米NVIDIA半導体輸出規制、GPT-4追う中国生成AI技術にも打撃

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米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)は10月23日(現地時間)、米証券取引委員会(SEC)にForm 8-K(臨時報告書)を提出し、輸出規制措置に関わる政府の通達について報告した。その中で、同社の5種類の高性能GPU(画像処理装置)「A100」「A800」「H100」「H800」「L40S」に対する規制が、予定されていた11月末から即時施行へと前倒しされたことを説明している。

バイドゥ、テンセント、アリババ、バイトダンスなど中国の超大手IT企業が8月に発注済みだったA800約10万枚の納品に支障がでる恐れがある。

チップ調達難を受けて中国ではNVIDIA製品が値上がりしている。今年4月に中国の某ベンチャー企業がA800を1000枚以上発注した際の単価は約8万元(約160万円)だった。10月17日に米商務省産業安全保障局(BIS)が半導体や半導体製造装置の対中輸出規制措置を改定し、AI用高性能チップへの規制を一層強化することを発表すると、中国国内でA800の価格が上昇。10月20日時点で単価約30万元(約600万円)となっている。

BISが昨年10月に打ち出した輸出規制ではチップ間通信の帯域幅を制限していたが、今回は新たな規制の基準として「性能の密度(performance density)」を追加し、施行までの猶予期間を30日と発表していた。

A800およびH800はもともと対中禁輸措置を回避するため、A100およびH100のチップ間通信帯域幅を狭めてダウングレードした製品だが、今後はこれも全面禁輸の対象になる。

BISは新規制を通じて中国メーカーに対し、複数のチップをつなぎ合わせて一つのチップとして機能させる集積技術「チップレット」使用の阻止も図る。ファーウェイが中国国内で発売した最新のスマートフォン「Mate 60 Pro」に搭載されている7nmプロセスの5Gチップも、当初はチップレットを使って7nmプロセスと同等の性能を実現したものとの憶測が流れていた。

米商務省のレモンド長官の説明によれば、中国に最先端製品が流れる抜け穴を防ぐため、AI用チップの輸出管理規定は年1回改定されるという。

米国が引き続き「small yard, high fence(特定の技術を厳重に管理する)」方針をとる中、BISはノートパソコンやスマートフォン、ゲームアプリなど一般消費者向け製品に搭載されるチップに限っては輸出を許可している。ただし、一部のゲーム用ハイエンドチップに関しては、輸出許可の申請が必要になる。

米国が対中輸出規制を強化したことの影響について、NVIDIAは「世界中で高い需要があることを鑑みれば、短期的には業績に大きな影響があるとは考えられない」としている。

しかし、長期的には中国市場を失うことで被る打撃は避けられない。NVIDIAの2023年5〜7月期の決算報告会でジェンスン・フアンCEOは、データセンター用GPUの対中輸出規制が長期的に続けば、世界最大の市場を戦い、リードする機会を失うだろうと述べている。

中国の大規模言語モデル、訓練に壁

長期的な打撃を被ることになるのはNVIDIAだけではない。大規模言語モデルを開発する多くの中国企業もNVIDIAからの供給がストップすれば、ChatGPTひいてはGPT-4に追いつく道が阻まれる。

AI開発企業「DeepMind」の共同創業者で現在は「Inflection AI」のCEOを務めるムスタファ・スレイマン氏は、OpenAIがひそかに訓練を進めているGPT-5について、NVIDIAのH100を3万〜5万枚必要とする見込みだと明かした。

アリババ、テンセント、バイドゥなど中国の大手企業は米国の新たな輸出規制が発表される前にチップの調達に動いていた。しかし、今なお進化を続けるOpenAIの大規模言語モデルに対抗するには、保有するチップの数が十分かどうかが問題になってくる。

バイドゥ、テンセント、アリババ、バイトダンスは8月、NVIDIAにA800を約10万枚、合計10億ドル(約1500億円)相当を発注したと報じられた。来年にはこれらの価値は40億ドル(約6000億円)相当になると見られる。A800が年内に無事に納品されても、1社あたり2万5000枚しか手に入らず、これではGPT-5の進化には到底追いつけない。

NVIDIAからの供給が完全に絶たれれば、中国大手企業にとって国産のGPUに切り替えること以外に選択肢はなくなる。しかし、現段階ではA800やA100の性能に並ぶ製品は存在しない。

国産GPUに切り替えるにしても、先端プロセスで生産されたチップが手に入らないという問題が最初に立ちふさがる。BISは「壁仞智能科技(Biren Technology)」、「摩爾線程(Moore Threads)」など中国のGPU開発企業をエンティティ・リスト(禁輸対象リスト)に新たに追加したため、これらの企業は承認なしに米国企業の開発した技術や製品を輸入できなくなっただけでなく、TMSC(台湾積体電路製造)などのファウンドリー(受託生産)を通じて14nmプロセス以下のチップを生産することもできなくなる。

見過ごすことのできないもう一つの影響は、より先進的なチップの進化が大規模言語モデルの運営コスト低減を支えていることだ。NVIDIAのフアンCEOは「H100を使えば大規模言語モデルの演算処理にかかるコストは桁違いに下がる」と述べている。

大規模言語モデルの訓練にかかるコストが下がれば、API呼び出しにかかる顧客側のコストも下がる。中国企業は国産チップが性能面で劣る現実を突きつけられるばかりか、海外のライバルよりも多くのコストを負担しなければならなくなるのだ。

原文:WeChat公式アカウント「字母榜(ID:wujicaijing)」
(翻訳・山下にか)

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