生成AIスタートアップ「Sparticle」、プレシリーズAで約5億円調達 日本語LLMの開発を強化

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生成AIスタートアップ「Sparticle」、プレシリーズAで約5億円調達 日本語LLMの開発を強化

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日本の人工知能(AI)スタートアップ企業「Sparticle(スパーティクル)」がこのほど米投資ファンドなどから約5億円を資金調達した。同社は日本企業向けの生成AIの提供を主力事業としており、調達した資金は日本語の大規模言語モデル(LLM)の開発強化などに充てる。創業者の金田達也最高経営責任者(CEO)はマイクロソフトの技術者を経て、中国の大手スマートフォン企業、小米集団(シャオミ)の幹部を歴任した技術畑出身の人物である。今回の資金調達で、日本のAI市場をより加速させる方針だ。

米シリコンバレー発のベンチャーキャピタル(VC)のWisemont Capitalをリード・インベスターとする投資会社4社から、プレシリーズAで約5億円を調達した。Wisemontは「SparticleはAI業界で素晴らしい成果を収めており、その革新的なアプローチと強力なチームに魅了された」とコメントしている。

金田氏は2019年8月にSparticleを設立し、20年6月より事業を本格化させた。当時は新型コロナウイルスが世界的に流行していたこともあり、Sparticleは議事録作成や同時翻訳の機能を持つオンライン会議など、AI技術を使ったSaaS型サービスの提供に参入した。現在はオールインワン型コラボレーションツールの「Felo」、リモートワーク仮想空間の「CircleO」、YouTube動画やGoogle検索の結果の要約を可能にする「Glarity」、世界初のRRT(Real-time ReWrite Translate)搭載の翻訳アプリ「Felo 瞬訳」などの登録会員は、延べ約20万人に達している。

22年11月に、米OpenAIが対話型の生成AI「ChatGPT」を公開したことを受け、Sparticleはその将来性にいち早く着目し、生成AIへと事業を拡大した。今年6月以降、GPT技術を活用し、企業や個人の情報を学習し、独自のAIエージェントを作成できる「GPTBase」などの生成AIサービスを実用化し、すでに約20社の顧客を獲得している。例えば、全国の保険代理店と保険ビジネスの健全化を促進する一般社団法人 保険健全化推進機構 結心会はSparticleの技術を使い、このほど「結心ボット」と呼ぶナレッジベースの運営を始めた。

独自のAIエージェントを作成できる「GPTBase」

Sparticleは技術面での評価も高い。クラウドサービス大手のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)ジャパンは今年7月、日本におけるLLM開発を支援するプログラムを発表し、Sparticleを支援対象の17社・団体のひとつに選出した。他には、日本のAI研究の第一人者である松尾豊・東大教授とつながりが深い松尾研究所などが選ばれている。

情報要約AIツール「Glarity」開発元「Sparticle」、 AWS 大規模言語モデルの開発支援プログラムに採択

「世界のIT(情報技術)産業において、生成AIはモバイルインターネットから約10年ぶりに現れた革命的な変革だ。人々の生活を根本的に変える可能性がある」。金田氏は生成AIで事業拡大を目指す理由をこう語る。

金田氏は清華大学で電気・電子工学を専攻し、中国科学院では脳の働きを模したAI計算の仕組みであるニューラルネットワークを学んで修士号を取得した。マイクロソフトで5年間、携帯電話用OS「Windows Mobile」の開発などに従事した後、初期メンバーとして10年にシャオミに入社した。シャオミはその後、値ごろ感のあるスマホの販売で急成長し、当時は中国のモバイルインターネットの普及を象徴する存在だった。

シャオミにおいて、金田氏はSNS(交流サイト)の「米聊(MiTalk)」やスマホ用アプリの開発・運営に従事した。シャオミの躍進をソフト面で支えた人物といえる。シャオミ自らが提供する通信キャリアサービス「小米移動」の責任者を最後に離職し、日本に移住して創業することを選択した。

AI産業では、日本より中国の方が先行している印象が強い。しかし、金田氏は「AIの開発では日本の『匠の精神』が生きてくる」と指摘する。日本人が得意とし、コツコツと品質を上げていく製造業に近い開発手法が生成AIでは欠かせないのだという。

日本はAI市場としても、競争が激化し過ぎた中国より魅力があるそうだ。「信用力や支払い能力の高い顧客が多く、落ち着いて事業拡大に取り組むことができる」(金田氏)。日本社会は意思決定などが遅いものの、成熟し、公平で、効率が良いと判断し、腰を据えてSparticleを育てていくことにした。

Sparticleの運営は日本、米国、中国約60名のグローバル体制で推し進めていく予定だが、当面は日本市場に強化し、AIサービスを提供していく。さらに、保険業界、コンサル業界における豊富な実績を持ち、DX(特に生成系AI)の社会適用を目指す会社のビジョンに賛同した藤井秀樹氏を執行役員に任命し経営体制を強化した。以前、藤井氏は複数の主要な保険会社で経営幹部の役割を果たし、100人規模のDXコンサルティング会社を設立した経歴を持っている。

Sparticleの金田達也CEO(左から三人目)、執行役員の藤井秀樹氏(左から二人目)とコアメンバー

技術面においては、今後、米メタが今年7月に発表したLLMの「Llama2」などをベースに、日本語で自然に使えるAIサービスの実用化を急ぐ。事実を勝手に作り上げる「ハルシネーション(幻覚)」など、生成AIの問題点を補った新サービスを年内にも発売する方針だ。2024年6月期には、当社の売上高を数億円に引き上げ、大手企業を含む40社以上の新規顧客を獲得することを目指している。

日本は、最近では成功を収めたDX関連サービス(特に生成系AIに焦点を当てたもの)が増加傾向にある。これらのサービスを提供する企業の多くが経営者や本社を出身国に拠点を置いている。一方で、金田氏とSparticleは日本に拠点を置き、その実現に向けて大きな一歩を踏み出している。

(36Kr Japan編集部)

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