越境ECの生き残り戦術とは。中東向けECユニコーン「Jollychic」の創業者が語る

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越境ECの生き残り戦術とは。中東向けECユニコーン「Jollychic」の創業者が語る

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中東諸国向け越境EC の「Jollychic」はシリーズC+でアラブ首長国連邦のテック大手「G42グループ」から6500万ドル(約70億円)の調達を完了した。2018年のシリーズCでの資金調達後に同社はユニコーン企業になっている。

越境ECからスタートした同社は現在、事業の現地化を進めるべく物流体制の構築や決済サービスの立ち上げを行ったほか、地域密着型の生活関連O2O事業を試行している。物流体制は、中国の大手ECアリババ傘下の「菜鳥網絡(Cainiao Smart Logistics)」や京東集団(JD.com)傘下の「京東物流(JD Logistics)」のスキームをかけ合わせている。同社はより多くのサービスネットワークを自社のエコシステムに組み込んで営業地域の拡大を進めており、すでにサウジアラビアを含む湾岸6カ国に進出しており、さらにエジプトを中心とする北アフリカ市場を調査中だ。

同社の創業者兼CEOの李海燕氏から、今回の資金調達や事業拡大のロジック、中東市場の競争や成長の限界点について話を聞いた。

― ―今回の出資者G42はどんな企業ですか。

李氏 「G42は現地のイノベーションテック最大手で、国家級の戦略的テクノロジー事業を多数請け負っており、AIやビッグデータ、クラウドコンピューティングなどのハイテク分野で豊富な業績を上げている企業だ。UAEの政府系ファンド(SWF)ムバダラ開発公社から分離し、ファンドと事業を結合した形態をとっている。同社は国家戦略的な意義を有するため、規模は非常に大きく、重要な次世代産業すべてにかかわっている。同社は中国のファーウェイやアリババと提携して、将来を見据えたクラウドコンピューティング能力の構築を進めている」

― ―Jollychicが今最も注目しているのは何ですか。

李氏 「インフラとプラットフォーム構築だ。物流と決済はEC発展の起爆剤となる。中東地区のEC普及率は今のところわずか約2%だが、それを20%まで成長させるには、物流と決済が要となる。この2点を先に固めれば、ECは怒涛の成長を遂げることだろう」

「自社で幾百万のSKU(在庫保管単位)を管理することは大きな挑戦となっている。当社としては中国ブランド、現地ブランドを問わず多くのベンダーが我々のプラットフォームで開店し、我々のインフラを活用して事業を発展させることを期待している」

― ―中東地域、特に湾岸諸国は人口が限られているため、成長の限界を懸念する声もあるようですが。

李氏 「EC業界自体の成長はまだ好調とはいえ、顧客の伸びは期待できない。湾岸6カ国の人口は約6000万人で、Jollychicの登録ユーザー数はすでに5000万人を超えているため、ユーザーはほぼ獲得し尽くしたと言えるかもしれない。今の事業にとって重要なのは、ユーザーの価値をより発揮できるシナリオだ。そのために間断なく新商品の開発を続けている」

「モノを売ること自体に、『拡大』という過程がつきものだ。自社だけで運営していた事業がやがてプラットフォーム化し、取扱品目を拡充するといったプロセスを踏むことは必須で、当社もまだそれらの構築段階にある。しかし、こうした前進を続けると同時に、決済システムや物流、生活関連サービスなどを充実させることは両立できる。これは事実上、同一の客層に向けてあらゆる商品を開発して売り出すことだ。日常生活のあらゆる場面で当社の商品に出会って愛用してもらい、最終的にこれらの商品を一カ所に集約して超大型アプリに成長させることを我々は目指している」

― ―海外メディアの報道には「スーク・ドット・コム(Souq.com)」も中東最大のECとして紹介されており、同社傘下には物流企業の「Q Express」、決済ネットワークの「PayFort」、投資先には食品宅配EC「InstaShop」があり、すでに一大エコシステムを構築していますが、この方面での競争をどうご覧になっていますか。

李氏 「スタートは彼らの方が早かったが、我々は彼らをすでに追い越している。彼らは北アフリカでも事業を展開しているが、エジプト市場を除外するならば、GMV(取引総額)やユーザー数で当社はすでに彼らを上回っている」

「スーク・ドット・コムはアマゾンに買収される前、実に多くのことを手掛けた。しかし、運営能力が限られていたため、成長スピードは芳しくなかった。買収された後、実質的にはさらに事業規模が縮小した。傘下の物流企業は切り離されて売却されたと聞いている。この点からも彼らの経営状況がうかがえる」

― ―越境EC業界では近年どんな傾向が見られますか。

李氏 「越境ECは過渡期にあり、最終的には現地化が進むだろう。越境ECは『品数』のニーズを満たすだけで、体験(UX)が特に優れているわけではなく、EC業界全体における補完的な役割をしているに過ぎない。しかしそのままでは、いつまでたっても脇役のままだ。主役になるには現地化を進めるべきだ。全ての越境ECが越境取引だけにこだわるなら、いずれ淘汰されてしまう。徐々に新しいことに取り組まねばならない」

― ―「拼多多(Pinduoduo)」や「雲集微店(YUNJI)」など中国発ECが海外市場でベンチマークとして注目されています。Jollychicは中国ECの手法を試したことはありますか。

李氏 「中国で成功したモデルは常に試している。しかし、地域によって消費者の特徴が異なるため、これらの手法に対する反応は一概に良いとは限らない。コスト構造が違う状況下では、中国で成功しているモデルでも、こちらでは通用しないものもある」
(翻訳・虎野)

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