クラウドERPが変革する中国アパレルの生産現場

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テキスタイル産業の最適化を図る中国企業「智布互聯(Smart Fabric)」が、シリーズCで1億ドル(約108億円)を調達した。出資を主導したのはテンセントとセコイアキャピタル・チャイナで、他に寛帯資本(CBC Capital)、既存株主の元璟資本(Vision+ Capital)、経緯中国(マトリックスパートナーズ・チャイナ)、IDG Capital、翊翎資本(10FUND)などが参加。財務顧問は凡卓資本(Fanzhuo Capital)が単独で務めた。調達した資金は技術開発や市場開拓、人材採用に充てる。

2014年に設立された同社は、SaaS型クラウドERPを通じて、テキスタイル産業における製造や貿易業務のIT化を図っている。具体的には、ERP(企業資源計画)をクラウド化し、これを基礎として、サプライチェーン川下の衣料品メーカーやブランドから製造を受注し、川上のテキスタイルメーカーに製造を委託する。その際、製造過程を細分化し、IoTやスケジューリングシステムを通じて複数の提携工場へ割り振り、分担生産を行うのだ。智布互聯はその司令塔の役割を果たす。

同社の主な顧客は海外企業で、売り上げの90%以上は生地の販売によるものだ。同社が開発したSaaS型クラウドERPは事業に必須のインフラのため、提携工場に原価で提供される。創業者兼CEOの傅俊超氏によると、同社は現在、急速に売り上げを伸ばしており、粗利率ではすでに業界平均を上回っているほか、昨年は1000万元(約1億5000万円)規模の利益を達成しているという。

「製造業の頭脳」が生む価値

中国のテキスタイル産業は世界最大規模を誇り、また世界最大の輸出国でもある。その産業規模は数兆元(数十兆円)に上る。テキスタイルは衣料品に欠かせない主要原料である一方、産業自体は労働集約型産業であり、生産のほとんどを中小企業が担っている。多くの生産現場は小規模で、IT化やマネジメントの面で遅れているのが現状だ。傅CEOは、こうした現状では国際競争には到底勝てないと考えた。

一方で、市場にみられる二つの現象も産業構造の改革を迫っている。その一つは、消費者が個性を重んじるようになったことだ。消費の個別化やカスタマイズが徐々に求められるようになってきている。もう一つは、アパレル業界の不振だ。売れ残り在庫が山積するような状況が常態化する中、「小ロット生産を頻繁に発注する」業者が増えてきている。

智布互聯は業界のプラットフォーマ―として、まさに「製造のブレイン」の役割を担っている。製造関連のデータを収集・統合・運用し、複数の生産現場に製造を分担させることで、低コストで高効率、かつ安定した納品が可能になるのだ。傅CEOによると、同社のSaaSを活用することで、衣料品メーカーの調達コストは5~10%削減でき、納期は30%短縮できるという。

今年8月時点で、世界の上位200位に入る衣料品メーカーやブランドの7割が智布互聯と提携しているという。提携企業にはH&MやTARGET、ウォルマート、J.C.ペニーなど超大手の名も並ぶ。

事業の課題と将来の展望

この事業スキームを運営するにあたり、克服すべき課題もある。

単純かつベーシックな製品を持続的に生産する大ロット受注の場合、複数の生産工場を並行して稼働させ、生産能力を分配することは難しくない。プラットフォームの立ち上げ初期におけるデータの蓄積やスキーム構築には、こうした生産形態が好都合だ。しかし、生産能力や品質管理を精確にコントロールしていくためには、製造環境や製造拠点の立地、製造スケジュール、人的リソースなどを十分に把握した上で、より精度を高め、効率的に管理していかなければならない。

また、より複雑な工程を必要とする製品を生産する場合、アルゴリズムやシステムとの連携や複雑な業務シナリオにおいて、より深くすり合わせを図っていく必要がある。

今年の投資業界において、アパレル関連のサプライチェーンは注目株の一つとなっている。繊維・織物製品のオンライン取引を手がける「百布(baibu)」が1億ドル(約108億円)を調達して以降、投資家の注目は販路開拓やマーケティング事業から、デザイン・製造・流通までを手がけるサプライチェーン・マネジメント事業に移った。

智布互聯は深圳市に本社を構えるほか、ロサンゼルス、ロンドン、ソウル、シンガポールなど海外に約10の拠点を持つ。従業員数は約400人で、半数以上が開発スタッフだ。コアメンバーはファーウェイ、ソフトウェア中国最大手の金蝶国際(Kingdee)、テキスタイル生産で世界最大手の福田実業(Fountain Set)、IBMなど国内外の大手企業の出身だ。同社がテキスタイル産業向けに構築した「製造のブレイン」は、製造業の他分野でも応用できる。その基礎となるのがPaaS(Platform as a Service)であり、すでに同社の将来的な業務の方向性の一つに組み込まれている。
(翻訳・愛玉)

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