ファーウェイのVRゴーグル 新たなブームを巻き起こせるか

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ファーウェイは9月下旬に開かれた「Mate 30」シリーズの新作発表会で、軽量型VRゴーグル「HUAWEI VR Glass」を発表した。新型VRゴーグルの発表は2年ぶりとなり、販売価格は2999元(約4万5000円)で、12月の発売開始を予定している。5G時代の到来に間に合わせた形となるが、この発表のタイミングおよびVR業界への参入には、製品自体の価値を超越したファーウェイのメッセージが込められているといえる。

ファーウェイはこのVRゴーグルを画期的な新作と呼んではいるものの、今回の新作VRゴーグルが解決したのは重量の問題ただ1点のみだ。

VRゴーグルの重量は166グラムで、Facebook傘下企業が開発したVRヘッドセット「Oculus Quest(オキュラス クエスト)」の3割ほどの重量に抑え、頭部にかかる負担を大幅に軽減した。ただしスマートフォンにケーブル接続する必要があるうえ、ケーブル自体が揺れやすいため、大きな動作を伴うゲーム利用でのUXは向上したとは言いがたい。明らかに向上したのは映像視聴機能のみだ。VRゴーグルは軽量かつ小ぶりで折りたたむことができ、3.5ミリ端子イヤホンとBluetoothイヤホンに対応しているため、外出時に機内や車内などでも使用でき、使用環境に関する制約は突破できている。

しかし2999元という販売価格は安いとはいえず、市場にあふれる他のVRゴーグルと比べても、購入のハードルは決して下がったとはいえない。さらにVRデバイスの実用性は低く、映像コンテンツの選択肢やクオリティも高くない。このため人々の購買意欲を高めることは難しく、新し物好きな人や出張族が試しに購入する商品の域を出ていない。

とはいえ、ファーウェイがVRグラスを販売したことには、業界内の里程標としての意義があるといえる。中国で5Gネットワークの商用化が間もなく始まる現在、国内のハードウェアメーカー最大のベンチマークとなってきたファーウェイがVRグラスを再度販売したことで、大手携帯メーカー各社も同業界に参入し、VR業界が今後盛り上がりをみせる可能性がある。また他のVRデバイスメーカーと異なり、ファーウェイは5Gインフラを敷設する第一人者であるため、VRゴーグルは5G対応デバイスとしての試験的な意味合いもある。

VRブームは到来するか

VRゴーグルがブレイクスルーを果たす上で、スマートスピーカーの前例が参考となるかもしれない。

スマートスピーカーも同じく実用性の高い商品とはいえないが、アマゾン、アリババ、シャオミ(小米科技)、バイドゥ(百度)など各社がこぞって対抗商品を開発したことで、現在は100元未満(約1500円)から購入できるようになり、結果として世界で大々的に浸透した。米市場調査会社ストラテジー・アナリティクスによれば、今年の世界のスマートスピーカー出荷台数は1億4880万台に達し、使用台数は年内に2億6000万台を超えると予想される。

同様に、VRデバイスが人々の購買意欲を高める上で、軽量で使いやすく、価格が十分に安いことが初期段階での最低条件といえる。

5G技術がVRに与えるメリットとしては、周波数帯域幅の広さにより5K以上の高解像度でパノラマ映像がオンラインで楽しめる点や、低遅延性によるクラウドゲームでの画質の向上、さらにプレイ時のレイテンシー(動作が反映された映像が目に届くまでの時間)を20ミリ秒(0.02秒)以下に引き下げ、画面酔いを抑えられる点がある。

とはいえ、現時点では、低遅延性を実現する上での具体的なプランは発表されていないため、5GがVR端末にもたらすメリットは限定的なものとなっている。

IT専門調査会社IDCの予測では、5Gの商用化とVR関連産業の技術向上に伴い、世界のVRゴーグルの出荷数は2023年までに3670万台に達し、2019~2023年の年平均成長率は44%に達する見込みだ。また2023年には世界の一体型VRヘッドセットの出荷台数がVR機器全体の出荷台数に占める割合は59%に達するとみられている。

通信事業者、5G設備メーカー、VRデバイスメーカーはいずれもVR業界の明るい未来に期待の念を寄せているが、大衆市場での普及までには相当な時間がかかりそうだ。
(翻訳・神部明果)

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