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中国のコンビニやスーパーなどで、包装紙に犬のマークと「単身狗糧(SINGLE DOG)」のロゴが入った商品をよくみかける。商品を手に取ると、明らかに独身者をターゲットにしたキャッチコピーが添えられており、それに共感して商品を購入する人々が少なくないようだ。この商品シリーズを販売している企業は「単身糧(Danshenliang)」。社名自体がブランドの方向性を示している。(注:「単身狗」とは、単身=独身、狗=犬で、独身者を指す中国の流行り言葉である。最初はネット流行語として、独身の男女が自らのことを自嘲気味に使っていた)
同社の共同創業者である曾瑞露氏によると、同社は商品の販売に加えて「独身カルチャー」の発信にも力を入れており、正確に定義すれば、同社の商品は単身者層を対象にした「ソーシャル性」を有するスナックだ。このターゲティングとソーシャル性を足掛かりに同商品は急速に販売を伸ばし、創業からわずか2年で同社の販売額は2億元(約30億円)を突破した。今年は有名ブランドとのコラボによる新商品のリリースで注目度がますます上がっている。
単身糧の成長は、中国の単身者層の急速な増加と密接に関係している。国家統計局のデータによると中国の独身人口は2億4000万人で、全人口の17%以上を占める。この比率は大きくなる一方だという。しかし、単なる独身人口の増加だけが社会的影響力に結びついているわけではない。彼らの消費理念や消費行動が商機につながり、飲食や家電から日用消費財に至るまで幅広い業界が独身者をターゲットにした商品を開発し、販売するようになっている。単身糧が特に重きを置いているのは、独身者カルチャーの発信につながる軽食ブランドを育てることだ。
独身層をターゲットにしたブランド
単身糧は自社工場を持たず、商品生産全体を業界内の優良企業に委託しており、そこで自社の要求と仕様に沿った商品生産を行っている。曾氏の考えでは、スタートアップが自社で工場を構えて独自ブランドを築くことには大きなリスクが伴うため、生産は他社に任せ、自社ではカルチャーの発信やIP(知的財産)・コンテンツの運営管理など得意分野に絞った事業を手がけていると語った。しかし、自社生産でないとはいえ、同価格帯の商品と比較して品質も味も群を抜いて優れた商品を生み出すことに力を尽くす。同社が最初にリリースしたポテトチップスは、昨年3月の発売から売れ行きを順調に伸ばし、発売当初の生産能力は1日当たり6000ケースだったが、当時の需要はこれを上回り、1日当たり1万3000ケースに上ったという。
同社は他のスタートアップのようにオンライン販売から始めず、最初からスーパーマーケットやコンビニなどのオフライン販売に踏み切った。同社は現在、北京や上海、広州など1級都市のスーパーマーケットやコンビニを網羅しており、特にコンビニは基本的にすべての販路を押さえている。スーパーマーケットは高級スーパーやニューリテール型の店舗に重きを置いている。曾氏によると、既存型の商店は成長が伸び悩んでいるため、新業態との協力にシフトしたという。経済力のある独身層は高級スーパーやニューリテール型の店舗で買い物をする傾向があることも理由の一つだ。
しかし、自社に生産拠点を持たないブランドがどのように市場からの支持を勝ち得るのか?食品ブランドにとって最も重要なのは一般的に味を追求することだが、単身糧は事業展開で独自のスタイルを編み出している。
同社がポテトチップスからスタートした理由は、すでに完成した産業チェーンが存在し、味の水準も向上しているからだ。生産は優れたメーカーに任せ、パッケージデザインやコンテンツ展開を工夫することで、モノとコンテンツを一体化した商品を提供している。つまり、同社はポテトチップスそのものだけではなく、それに独自発信のカルチャーやコンテンツ、IPなどをかけ合わせて勝負しているのだ。
曾氏によると、主力商品のポテトチップスが過去2年間の売り上げに占める割合は50%に達しており、販売数も安定しているという。しかし、同社はポテトチップスだけで自社の成長を図っているわけではない。曾氏はレギュラー商品と他社とのコラボ商品の両輪でブランドを活性化させていきたいと考える。
既存ブランドの再ブレークに貢献
同社は即席麺市場に潜む可能性に着目し、今年5月には即席麺を売り出した。ポテトチップスはすでに伸びしろが限られているが、即席麺市場は品質向上の段階に差し掛かったばかりであり、低価格帯商品の市場が縮小する一方で、中~高価格帯の高級路線が成長していくと見られている。販売価格5~15元(約80円から240円)の即席麺市場は今後、200~250億元(約3000億~4000億円)規模になると予想される。単身糧は中国の即席麺製造企業「白象食品(BAIXIANG FOOD)」と合弁会社を設立し、中~高価格帯商品の開発を手掛け、2020年までに販売額3億元(約45億円)達成を目指す。
白象との提携は、単身糧が有名企業とのコラボで新商品を開発した代表例だが、他にも多くのブランドから引き合いがあるという。単身糧は提携先の選定に際して、企業規模や資源投入に対する積極性を考慮している。
消費能力が旺盛で品質を重視し、持続的な成長を続ける独身層をターゲットに、オリジナルIPや独自カルチャーを発信すること。これこそ単身糧の持ち味であり、レギュラー商品であれ、コラボ商品であれ、同社の商品はいずれも大ヒットの可能性を秘めている。(翻訳・虎野)
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