アリババ初のAIチップ クラウドサービス成長の武器になるのか

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中国IT大手アリババグループ傘下の半導体メーカー「平頭哥半導体(Pingtouge Semiconductor、T-HEAD)」が9月25日、同社初のAIチップ「含光800(HanGuang 800)」を発表した。アリババが半導体チップの開発を目標に掲げ、PRを始めたのは昨年4月ごろにさかのぼる。「実は当時、1行のソースコードも書けていなかった。大変なプレッシャーだった」。平頭哥の研究員は、誕生秘話をこう語った。

「含光」の名前は中国古典に登場する宝剣に由来する。この2カ月前に発表した組み込みCPU「玄鉄910(XuanTie 910)」、SoC用プラットフォーム「無剣(Wujian)」と同様に武器にちなんだ名前がつけられた。

アリババは昨年4月、中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)が米国政府の制裁により半導体チップの調達危機に陥った直後、組み込みCPUを開発する「中天微系統(C-SKY Microsystems)」を買収。ニューラルネットワーク(神経回路網)チップ「Ali-NPU」の開発に着手し、画像・映像の解析や機械学習などのAIの推論に活用すると宣言していた。

その後、昨年9月に開催されたアリババグループ主催のテックイベント「杭州・雲栖大会(The Computing Conference)」で、張建鋒(ジェフ・チャン)CTOが「Ali-NPUは全ての検査・検証に合格した」と発表。平頭哥が費やした時間は「1行のソースコードも書けていなかった」状態からわずか5カ月、「検査・検証に合格」から「正式なお披露目」までは1年だった。この速さは米インテルや米NVIDIA(エヌビディア)などの半導体大手を上回る。アリババがそれだけチップ開発の必要に迫られていたことが分かる。

張CTOによると、含光800は「世界最高性能のAI推論チップ」で、推論性能は業界最高水準のAIチップの5倍、エネルギー消費効率は業界2位の製品の3.3倍に達する。

「含光800」を披露する張建鋒CTO。(写真はアリババグループ提供)

含光800と時を同じくして、中国通信機器大手のファーウェイ(華為技術)もAIチップ「Ascend910(昇騰910)」を発表、「演算能力は世界最高」とうたった。約1カ月の間に「世界最高」のAIチップが2つも現れた形だが、前者は「推論用」、後者は「訓練(学習)用」という違いがある。調査会社IDCによると、今年第1四半期の中国のパブリッククラウドサービス(LaaS/PaaS/SaaS)市場規模は24億6000万ドル(約2646億円)。うちLaaS/PaaS市場シェアはアリババが43%と首位に立ち、ファーウェイの5.2%を大きく引き離した。

LaaS/PaaS市場の8割を占める「六大巨頭」のうち、すでにアリババ、AWS(アマゾン ウェブ サービス)、百度(バイドゥ)、ファーウェイは自社で半導体チップを開発しており、残るはテンセント(騰訊)と中国電信(チャイナテレコム)だけだ。とはいえ、アリババにとっても道のりはまだ長い。張CTOは「われわれは半導体チップ領域ではまだ新人。玄鉄と含光800は平頭哥の『万里の長征』の第一歩に過ぎない」と語っている。

張CTOによると、含光800は単独で売り出す計画はなく、アリババクラウドを通じて外部に演算能力を提供する。つまり含光800とアリババクラウドを「抱き合わせで売る」という作戦だ。含光800はアリババクラウドの売り上げアップのために開発されたといえる。同社の今年第2四半期(4~6月)の売上高は前年同期比66%増と、伸び率は18年通年の84%から縮小した。前CEO胡暁明氏の在任中(2014~18年)は売上高が10億9600万元(約165億円)から213億6000万元(約3213億円)と約20倍も増加したことを考えれば、新たな販売戦略を打ち出す必要があることは間違いない。
(翻訳・鈴木雪絵)

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