中国CATL、電動航空機製造へ 次世代バッテリー開発で陸・海・空制覇目指す

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中国車載電池大手「寧徳時代新能源科技(CATL)」が電動航空機の製造に乗り出した。同社は2022年に「寧徳時代電船科技(CAEV)」を設立して電動船舶分野にも参入している。

企業データベース愛企査の情報によると、今年7月19日に「商飛時代(上海)航空」が設立された。資本金は6億元(約120億円)、CATLおよび民間航空機メーカーの中国商用飛機(COMAC)と上海交大企業発展集団の共同持株会社で、事業内容は民間航空機部品の設計および製造、ジェット機・プロペラ機の製造、航空機運用サポートサービス、バッテリーの販売などだ。

今回CATLが航空機分野に参入したことで、陸・海・空すべての分野で事業を展開することになった。空であれ海であれコアとなるのはバッテリー駆動システムであり、同社はバッテリー技術について非常に自信を持っている。今年4月に開催された上海モーターショーでは、新たに開発した超高密度エネルギーバッテリー「凝縮系電池(Condensed Battery)」を発表した。セル単体のエネルギー密度は500Wh/kgで、現在進められている電動航空機プロジェクトで開発したという。

CATLとともに新会社を設立した中国商用飛機は、かねてより電動航空機の開発に取り組んでいる。同社が開発し、水素燃料と電気のハイブリッド技術を採用して新エネルギー認証を取得した実証機「霊雀H」は2019年にテスト飛行に成功した。CATLと中国商用飛機という大手同士がタッグを組めば、電動航空機の時代がさらに近づくだろう。

バッテリーに対する要求はよりハイレベルに

電気自動車(EV)が普及すると、次の目標は人が乗れる電動航空機になった。しかし電動航空機の開発はそれほど簡単ではない。

バッテリーのエネルギー密度はEVと同様に電動航空機でもコアとなる要素で、航続時間に直接影響する。しかし現在量産されているバッテリーのエネルギー密度は、長時間の飛行に求められるレベルに達していない。

多くの研究によると、航続距離が同じ場合、電動航空機のバッテリー容量は道路を走行するEVに比べかなり大きくなる。航空機は輸送形態として最も複雑な構造であるため、電動化にはより大きな困難が伴う。例えば、航空機の積載量は安全に航行するうえで重要な要素であり、バッテリー重量についても要求が厳しくなる。しかし現在はバッテリーのエネルギー密度は200Wh/kg程度しかなく、長時間の飛行には不十分だ。

CATLが公表した凝縮系電池の重量エネルギー密度は500Wh/kgに達する。年内に量産体制が整うとしており、電動航空機に必要な技術面の条件は揃うことになる。CATLのチーフサイエンティストである呉凱氏によると、現在商用化されているバッテリーでは、バッテリー本体の重量に見合うだけのエネルギーを蓄えることができないが、凝縮系電池のエネルギー密度はこの課題を克服したという。

寧徳時代が今年4月に発表した凝縮系電池(画像提供:寧徳時代)

安全性もまた電動航空機にとっての課題だ。リチウムイオン電池は揺れや衝突の衝撃でショートしたり発熱したり、発火したりするおそれがある。

電動航空機は空中を航行し、温度や悪天候などの影響を受けることになるため、もしバッテリーに不具合があれば大惨事になる。

安全面についてCATLはもちろん十分な対策を講じている。公式発表によると、凝縮系電池には生体工学を応用した凝縮態電解質、高エネルギー密度の正極材および新型の負極材とセパレータを採用している。

電解液はバッテリーのサイクル寿命と安全性を左右する。従来のリチウムイオン電池の電解質は液状で、漏れ出てしまうと広い範囲でショートを起こし、さらには燃えたり爆発する危険がある。CATLの凝縮系電池の電解液は半固体のゲル状で、通常の電解液に比べ安全性・安定性が高い。

電動航空機向けのバッテリーはEV用に比べ軽くなくてはならず、より高いエネルギー密度と安全性が求められるため、開発の難易度は高くなる。

現時点では航続距離を含め、電動航空機の技術はいずれも開発段階にある。このため大型航空機ではなく、まず短・中距離を飛行するeVTOL(電動垂直離着陸機)を中心に電動航空機分野で商用化が実現し、未来の都市交通の一角を占める交通手段になることが予想される。

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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