中国音声配信サービスの黄金時代が到来 今後の成長に課題も

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中国音声配信サービスの黄金時代が到来 今後の成長に課題も

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2019年の音声配信業界は、10年間の歩みを経て収穫期を迎えたかに見えた。

このほど、オーディオブックサービスの「懶人聴書(lrts.me)」が新シリーズの資金調達を行った。調達後の評価額は20億元(約300億円)だ。音楽やポッドキャストなど総合音声コンテンツ配信の「荔枝(lizhi.fm)」は年内に米国で上場するとの見方があり、その強敵の「喜馬拉雅(Ximalaya)」は来年上場するとの情報が流れている。

音声配信業界はビジネスのメインステージに躍り出たのだろうか。おそらくそうではない。動画配信と同様、音声配信にも著作権料の高騰、収益化の難しさといった課題がある。10年近く経ても、国内の音声配信業界にはまだ上場企業がない。このサービスは、思ったほど簡単ではないようだ。

モデルチェンジで生き残りを図る

パソコンからモバイル端末、ラジオからオンライン配信へとシフトしていくなか、音声配信業界は機を逸することなく、旧来のラジオ放送をすぐにオンライン化させることに成功し、モバイル音声配信マーケットに率先して乗り出し、大量のリソースを蓄積してきた。

オンライン学習やオーディオブックなどの有料コンテンツ、広告、ファンイベント、スマートデバイス、著作物のディストリビューションなどが収益源となる。喜馬拉雅、「蜻蜓FM(qingting.fm)」のビジネスモデルがこれにあたる。

しかし、コンテンツの著作権使用料が、動画配信プラットフォームだけでなく、音声配信にとっても悩みの種となっている。、蜻蜓FM、喜馬拉雅、懶人聴書などは、長い期間をかけて、投稿サイトや出版社と協力関係を築き上げてきたが、発言力が強いのは著作権の権利者側で、音声配信プラットフォームは弱い立場にある。著作権使用料を一括で支払うのか、あるいは一定比率を分配するのかは、権利者側がプラットフォームのトラフィックによって決めているのが現状だ。

配信者の育成においては、各音声配信プラットフォームが、独占契約の配信者を奪い合っている。この状況は、高いコストがかかることを意味する。2018年1月、喜馬拉雅は今後1年間で音声コンテンツの提供者に30億元(約450億円)の支援をすると発表。2018年11月、蜻蜓FMも3年間で10億元(約150億円)の支援をすると発表した。

モデルチェンジし、生き残りを図るプラットフォームもある。荔枝がその例だ。2018年1月、荔枝は「荔枝FM」から名称変更した。その理由は、個人の生配信がメインとなったからだ。荔枝が公表したデータによると、70%以上のユーザーが配信者やコンテンツに有料のギフト(投げ銭)を送ったことがあるという。荔枝の音声生配信による月間売上高は約1億元(約15億円)で、安定した収益を上げている。

音声配信業界は動画配信業界にますます近くなっていく一方、音楽ストリーミングとの共通点も増えている。コンテンツのコストが高止まりするなか、両者とも多角的な収益源を探している。

大手が参入 どこへ向かうのか

好材料としては、動画配信、音楽ストリーミングを体験したことで、ユーザーの料金を支払うことへの抵抗感が薄れていることが挙げられる。

有料時代の到来は速い。喜馬拉雅のデータによれば、2018年4月にVIP会員サービスを開始して以降、2019年5月時点での有料会員数は400万人、有料会員のARPU(1ユーザーあたり平均売上高)は約58元(約870円)だ。

リサーチ企業「iiMedia Research」の「2017-2018中国音声配信市場研究報告」によれば、今後コンテンツのために料金を支払ってもよいと回答したユーザーは42.3%、わからないと回答したのは23.2%、支払いたくないと回答したのは34.5%だった。iiMediaのアナリストは、クオリティの高いコンテンツに対する需要は日増しに高まっており、有料サービスへの受容度も高まっているなか、音声配信プラットフォームはコンテンツの質に注力し、有料会員を囲い込むべきだと指摘する。

有料コンテンツのビジネスモデルにはIT大手も注目する。過去数年間の蜻蜓FMへ出資した企業をみてみると、中国スマートフォン大手の「シャオミ(小米科技)」、中国検索エンジン最大手「バイドゥ(百度)」の名前が出てくる。喜馬拉雅もシャオミから出資を受け、さらに中国大手ECサイト「京東(JD.com)」、IT大手「テンセント(騰訊)」からも出資を受けている。

しかし、大手が注目するとはいえ、音声配信はそれほど簡単ではない。コンテンツの取得からディストリビューションまでは複雑な産業チェーンで、各プラットフォームの経営力が問われる。

現在、各社はまだ市場の確保に奔走している状態だ。シェア争いは過熱し、バラエティ番組のネーミングライツ、他ブランドとのコラボ、イベントに合わせたキャンペーンなどに、喜馬拉雅と蜻蜓FMは欠かさず参加している。

2018年のモバイル音声配信アプリの月間アクティブユーザー数の推移(www.analysys.cnより)

また、音声配信業界内での競争のほか、「網易雲音楽(NetEase Cloud Music)」、「酷我(koowo)」など音楽ストリーミングサービスも音声配信に乗り出した。オンライン小説サイトの「閲文(China literature)」も独自のオーディオブックサービス「閲文聴書(China Literature Listening)」を提供している

ポッドキャストを中心とする海外の音声配信エコシステムと異なり、中国国内の音声ビジネスは、業界の幅が大きく広がり、音声配信を中心とするビジネスモデルを構築し、さらに音声に関わるサービス全般に広がろうとしている。
(翻訳:小六)

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