェーン「luckin coffee(瑞幸咖啡)」が、上場後初となる決算報告をリリースした。同社は今年5月、米ナスダック市場に上場している。

luckin coffeeが今月14日に発表した2019年第2四半期の決算報告では、売上高が前年同期比648.2%増の9億910万元(約140億円)だった。前四半期と比較しても90%増という数字を叩き出している。その後押しをしているのは新規店と新商品で、商品売り上げによる純利益は前年同期比689.4%増の8億7000万元(約130億円)となっている。新商品には、同社がコーヒーに次ぐ商品シリーズとしてリリースした「小鹿茶(luckin tea)」が含まれる。軽食類の売り上げも増加が顕著で、今四半期の売上高は商品全体の24%を占める2億1000万元(約32億円)に達した。一方で、営業損失も引き続き拡大しており、前年同期の約2倍に当たる6億8130万元(約100億円)に上った。

今回の決算書から読み取れるのは、luckin coffeeが従来の商品構成を見直し、茶飲料や軽食などコーヒー以外の商品を強化している点だ。同社CFO兼CSO(最高財務・戦略責任者)のレイナウト・シャケル氏は、コーヒーとその他の商品の売上比率を年末までに5対5にしていく方針を示している。

luckin coffee各商品ジャンルの売り上げ比率と成長率(上場目論見書および決算書を元に36Krが作表)

創業者兼CEOの銭治亜(ジェニー・チエン)氏は今四半期の顧客数の伸びについて、「予想を上回った」と述べた。取引顧客数は2280万人で、新規顧客数が590万人、MAU(月間アクティブユーザー)が前年同期比410.6%増の620万人に達した。銭CEOは市場拡大と新商品の発売がこれらをけん引したと分析する。また、顧客1人当たりが購入する商品数と品目数も増加しており、売り上げ1件に対する利益が伸びている。

売上高の急伸、商品構成の改善、予測値を超える顧客増と好ましいニュースが並んだが、上場前から続く営業損失の問題は依然として解決に至っていない。

利益度外視で続ける事業拡大

luckin coffeeが最優先するミッションは依然として市場シェアの拡大だ。市場調査会社ユーロモニターによると、2018年にスターバックスが中国のコーヒー市場で50%を超えるシェアを握ったのに対し、luckin coffeeはわずか2.1%に留まった。今年に入ってようやく4%にまで伸ばしている。同社にとって、現段階では集客が最優先であり、利益のために成長に歯止めをかける状況ではない。つまり、同社は破竹の勢いで店舗数を増やし、顧客にクーポンをばらまいていくスタイルを続け、長期にわたる「戦略的損失」を継続していくということだ。

今年6月末時点でluckin coffeeの店舗数は2963店だが、銭CEOによると、今年の新規出店目標は2500店で、年末までに総店舗数を4500店以上にするという。目標を達成するには、今年下半期に新たに1600店以上出店する必要があり、上半期の3倍のペースで進めていかなければならない。さらに、2021年末までには1万店を目指しているという。

luckin coffeeマーケティング費、新規顧客数と顧客獲得費用の変遷(上場目論見書および決算書を元に36Krが作表)

急速な店舗数拡大によって、純売上高に占める運営費用の割合は薄まっている。前年同期の382.7%に対し、今四半期は175.9%にまで抑えた。テイクアウト専門店を強化することにより、顧客獲得コストや商品コストの圧縮に成功したからだ。コーヒー1杯当たりの原価は28元(約420円)から11.1元(約170円)にまで下がり、顧客獲得単価は55元(約830円)から48元(約730円)にまで下がった。

スタバとの戦い ポイントはテイクアウト専門店とティー飲料

運営費用削減のため、同社が重視する業態はデリバリーからピックアップへと移っている。

今四半期、デリバリー専門店の新規出店はわずか1店舗で、昨年1年間に、すでに147店を閉店させている。これと入れ替わるように数を増やしているのがテイクアウト専門店で、今四半期は新規出店数の97%にあたる578店舗を増やした。

「デリバリー事業は同社の核心ではない」と、銭CEOもこれまでに繰り返し述べている。その理由は、1件あたり9~10元(約135~150円)に上る配送コストだ。サプライチェーンの改善や技術面の向上を通じて、今後もこのコストを削っていく考えだという。

創業期にデリバリー事業を一時的に優先させたのは、出店不能な地域にも商品を行き届かせるためだ。しかし、今後はそのような地域には、より低コストで済む自動販売機を投入していく予定だという。小さなオフィスビルやガソリンスタンドなどに設置すれば大きな効果が見込めると踏んでいる。

luckin coffee各業態の割合(上場目論見書および決算書を元に36Krが作表)

luckin coffeeがテイクアウト専門店を強化すると同時に、ライバルのスターバックスも同様の業態に注力しはじめている。オンラインで受注し、店舗で商品を受け取るだけの「啡快(Starbucks Now)」を北京と上海の2都市で試験的に営業しはじめたのだ。オフライン運営に強く資金も潤沢なスターバックスは、luckin coffeにとって強敵だ。

さらに、両者は茶飲料の分野でも激しい競争を繰り広げることになりそうだ。luckin coffeeが新たに発表した茶飲料シリーズ「小鹿茶」に対抗するように、スターバックス中国は今夏、ティードリンク類8品目を新発売し、レギュラーメニューに追加した。

茶飲料は粗利率が高い。銭CEOは、小鹿茶ブランドが顧客の定着率と各店の収益を高めるとみている。さらに、コーヒーとお茶ではピークタイムが異なる。コーヒーは午前中、お茶は午後と夜間に売れ行きが伸びるため、売り上げを補完しあえるのだ。また、事業を地方都市へ広げていくにあたり、茶飲料は重要な武器となる。地方市場では茶飲料が売上構成で高い比率を占めてくるからだ。

「利益度外視の規模拡大」という同社の戦略は依然として揺らがないと見られる。何よりも、市場シェアを伸ばさないことには成長はあり得ず、ましてスターバックスを超える日も来ないだろう。
(翻訳・愛玉)

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