拡大続けるアリババ生態系 ネットイース取り込んでテンセントに対抗 

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中国最大手のECプラットフォームを展開するアリババが先日、ネットイース(網易)傘下の越境EC事業「ネットイースコアラ(網易考拉)」を20億ドル(約2200億円)で買収した。同時に、同社の音楽ストリーミング事業「網易雲音楽(ネットイース・クラウド・ミュージック)」に対する7億ドル(約750億円)の投資も主導したニュースが発表され、中国のインターネット業界再編の構図が明確に示された。

このニュースが事実であることを知ったEC専門のベテラン記者は「自分が生きている間にまさかアリババとネットイースが手を組む日が来るとは」とSNSでつぶやき、驚きを隠せない様子だった。

アリババは実際のところ、ネットイースコアラを切実に必要としているわけではなかった。ネットイースコアラが手がける越境ECは市場規模が小さい上に、アリババは欲しているのは集客源であってEC事業そのものではない。ここで指摘しておきたいのは、ネットイースコアラは決して一部の人々が考えるような集客源ではなく、クラウドミュージックこそがそれに該当するという点だ。

アリババは2013年に音楽配信サービス「蝦米音楽(XIAMI MUSIC)」を買収して以降、有名音楽プロデューサーの高暁松氏と宋柯氏を子会社「阿里音楽(アリババ・ミュージック)」の董事長として迎え、エンターテインメント事業とコンテンツ産業に対する強い意気込みをみせた。だがそんな思いとは裏腹に、これらの事業は現段階では順調とは言いがたい。とはいえ、アリババはライバルのテンセントをけん制できる事業については以前から非常に前向きであり、音楽事業とこれが抱えるユーザーは重要要素なのだ。

また一方で、大手テック企業を取材し続けてきた多くの記者や業界ウォッチャーは、今回の買収について当初は全くあり得ない話だと語っていた。両社がこれまでの十数年間に戦略提携を結んだことは一度もない。さらに先日引退を表明したアリババのジャック・マー氏とネットイースの丁磊(ウィリアム・ディン)CEOとの間にはかねてから確執があるとの噂もあった。だが昨年には両氏が会議の場で親しげに語る姿が目撃されており、今思い返してみれば、トップの間では当時からすでに交渉の布石が打たれ始めていたのだろう。

ネットイースの2019年第2四半期の業績に着目すると、ゲーム事業が依然として売上高の半数以上を占めていることが分かる。売上高は前年同期比15.3%増の187億6900万元(約2800億円)。オンラインゲームサービスの売上高は同13.6%増の114億3340万元(約1700億円)で売上高全体の60.9%を占める。その他の事業に関しては、EC事業の売上高は同20.2%増の52億4690万元(約800億円)で売上高全体の28.0%、広告サービスの売上高は同8.3%減の5億8160万元(約90億円)で3.1%、新規事業およびその他事業の売上高は同23.2%増の15億720万元(約240億円)で8.0%を占める状況だ。

主力事業のゲーム事業では、バトルロイヤルゲーム「荒野行動-Knives Out-」が日本を含む海外市場でまずまずの成績を出しているものの、最も重要な国内市場では、2016年にローンチした携帯RPG「陰陽師」以降、ヒット作品と呼べるゲームは生まれていない。

事実、近年のゲーム業界の伸び悩みの影響を受け、テンセントやネットイースは苦境に立たされている。とはいえ、多元的な事業構造と戦略的優位性を誇るテンセントは、ネットイースに比べ下振れリスクや規制の影響に対応しやすい。その上、BtoCのコンテンツ産業をベースにBtoBへも攻勢をかけ始めている。

一方でネットイースは、モバイル時代を迎えて以降、莫大な資金投入が必要な上に短期的には黒字が見込めず、かつ競争もことのほか過酷なEC事業を新規事業として選んでしまった。さらに重要な点は、ゲーム自体のアクセス数は単純に増え続けるものではなく、絶え間ないマネタイズの過程において自己消化してしまうというマイナス点がある。だがECが最も必要としているものこそがアクセス数なのだ。

テンセントのゲームや音楽といった事業は、いずれもネットイースがベンチマークとする事業の2倍以上の規模がある。丁CEOはそのような状況の中、アリババにとって魅力的な音楽事業によって資金を調達し、その勢いに乗じて越境EC事業を売却することで「主力事業にリソースを集中させる」方向性を明確に示した。ネットイースは今後、音楽コンテンツの版権獲得にさらなる資金を投じ、商業化の能力に長けたアリババはその収益化を支援していくことになるだろう。
(翻訳・神部明果)

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