需要高まるデータセンターの省エネ対策 間接蒸発冷却技術で支える中国ベンチャーの取り組み

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データセンターの温度管理ソリューションを手がける「華奕新能源科技(Huayi New Energy Technology)」がこのほど、シリーズBで資金調達を実施した。出資を主導したのは金浦投資(GP Capital)傘下の上海金融科技基金。調達した資金は主に製品開発強化、新たな生産拠点の設置、生産能力拡大に充てる。

華奕新能源科技は2017年に設立され、蒸発冷却式の省エネ型空調機器の開発と生産に特化する。同社製品は主にデータセンターや通信機械室、大型体育館、商業ビル、工場などに用いられている。

中国では現在、社会のデジタル化やスマート化を支える「新型インフラ」の敷設が進んでおり、関連する機器やサービスに対する需要が増えている。その基盤であるデータセンター整備に対しては注力の度合いが年々高まっており、同時に消費電力も増える一方となっている。統計によると、中国全土のデータセンターが消費する電力は2022年に約2700億キロワット時に達し、国全体の消費電力の3.1%を占めた。これは三峡ダム水力発電所の年間発電量の2倍以上に相当する。さらに2025年には全国の消費電力の約5.8%をデータセンターが占めると予測されている。

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データセンターのグリーン化推進のためには電力使用効率(PUE:データセンター全体の消費電力をサーバーなどIT機器の消費電力で割った値)の低減が重点となる。中国工業情報化部の「新型データセンター発展に関する3年行動計画(2021〜2023年)」では、新設された大型およびそれ以上の規模のデータセンターのPUEを2023年末までに1.3以下に引き下げる目標を掲げている。現在、中国のデータセンターの平均PUEは約1.7で半数が1.8を上回っており、1.3達成までは大きな隔たりがある。

華奕新能源科技の周理会長によると、データセンターでは温度管理システムの消費電力が全体の37%に達する。IT機器を除けば最大の消費電力となるため、温度管理システムはPUE低減の鍵となる。

従来の温度管理ソリューションには水冷式と空冷式の2つがある。水冷式とはヒートポンプのように水を媒介として冷却するもので、空冷式は空気を媒介とするものだ。

周会長によると、空冷式・水冷式のいずれも冷熱源が不可欠だ。従来の技術は自然の外気を利用して熱交換を行っていたが、蒸発冷却技術は「気化熱」、つまり外気と水が接触して水が蒸発する際に周囲の熱を奪う現象を利用する。この技術を用いると、フロンやエアコンプレッサーの使用を大幅に減らし、電力を節約できるようになる。従来の冷却ソリューションと比べると蒸発冷却機器のエネルギー効率は4倍になり、消費電力量を70%減らせる。

同社はすでに間接蒸発冷却機器の中核である熱交換器の独自開発・生産に成功し、AIを使った制御システムの開発・実用化も実現している。機器関連の特許を有し、製品はソフトウェアとハードウェアを統合した形で提供する。中国全土のさまざまな気候区分に対応でき、あらゆるデータセンターの需要に応えられるという。

華奕新能源科技の蒸発冷却機器 出典:華奕新能源科技

ハードウェアの構造の他に同社が注目しているのは、AIを用いた制御技術の新たな活用方法だ。中国全土で使用される蒸発冷却機器が蓄積したデータを活用し、1時間単位で管理・制御を最適化できるAI制御システムを発表している。

華奕新能源科技の蒸発冷却技術のソリューションは中国各地の30カ所以上のデータセンターに導入されている。蒸発冷却技術の消費電力は従来型空調機器の30%で、成績係数(COP:冷暖房機器の省エネ性能を表すエネルギー消費効率のこと)は年平均0.125だ。

中国政府が開発を進める河北省のスマートシティ雄安新区(Xiong’an New Area)のコンピューティングセンター設立も支援している。エネルギー消費量や二酸化炭素排出量は現行の国家基準を60%以上も下回るもので、データセンターのPUEは1.09を目指しているという。

(翻訳・山下にか)

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