【特集】中国発越境EC「SHEIN」「Temu」が日本の若い女性に刺さる理由

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【特集】中国発越境EC「SHEIN」「Temu」が日本の若い女性に刺さる理由

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「超かわいい!」「プレゼント用に買いました!」というレビュー、1000円、2000円で買える服、「数十円から販売」「割引クーポン付与」というトップページ。近年中国からやってきたECサイト「SHEIN」や「Temu」で見られる光景だ。最近進出したTemuは中国でも勢いがあるECサービスの拼多多(ピンドゥオドゥオ)によるもので、SHEINもTemuもいずれもアメリカをはじめ各地で人気となっている。日本と中国の経済力が逆転したとはいえ、今も中国企業にとって日本市場進出は魅力的なので日本に進出した。

SHEINやTemuが日本でサービスを開始したというニュースを聞いたことがあるかもしれない。SHEINの広告をツイッターでよく見たという読者もいるだろう。ただ利用したことはないという読者は多いのでまずこれらを紹介したい。

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まず中国のECサービスは全く違う。同じなのは欲しい商品を見つけたら買い物カートに入れて、クレジットカードなどで支払うことくらいで、人によってはこれまでにAmazonや楽天などで身につけたオンラインショッピングの経験がまるで使えないだろう。中国で売られているものが日本で売られているので、店を訪れてあるものが欲しくなったから同じものを買うということはできない。中国に住んでいる人なら、現地で買いたいものを見つけたらタオバオなどのECサイトのアプリで商品にカメラをかざすと同じ商品をリストアップしてくれるが、街で見つけてネットで買うという流れができない。では検索で欲しいものに辿り着けるかというと、店による商品名の付け方や検索に難があり辿り着くことは難しく、その難しさはAmazonで中国販売業者の商品を探し出す以上だ。

売っているものは基本的に中国で売られる商品や中国から海外向けに売られる若者向けの服や日用品などだ。100円ショップで売られていそうな商品が販売されているほか、ヴィレッジヴァンガードで売られてそうな主張の強そうなデザインの商品が、しまむらやハニーズのお手軽な価格帯で売られている、といえばわかるだろうか。

SHEINのアプリ画面

中国では「小商品市場」と呼ばれる中国各地の卸売市場で売られていそうな商品が両サービスで売られている。初めて小商品市場に足を踏み入れるときもそうだし、SHEINやTemuや、あるいはAliExpressに初めてアクセスするときもそうだが、日本と売られているものが異なるので、何が売られているかどう探せばいいのかわからないというのはありがちな経験だ。なので利用者がゼロからショッピング体験を楽しめるかどうかがサービスやアプリ普及の鍵となる。

では誰が楽しめるのだろう。日本在住の中国人や、中国経験が長い日本人や、普段から中国から商品を取り寄せてる人しかいないのか、というとそうでもない。実は若い世代、とりわけ女性が楽しめる。既に各所で語り尽くされているようにショッピングの行動は男女で異なり、男性は欲しい商品を探し出し買う一方、女性は様々な商品を見比べる傾向がある。アプリでスワイプして様々な服やアクセサリを見ていると、無数の商品の中に各人に刺さるものがあり、それがしかも安い。昔からの女子の願いである「安くかわいく」を実現するのがSHEINでありTemuなのだ。

Amazonで間に合うのでSHEINやTemuは必要ないと思うかもしれない。しかし中国の販売業者側からすると儲からなくなっているので脱Amazonの動きもある。Amazonはアルゴリズムの調整をよく行っていて、今後は自動で梱包配送返品を行うFBA倉庫(FBA:フルフィルメント by Amazon)に十分な在庫がある商品が優先して表示される傾向が強まると業界内では言われている。実際多くの中小販売業者はアマゾンのトラフィックは近年大幅に減少しており、一部の中国の販売業者の今年の注文は20~30%減少しているという報道もある。「Amazonに委託し続けるよりは、中国の越境ECへの出品に賭けたほうがいい」と、安さを売りにした商品を販売する中小企業はSHEINやTemuを歓迎し、これらのプラットフォームに出品しているわけだ。

出店企業側から見たSHEINとTemuだが、SHEINはアパレルを中心に扱い、そのアパレルにしても実際の市場需要をファッショントレンドとリアルタイム分析から販売を予測し、競売をかけ最も安い価格を提示したところに対し、過剰生産を避けて生産を抑えめにするのが特徴で、そうした都合ゆえに低品質な商品もしばしば生産されるというマイナス面もある。一方Temuはプラットフォームに商品を登録するだけなので取り扱うジャンルの幅が広く、他の競合サービスと比べてコンバージョン率が高いのが特徴だ。そうした違いから「売れ残り在庫を解消するにはTemuを使えばいい」という考え方が徐々に多くの工場で浸透しているとの報道もある。

SHEINもTemuもアメリカでAmazonを超えるダウンロード数を記録し、人気のショッピングアプリとなった。日本ではどうかというとSHEINはショッピングアプリでAmazonに次ぐダウンロード数で、Temuはランク外となっている。初速こそTemuは勢いはあったがDAUは25万程度で推移している。日本市場が欧米に比べてあまり盛り上がらない原因について、36Kr中国に掲載された関連記事では、「日本は偽造品や粗悪品に対する寛容性が非常に低く、グレーゾーンの商品も混ざるこれらのECサイトは敬遠される」「100円ショップのラインアップと品質が強すぎる」という分析があがる。Temuについては「トップページにある「35円~」「29円~」と書かれたチャンネルに入ったが、どれも数百円の商品しか見つからず騙された気分だ」とも。

Temuのアプリ画面

筆者が使ってみた感覚をいえば、SHEINもTemuも利用者からみた違いは些細なもの。両方のサービスで売ってて値段が異なる商品もあれば、片方のサービスでしか売ってない商品もある。刺さる商品を見つけたい場合は選択肢を増やす意味でも、SHEINもTemuも両方入れてショッピングを楽しむのがいいのではないか。日本の若い女性にもウケがいいし、過去にはガチ中華やティードリンクが日本で話題にもなった。日本のトレンドを学びたい人もこれらサービスを今後は使い慣れておいたほうがいいだろう。

(作者:山谷剛史)

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