中国スーパー大手「永輝超市」 小型店舗と宅配サービスでライバルに迫る

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中国スーパー大手「永輝超市」 小型店舗と宅配サービスでライバルに迫る

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テンセントが出資する中国小売大手の「永輝超市(Yonghui Superstores)」の業績は、スーパー関連事業を主業務として以降好転している。

永輝は8月下旬に2019年上半期の業績を発表した。上半期の売上高は前年同期比19.71%増の411億7600万元(約6176億円)で、純利益は前年同期比46.69%増の13億6900万元(約205億円)だった。一方で永輝傘下の新事業会社である「永輝雲創(Yonghui Yunchuang)」の上半期の売上高は前年同期比53.3%増の13億8000万元(約207億円)だったが、損失額は6億2000万元(約93億円)と膨らんでいる。永輝雲創の現在の業態には、テクノロジーを活用した次世代スーパー「超級物種(Super Species)」のほかに「永輝生活店(生鮮食品+コンビニエンスストア)」と「永輝生活衛星倉(中小配送倉庫からの宅配)」がある。

永輝が昨年末に永輝雲創の分離を発表して以降、永輝雲創およびその持株子会社の業績は永輝の業績から外れることになった。これにより、これまで永輝雲創の巻き添えを食っていた永輝の決算内容は正常な軌道に乗り始め、純利益も近年最大の伸びとなったというわけだ。

永輝雲創のスピンオフの一方で、永輝は新事業に関する模索を続けている。同社は上半期に小型店舗である「永輝超市mini」398店舗を大々的に展開した。現在は「永輝生活店+衛星倉+サードパーティプラットフォーム」という多業態のオンライン業務に加え、「永輝超市+永輝超市mini」の実店舗ラインナップにより、オンラインとオフラインの業務体系が徐々に整いつつある。

生鮮業界に突如現れたライバル

今年に入り、「朴朴超市(pupumall)」「叮咚買菜(dingdongmaicai)」「美団買菜(meituanmaicai)」などの「生鮮ECでの新型中小配送倉庫を中核とする」サービス業者が急速に台頭しており、永輝超市など既存の生鮮食品業務に大きな打撃を与えている。

2017年5月にサービスを開始した叮咚買菜を例に挙げると、「モバイル端末でオーダー+中小配送倉庫から配送+29分以内の即時配達」を主業務とし、これまですでに5回の資金調達を行っている。インベスターも「高榕資本(Gaorong Capital)」「達晨創投(Fortune Venture Capital)」「老虎基金(Tiger Global Mauritius Fund)」「紅杉中国(セコイア・キャピタル・チャイナ)」などそうそうたる顔ぶれだ。

叮咚買菜が主力とする「0元から配送、配送費無料」は、決して他企業がたやすく模倣できるサービスではない。同社は今年年初に上海市内に186カ所の中小配送倉庫を設置し、蘇州や杭州の市場にも相次いで進出。一部の店舗では1日の注文数が20万件という驚くべき業績を達成している。

永輝雲創にとって最大のライバルといえる「盒馬鮮生(Hema Fresh)」も今年上半期にリーズナブルな生鮮食品のコーナーを設けたほか、青果市場「盒馬菜市(Hema Caishi)」をオープンしたばかりだ。盒馬の侯毅CEOは今後も引き続き地方市場をねらい、賃料5万元(約75万円)以下の郊外に出店していくと述べている。

生活必需品である生鮮食品とその他の食品は、永輝超市が本来強みとする分野であり、売上高に両者が占める割合は70%に達している。だが生鮮食品分野で突如台頭したライバルたちに永輝超市は水をあけられている状況だ。

証券会社「申万宏源(Shenwan Hongyuan Group)」の趙令伊研究員は、国内の生鮮食品販売チャネルにスーパーが占める割合はわずか22%であり、先進国の70%という水準をはるかに下回っていると指摘する。オンラインスーパーの相次ぐ登場は、このスーパー販売チャネルの市場をさらに奪うことになるだろう。

新業態の方向性固まる

迫り来るライバルに対抗するため、永輝超市はオンライン・オフライン両方に注力している。

実店舗への集客に関してみると、上半期に大々的に推進した永輝超市miniの平均面積は488平方メートルで、営業収入は計5億5000万元(約83億円)に達した。

永輝超市miniは毎日の料理に必要な食材をメインとし、店内商品の90%を食品が占め、そのうち生鮮食品の割合は50%以上。店舗は主に社区(中国独自の地域コミュニティ、行政単位)にあり、中高年層をメインターゲットとしている。また永輝超市の大型店舗を囲むように設置され、食品を大型店舗からまとめて調達する仕組みで、店舗と倉庫を兼ねている。

永輝超市miniの設置は、社区や地域の人々により一層寄り添ったサービスの提供を目的としている。「便利蜂(Bianlifeng)」「蘇寧小店(Suning Xiaodian)」やコンビニチェーン店が驚異的なスピードで社区に進出しているため、先手を打つことがきわめて重要な状況だ。

一方で配達業務に関しては、上述のとおり永輝雲創が主に超級物種、永輝生活店(生鮮+コンビニ)、永輝生活衛星倉(中小配送倉庫からの宅配)によりカバーしている。

永輝雲創の売上高と純利益の比較 永輝の財務報告書をもとに36krが作成

超級物種は現時点で80店を構えており、主に一級都市と一部の二級都市を含む十数都市に分布している。

永輝生活衛星倉は「叮咚買菜」と「朴朴超市」をベンチマークとした新業態で、昨年末にローンチされた。衛星倉は6月末の時点で全国に30店以上がオープンしており、そのうち23店が福建省福州にある。現在では既存のサプライチェーンに加え、利用者が商品の調達に関与する試みも始めた。

とはいえ店舗の分布密度やカバーエリアにおいてはいまだにライバルとの差がある。盒馬の店舗倉庫一体型モデルは全国100カ所以上の実店舗で実用化されているほか、叮咚買菜の中小配送倉庫も今年5月の時点ですでに336カ所に上っている。

永輝は本来強みとする大型スーパーに加え、社区では「店舗+中小配送倉庫からの宅配」により実店舗および宅配の利用体制を再構築した。これらの業態により顧客獲得の相乗効果を狙い、かつサプライチェーンでの優位性を発揮することでライバルを猛追したい考えだ。
(翻訳・神部明果)

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