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配車サービス市場が米国や東南アジアで盛り上がりをみせる一方で、中国ではコンプライアンスや法規制など複数の原因により、市場の成長に急ブレーキがかかっている。
昨年には「滴滴出行(Didi Chuxing)」の相乗りサービス(「順風車」)をめぐる死傷事件が2度発生した。その結果、十数都市の監督管理部門が滴滴に対する事情聴取を行い、安全面やコンプライアンスに関する要求を提示した。昨年8月には、滴滴だけでなく地図アプリ大手「高徳(AutoNavi)」も相乗りサービスをひそかに停止するなど、競合他社も弱気の態度に転じている。
相乗りシェアサービスの停止から1年が経過した今、人々は滴滴そしてモビリティ業界全体の変化に気づき始めた。
社会との交流 開かれた企業へ
この1年間、自発的なメディア対応をほとんど行ってこなかった滴滴だが、7月には媒体向けの公開イベントを半月の間に2度も実施し、突然の方向転換をみせた。
これに加え、これまで自社プラットフォームにおいて発生した刑事事件や治安を脅かす事件の件数をひた隠しにしてきた同社が、6月下旬にアプリ内で公開した「安全透明度レポート」の中でそれを公開した。
レポートによれば、2019年第1四半期の配車サービス(タクシーを含む)におけるドライバーと乗客とのトラブルに関するクレームは8万件を超え、配車要請件数に占める割合は0.0042%だったという。その後の確認により、そのうち35%は虚偽のクレームであることが判明したが、最終的に警察に受理された事件数は121件で、10件が刑事事件として立件され、111件が治安関連事件として受理されている。
「滴滴の真の姿は不完全なものかもしれないが、我々は100パーセントの努力をする」「カスタマーサービスは、我々が利用者の皆様の声に耳を傾ける足がかりだ」。滴滴の柳青(ジーン・リウ)CEOは、同社が創業から日の浅い会社であり、模索中の段階にあるため、社会の意見を取り入れたいと語っている。
製品設計 効率より安全を優先
滴滴はこの1年、「all in セキュリティ」を全面に掲げてきた。現時点で相乗りサービスのアプリは12回のバージョンアップを終え、226項目の機能で最適化が図られている。例えば、「近くの人を探す」機能の廃止、乗客のプロフィール写真や性別などのプライバシー情報を非表示にする機能や、ドライバーと乗客に対し乗車前に顔認証を行う機能の追加、配車プロセスの最適化、ドライバーによる配車要請選り好みの防止といったものだ。
将来的には、ライドシェアの機能はさらに複雑化するだろう。ドライバーあるいはユーザーのいずれにとっても、使い勝手の良いサービスではなくなるかもしれない。
この点に関しては、柳CEOも「安全性をできる限り高めるため、アプリの利便性を犠牲にするのもやむを得ない」との考えを示している。
市場シェアも急変
相乗りサービスの再開時期について、滴滴はいまだに明確な答えを提示していない。
一方で同社が2015年から必死に築き上げてきたライドシェア市場は、この1年で新旧ライバルによって侵食されつつある。例えば中国の調査会社「TrastData」が発表した「2019年第1四半期モバイルインターネット業界発展分析レポート」によれば、「嘀嗒出行(Dida Chuxing)」の月間アクティブユーザー数(MAU)が前年同期比で81.6%増となっている。サービス提供エリアの数でも、一昨年の6都市から昨年には85都市へと急拡大した。
シェアサイクルからスタートした「哈囉出行(Hellobike)」も、昨年12月末にライドシェアのドライバーを公開募集し、わずか20日間で全国のドライバー登録数が100万人を突破した。また、「曹操出行(Caocao Chuxing)」も9月中にライドシェア事業を開始すると宣言している。
また、現時点で最大のライバルである高徳のデイリーアクティブユーザー(DAU)は4億人を超えている。高徳は滴滴とほぼ同時に相乗りサービスを停止したが、今年6月に広東省と武漢市でサービスを再開した。滴滴がライドシェアサービスを開始した2015年の当時と同じく、現在は各社が再びしのぎを削っている。ライドシェアの相乗り市場はいったん振り出しに戻されたといえるだろう。(翻訳・神部明果)
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