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二酸化炭素(CO2)排出量の実測サービスを提供する中国スタートアップ企業「中碳実測(北京)科技」が、エンジェルラウンドで1000万元(約2億1000万円)を調達した。信天創投(Albatross Venture)が単独で出資した。
2022年に設立された中碳実測は、温室効果ガス削減のための世界的な取り組み「MRV(測定・報告・検証)」制度に基づき、CO2排出量を算定する独自の方法論を編み出した。海上輸送や火力発電、建材化学工業、製紙、鉄鋼、林業、太陽光発電などを手がける企業向けに、高精度のCO2排出量実測ソリューションを提供して、企業が効果的にエネルギーコストを調整し、実行可能な省エネ・排出削減計画を策定できるようサポートする。
同社のCO2排出量実測技術は、4万ページ以上に及ぶ世界の法規や基準を参照して開発されており、さまざまな基準の技術的要件を満たせるほか、法規に準拠した公正なデータを保証している。すでに欧州の権威ある機関の認定も受けている。
CO2排出量の計算はカーボンニュートラルを実現するうえでの基本であり、国際的な排出権取引を進める際に欠かせないものだ。中国では化石燃料などの消費量をもとにCO2排出量を推測する計算方法を採用しているが、欧米などの先進国では大気中の汚染物質や粒子状物質の濃度や排出量を連続的にモニタリングする方法がとられている。中国の計算方法は誤差が大きく、企業が必要以上の炭素税を負担することになりかねない。
一例として、世界でも早くから脱炭素化に向けた取り組みが始まった海運業界を取り上げよう。中碳実測の創業者・孫琦氏によると、欧州排出量取引制度(EU-EST)の統計では、中国船舶と欧州船舶の1海里(カイリ)当たりのCO2排出量データに最大2.3倍の開きがあるという。使用する燃料の品質の違いに加えて、採用している計算方法が異なるためだ。
中碳実測が独自の「高精度実測法」を使用して排出量を実測した結果、中国の海運事業者の炭素税が18%以上高く見積もられていたという。今後は実測データを収集し蓄積することで、最適な巡航速度を割り出し、2%以上の燃料を節約できると見込んでいる。全てのコストを考慮すると、各船に高精度の実測システムを導入する費用が100万元(約2100万円)ほどなのに対し、コスト削減効果は年間100万ドル(約1億4800万円)以上に上るという。
電力業界でも同様で、高精度実測法は実際の排出量やエネルギー品質の変動を反映できるため、従来の計算方法によるデータとの差は5~20%になる。同社の実測法を使えば、発電所のCO2排出量に応じた費用負担を年間約400万元(約8400万円)節約できるという。
海運業界や電力業界だけでなく、石油化学工業や非鉄金属の精錬・加工、道路交通などの分野でも、高精度実測法の幅広い活用が見込まれる。実際に活用が進めば、従来の計算方法の欠陥を補い、企業の実際のCO2排出量を正しく反映して、データの信頼性を高めることが期待できる。
「目下、業績はうなぎ登りだ」と孫氏は明かす。自社開発のソリューションは多くの業種に応用できるとし、さまざまな業界でCO2実測の価値が認識されるようになれば、中国のCO2実測市場も次第に拡大する見込みだという。
CO2排出量実測技術のかなめとなるのは高精度のガス分析だ。システムは動的な作業条件のもとで高精度のトレーサビリティ、検証可能性、継続的な制御性を発揮する必要があり、専門分野をまたいだ総合力が必要とされる。海外でもCO2排出量の実測サービスを手がける企業は数少ない。
「中碳実測では、サンプリングユニットから前処理ユニット、分析ユニット、制御ユニットまで、さらに全プロセスのデータ収集、処理、衛星通信などを全て独自に開発した。我々の実測データは98.9%以上の精度を誇る。世界でもトップクラスだ」と孫氏は説明する。
中国のCO2排出量実測技術は全体的に発展が遅れている。中碳実測は業界のパイオニアとして今後も技術開発に力を注ぎ、さまざまな業界でCO2排出量を削減できるようサポートして、低炭素社会の成長基盤を構築していく考えだ。
*2023年11月21日のレート(1ドル=約148円、1元=約21円)で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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