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中国で一時ブームとなった花のサブスク(お花の定期便)を運営する「花加(FLOWERPLUS)」が9月下旬、営業の一時停止と事業再建に踏み切ると従業員に一斉通知した。
花加は2022年から資金繰りが悪化。経営陣は従業員の給与を確保するため資金調達に奔走し、創業者の王柯氏も多額の負債を抱えていたという。この数カ月は閑散期だったことと既受注分の納品、返済が重なって赤字が続き、9月には口座が凍結され、サプライヤーや顧客、従業員への振り込みができなくなった。
中国のソーシャルコマースアプリ小紅書(RED)では花加について「品質が落ちる一方」「いつも期日通りに商品が届かない」など、消費者からのクレームが数多く投稿されている。
2015年に設立された花加は、生花のネット通販で脚光を浴びた企業だ。創業者の王柯氏は「生花を新中産階級の生活の一部に」を目指して生花のサブスクリプション(定額購入)サービスを始めた。週1回の配達で月額98元(約2000円)か168元(約3500円)のコースを選べる。
花加のユーザーは設立から2年で500万人を超え、月間売上高は1億元(約20億円)となり収益分岐点に達した。2015年から2019年までの間に6回の資金調達を実施している。
このころの中国では生花EC業界が爆発的に成長していた。生花ECを手がける企業の資金調達は2015年の1年間で22件、合計9億5800万元(約200億円)に上り、「野獣派(THE BEAST)」、「花点時間(REFLOWER)」、「ROSEONLY」などのブランドが誕生した。しかし消費財分野への投資が先細り、コロナ禍の影響もあって生花ECは徐々に下火になっていった。
もともと生花はビジネスとして扱いにくい商品カテゴリだ。生鮮食品と同様に鮮度を保てる期間が短く、運送にかかる条件も厳しく商品が傷みやすい。中国では生花の生産地が雲南省に集中しており、艾瑞咨訽(iResearch Consulting)の調べでは国内に流通する生花の7割は雲南省の省都・昆明市で生産されている。内陸の雲南省から全国各地に生花を流通させることはそもそもが難しく、普通はコストの高い空輸となる。
生花ECを手がける企業は創業初期にサプライチェーン構築のため多くの資金を投入するが、川下のニーズは経営側が思うほど理想的ではない。
生花を購入するのは往々にしてイベント絡みが多い。閑散期にはまったく売れないが、バレンタインや母の日になると注文が殺到する。
また、生鮮食品ECが台頭したことも打撃となった。中国では2019年から「盒馬鮮生(Freshippo)」「叮咚買菜(Dingdong Maicai)」などに代表される生鮮食品ECが生花も取り扱い始め、注文から最短で30分で届けてくれるようになった。
生鮮食品は購入頻度が高いため、サプライチェーンも生花よりずっと整備されている。ダークストア(エンドユーザーに近い地域に設けられる商品倉庫)、コールドチェーン(低温物流)、ラストワンマイル(エンドユーザーまでの短距離配達)のソリューションが揃っており、供給元さえ確保できれば生花に手を広げるのもごく自然なことだ。
消費者にとっても月99元(約2000円)で毎週配達される花加よりも、10本15.9元(約330円:雲南産のバラの場合)で必要な時にすぐ配達してもらえる盒馬鮮生のほうがコストパフォーマンスに優れ、使い勝手が良い。叮咚買菜では2021年、1億8000万本の生花が売れたという。
花加の営業停止は生花ECがビジネスとして非常に難しいという現実を暗に示している。
(翻訳・山下にか)
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